スライド7

稼ぎを上げるための重要な要素

未来を保証するために

 前の章で、チップ額を上げるテクニックをいくつか紹介したが、職業として実際に稼いでいくにあたって、そのようなテクニックは小さな要素である。というのも、1演目あたりの金額が多少増えたとしても、1日10回演じていたのが20回演じられるようになったことと比べれば大した増額には繋がらないからである。また、1日10回が20回になったということも、月あたり5日行っていたのを15日行くことにしたということと比べれば、やはり小さなものであるし、1年単位で見れば、10年単位で見れば、というように、より巨視的な視点から見るならば、1回という演目は、職業人の稼ぎとしてあまりにも小さな要素に過ぎないのである。

 今この瞬間のお小遣いが欲しい、というような意識で見てみれば、今日1日のチップ額が5万円だとすれば、とても喜ばしいという発想になるかもしれないが、この5万円が、先々の稼ぎに対してどんなプラス要素をもたらしてくれるのかと考えるならば、とても小さなものだとも思えることだろう。
 まず、たまたまお金持ちが通りかかって、その人が5万円を入れてくれた、というマグレのように手にした5万円であれば、先々の稼ぎに対しての影響はゼロだと言える。その5万円を使い切った後には、何も残らないのである。
 しかし、もしそのお金持ちと名刺交換をしていたり、LINE交換して連絡がつくような状態にしていたりするならば、今後の稼ぎにも僅かに期待ができるかもしれない。
 さらに、そのお金持ちと、その場で何か仕事をもらうような話まで進めていたとなれば、これは、未来の収入源としても、ある程度の期待ができることになる。
 また、5万円というチップが、1人によるものではなく、50人から1000円ずつ貰ったという内訳であるならば、それはマグレではなく、演者に1日5万円を稼ぐスキルがあるということになる。明日以降も、5万円ずつ稼げるという見通しに繋がるだろう。
 このように、チップとしては同じ金額であったとしても、その内訳や、チップ以外の追加要素によって、その額が今日1日だけのものなのか、未来を保証するものなのか、の意味合いが変わってくるのである。

 職業人において「稼ぎを上げる」とは、「未来を保証する」という意味でなければならない。アマチュアやセミプロならば、本業に対してそのようなことを考えれば良いが、プロを目指すのであれば、マジシャンという活動において、自分の未来を保証することを考えていかなければならない。その日の収入を得ながら、未来の保証を築いていくのが、職業人でありプロの姿である。

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