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森崎ウィンさん短編映画『せん』感想

森崎ウィンさん初監督作品の短編映画『せん』を観ました。最初は「短編映画祭のグランプリ?ジョージ・ルーカス賞?なんだかよくわからないけど凄そうな賞だな」と半信半疑で観始めたのですが、そのオリジナリティと完成度の高さに、正直めちゃくちゃ驚きました!

この映画は「日本のオリジナルミュージカル映画を作りたい」という思いから生まれたそうです。ミュージカルというと華やかなイメージがありますが、この作品はその真逆なんです。静かに、淡々と日常生活を歌いあげ、物語が進んでいきます。すごく個性的な演出だと思います。

田舎暮らしのおばあさんの日常と、ラジオから聴こえる不穏な世界情勢。おばあさんの無償の優しさと、繰り返し歌われる「何も変わらない」というフレーズ、これらの対比が特に印象的です。

ラジオから聴こえる世界情勢には、作り手のメッセージを感じます。何らかのメッセージを感じますが、肯定も否定もしないスタンスです。ちょっと戸惑うかもしれませんが、その余白こそが非常に日本的であり、まさに監督の目指す、日本のミュージカルだなと感じました。

観終わった後の余韻が凄く、言語化できない不思議な感情になりましたね。
優しい人がたくさんいるにも関わらず、なぜか人々の間に溝ができたり、争いが始まってしまう。そのもどかしさに心が締め付けられるような感覚を覚えました。今回はこのように感じましたが、観る時の心境で捉え方も変わりそうだなと思いました。淡々としているけど、解釈の自由度が高くて何度も観たくなる。繰り返し聴ける音楽のような映画だなと思いましたね。

本作品、24年度米アカデミー賞短編部門ノミネート候補推薦作品とのことです。ここまできたらぜひアカデミー賞まで進んで欲しいですね。約25分ととても観やすいので、お時間があればぜひ観てみてください!オススメです!

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