スライド8

稼ぐための考え方

成功するための精神論


現代人に必要なのは昭和的な精神論

 このテキストではこれまでに、マジックで食べていく事は難しいことではないと何度も述べてきた。やればできるのである。これは、やってみて、できた者からのアドバイスであるので、やらない理由を挙げ連ねて実行しなかった者の言葉よりも、遥かに現実味のあるもののはずである。
 ところが、現実として、すべてのマジシャンが食べていけているのかと問われれば、「否」という答えになるだろう。なぜならば、「やればできる」ことをやっていないマジシャンが、存外多いものであるからだ。

 その職業で食べていくために必要なのは、今も昔も、努力や根性といった精神的な力である。これらは、「昭和の精神論」と揶揄されることも多く、平成の時代では、そういった不明確で不可視な精神論ではなく、科学的な裏付けを拠り所にするべきだ、という考え方が主流にもなった。「稼ぎたい」と願えば稼げるようになるのではなく、「稼げる方法」を科学的に組み上げていくから稼げるようになる、という考え方である。この考え方自体は正しいことであるだろうが、曲解とも思える「科学的な裏付けがあれば努力や根性は必要ない」という考え方もまた蔓延しているようでもある。
 しかし、実際は、「稼げる方法」を科学的に組み上げていく過程において、「稼ぎたい」と願う精神的な力が支えとなるものなのだ。昭和的な精神論と、平成の科学的裏付けは、自転車の両輪のようなものであり、どちらか一方では空回りするばかりで、先へと進むことはできないのである。しかも、どちらかと言うと、昭和的な精神論のほうが前輪であり、駆動力となっていることと思われる。「やりたい」と先に思うからこそ、後から「やり方」を考えることができるのである。近年急速に発展している情報化によって支えられるのは後輪の部分であるが、その後輪が上手く回転できるのも、前輪の駆動力があってこそなのだ。前輪の駆動力は、昭和的な精神論であり、あなたの中にあり、あなたの外にはない。どんなに優れた情報を得ようとも、それを利用できるかどうかは、あなた次第なのである。駆動力は、あなたの中にしかないのだから。
 筆者らがこのテキストを書くのも、ただ情報を伝えるという目的でしかない。もし、このテキスト内容があなたに響いたとしたら、それはあなたの中に駆動力があるからだろう。駆動力を持った人に、後輪となる情報を提供することが、本書の役割なのである。

 このように、まずは「やりたい」という強い気持ちが必要で、立ちはだかる壁に向かうための努力や根性といった精神的な力が重要であり、それに比べると、指先の器用さなどはとても小さな要素でしかない。「マジックで食べていくことは難しいことではない」と再三言っているのはそういう部分である。指先が器用である必要はなく、難しいマジックができなければならないこともないのである。
 技術的な難しさはとても小さいが、一方で、様々な困難を解決していかなければならない。それは、売り上げが上がらないだとか、依頼が来ないだとか、観客に絡まれたとか、提携しているマジシャンと険悪な関係になったとか、そういったことである。これらの解決には、何か特殊なスキルが必要だということではないし、必ずこの問題に当たるわけではなく、人によっては別の問題に突き当たるものでもあるのだから、つまりは、やってみなければわからない部分である。しかし、このような状況下において、指先の器用さと努力や根性と、どちらが重要なのか、誰にでもわかることだろう。
 また、成功しているマジシャンの多くは、「私は器用ではないので、失敗しないためにとても多くの練習をしました」と言ったりもするが、器用である人ほど慢心して練習を疎かにしたりすることを考えるならば、器用さはマジシャンの成功に対してマイナス要素にもなり得る。不器用であっても、努力を惜しまない、という精神的な力こそが、マジシャンを成功させるのである。

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