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日記、のようなもの #26 あるはずのないもの、ないけれどあるもの

2022/10/6

クラフト・エヴィング商會をご存じでしょうか?
吉田篤弘さん、吉田浩美さんのお二人からなるユニットで、実在しない雑貨や本を作成し、短い文章を添える形の著作物を何冊か発行されています。ブックデザイナーとして、書籍のデザインも手掛けていらっしゃいますし、吉田篤弘さんは作家としての活動もされています。

私は本屋さんでときおり、全てとはとても言えませんが、本棚をいくつか見て回るのが大好きです。主に見るのは、ミステリ、SF、ファンタジーや幻想文学あたりですが、文庫の新刊コーナーはジャンル問わずほぼすべて見ますし、他にもたとえば歴史書だとか、民俗学だとか、書評本だとか、理学系だとか、気になるところは何でも見て回ります。
そうして見つけた本のひとつが、クラフト・エヴィング商會さんの本でした。

『どこかにいってしまったものたち』『すぐそこの遠い場所』『らくだこぶ書房21世紀古書目録』など気になるタイトル、気になる表紙に思わず手が伸びて、ぱらぱらとめくってしまうともう駄目です。最初に買ったのがどの本だったかは憶えていませんが、帰る道すがらなんだか地に足がついていないような、ふわふわとした心持ちだったことを憶えています。
そうして一冊読み終わったらすぐ次の本が読みたくなり、一時期はクラフト・エヴィング商會さんの本が欲しいばかりに本屋さんに通っていました。
が、私がクラフト・エヴィング商會さんを知ったのは、すでに彼らがあまり本を出さなくなってからで、なかなか手に入らなくて大変でした。
それでもやっぱり大好きで、ちょうど東京に行くタイミングで世田谷文学館でクラフト・エヴィング商會さんの展示をしていることを知り、時間を取って行ったこともあります。

特に好きなのが、『クラウド・コレクター 雲をつかむような話』と『アナ・トレントの鞄』です。どちらも、架空の国や都市を扱っているもの。
私は「ここではないどこか」が大好きで、だからきっとクラフト・エヴィング商會さんの作られた御本は、私のそういう部分にがっつりはまったんでしょうね。

残念なことに、いまの部屋に引っ越すときに、クラフト・エヴィング商會さんの御本はあらかた手放してしまったのですが、今でもとても後悔しています。
でも福岡でクラフト・エヴィング商會さんの本を置いているところを見つけたので、そのうち買いに行くつもり。
そうしてまた、自分の部屋に居ながらにして、ここではないどこかへ旅をするのです。

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