『本を愛しすぎた男 本泥棒と古書店探偵と愛書狂』感想

『本を愛しすぎた男 本泥棒と古書店探偵と愛書狂』アリソン・フーヴァー・バートレット 原書房 2/2読了

物語風ドキュメンタリーというのでしょうか。
主な登場人物は稀覯本専門の泥棒と彼を追う古書店店主、彼らを取材するノンフィクション作家。

彼女が古書にかかわるようになった経緯に始まり、彼女が親しくなった古書店店主と彼が追った泥棒の二人にインタビューしてわかった事実を書くという形の本。
はじめはいろんな稀覯本の話や古書業界の話を楽しく読んでいたんだけど、泥棒といろいろ話をして彼の内面に踏み込むころから首元にうそ寒い風が吹きつけられているような感じがしました。

泥棒は何度も捕まり、服役もしているんだけど、彼には本を盗む(主としてクレジットカードを使った詐欺)ことに対して罪悪感がまったくない。
むしろ、この本は自分の手元にあるのがふさわしいのにそれを手に入れることができないのは不公平だ、だからその不公平を是正しているのだ、と信じ切っているのが怖い。
最初っからどこか壊れていたのか、それとも次第に罪悪感がなくなっていったのか、自分をだますための嘘を真実として信じ込んでしまったのか。

私自身は紙の本は大好きだけど重要なのはその中身。稀覯本に興味はある。博物館とかでそう言うコーナーは大好きだし。でも、見るのは好きなんだけどそれを自分で所持したいとは特に思ってないんですよね。きちんと扱える自信はないし、それでよかったとつくづく思ってしまう。

稀覯本の世界はとても怖い世界だと感じました。極端な例を見てしまったからかもだけど。
もちろんコレクターだってその一線を越えない人が大多数な訳だけれど、それが頭でわかっていてもとても怖かったです。

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