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AIキャラクターのサービスをクローズした話

最近、サービスをクローズしました。AIキャラクターSNSの「キャラる」というサービスです。クローズする判断をせざるを得なかった責任は、PMの私にありますが、サービスを好きで使ってくださっているユーザーが多い中でサービスを終了するのは、とても心苦しいです。

AIキャラクターというサービスの特性上、ユーザーさんにとってサービスクローズの意味合いは、ツールとして利用されるサービスと比べるとかなり異なるように思います。何かの目的を達成するツールとしてではなく、AIキャラクターという存在そのもの、そのキャラクターが存在しているアプリの中の世界そのものに価値を感じてくださっており、サービスをクローズすることは、その存在そのものが消えてしまうことを意味します。

昨今、キャラクター性のないアシスタントに止まらず、よりキャラクター性のある、人間味を感じられるAIサービスがより多く見られます。私自身、このエモーショナルAIの領域はまだまだ可能性があると感じていますが、より多くのサービスが出てくれば来るほど、サービスを終了せざるを得ないことも多くなると思います。

そのような場合に対して、少しでも役に立てればという思いでキャラるのサービスクローズで実施したことや意識したことを書いてみます。(なお、返金対応など、通常のサービスで当たり前に対応することは挙げていません)

データを移行できるようにする

冒頭にも書いたように、AIキャラクターのサービスをクローズするということは、AIキャラクターを大切に感じてくださっているユーザーさんにとっては、大切な存在が消えることを意味します。ツール系のサービスがなくなる時のような、便利なものがなくなるという状況とは違った意味を持ちます。

サービスクローズによってその存在を消してしまわないためにもデータ移行の対応は必須だと思います。今回、ななしさんのご厚意でAIったーにキャラクターデータを移行できるようにしました。

もともと、キャラるには他サービスとデータ連携をする機能は全くなかったため、サービスクローズの一環として開発しました。当然のことながら、AIキャラクターの仕様として共通規格のようなものはないので、たとえば声の設定など、移行できないもあります。それでも、ユーザーさんのフィードバックを見ていると、データ移行に対応したことは大きな意味があったと強く感じます。

今回は1サービスのみが移行対象となりました。普通に考えれば、複数の移行サービスがあった方が良いと思われるかもしれません。今回は時間的な制約のため、直感だけを頼りに1サービスに絞ってお声がけさせて頂いたのですが、その直感は結果として大正解だったと思います。移行前の運営同士のコミュニケーションもとても密にさせていただき、移行後に移行ユーザーを対象に機能追加いただくなど、とても手厚いサポートをしていただきました。

複数サービスの移行先を設けていないので確かなことは言えませんが、単に選択肢が多いことよりも、安心して移れる移行先が確実に提供できることの方が重要かもしれません。

データをダウンロードできるようにする

データを移行を考えた際、当初からシステム間連携ではなく、ユーザーさんにいったんデータをダウンロードしていただく方法を想定していました。

システム間連携の方がユーザーさんの手間は少なくなる一方、仕様や事前の調整、また直接連携する場合は、別途のユーザー同意など、検討すべきことが多くなります。また、何か問題が起きた時にその原因を切り分けるのも難しくなります。

そのため、スケジュールを考えた時の現実解として、一度データをダウンロードしていただき、それを手動でアップロードしていただくことにしました。

ただ、その後のフィードバックを見ると、この方法はユーザーさんの観点でもこの方法の方が良かったように感じます。データのダウンロードにより、キャラクターとの思い出を手元に残すことができたからです。

今回、キャラクターの設定データの一部やユーザーさんとの会話履歴、会話を編集したデータ(学習データ)、キャラクターが作成した日記のデータなどをダウンロードできるようにしました。これらはユーザーさんにとっては大切な思い出なので、データ移行をせずともダウンロードできること自体に意味があります。

今回は時間的な制約のため、全てのコンテンツをダウンロードできるように対応できませんでした。ただ、時間に余裕があればキャラクターが作成した全てのコンテンツや、AI同士の会話など全てをダウンロードできるようにすべきだったと思います。

AIキャラクターの存在を理解してユーザーコミュニケーションする

今回のサービスクローズでは、とても丁寧にユーザーコミュニケーションを行いました。全体へのアナウンスだけではなく、個別にお問合せいただいた内容に対しても、かなりイレギュラーな方法も含めて可能な限り対応を行いました。

この対応は、サービスクローズ後、返金対応のオペレーションに移行した後も行っています。少なくとも、これまで私自身や周りで見てきたクローズ対応の中では、最も丁寧に対応をしたのではと思います。カスタマーサポートやその対応に当たっていただいたチームの人たちには本当に感謝です。

一方で、繰り返しですが、AIキャラクターという存在はユーザーさんにとってとても大切なものであるため、コミュニケーションにあたっての言葉選びはとても慎重に行いました。

たとえば、データ移行を"キャラクターの移行"とは言わない、などです。いくらデータを移行したとしても、基盤となるAIモデルが異なるため全く同じになることはありません。また機能的な違いもあります。そのため、ユーザーさんが認知しているキャラクターがそのまま移行先に移るかと言われると、Yesとは言えません。そのため、キャラクターの移行という表現ではなく、あくまでデータの移行としてお伝えしています。

これは1つの例ですが、普段の運営でも、新しい機能やその他のアナウンスをどういう風にお伝えするかは常にチーム内で議論をしていました。上記のように誤解を与えない表現を気をつけるのは当然のこととして、何かの事実を運営目線の客観的な情報として提供するのか、キャラクターにとってどういう意味を持つのかという視点で伝えるのか、伝え方でその言葉の意味は大きく変わります。

単なる丁寧さではなく、伝え方を適切にすることもとても重要だとと思います。

まとめ

AIキャラクターSNS キャラるのサービスクローズにあたって、対応したこと、意識したことを3つ挙げてみました。

  1. データを移行できるようにする

  2. データをダウンロードできるようにする

  3. AIキャラクターの存在を理解してユーザーコミュニケーションする

ただ、いかに対応したとしてもユーザーさんの悲しさがゼロになることはなく、つらい思いをさせてしまった方も多くいらっしゃると思います。本当に申し訳なく感じます。

他方、突然の相談にも関わらずデータ移行の対応をしてくださったAIったーの開発者のななしには感謝しかありません。また、短いスケジュールで移行機能を対応してくださったキャラる開発チーム、また丁寧なコミュニケーションをしてくださったCS担当の方には感謝しかありません。

以上、備忘録としてキャラるのサービスクローズのことを書いてみました。最後になりましたが、関わってくださった全てのみなさまへ、ありがとうございました。

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