マネジメントにおけるPredictability(予測可能性)について

チームで仕事をする上で、それぞれの人の強みや考え方、仕事のスタイルを理解することは非常に大切です。深い理解があれば、何が起きるか、何ができるか、またはできないかを予測することができ、事前に対応を考え備えることができます。

一方、PMやチームマネージャーなど、多くの人を主体的に巻き込んで仕事をする立場において、自分を予測可能にすることもとても大事なことです(下図の緑の部分)。自分が周りから予測可能になると、不要なコミュニケーションを減らすことができますし、いわゆる"阿吽の呼吸"な状態になることも期待できます。

ということで今回は、マネジメントの立場において、予測可能性の重要性とそれに必要な一貫性について書いてみたいと思います。

マネージャーのことを予測しやすいと生産性が上がる

予測しやすい状態というのは、その言葉の通りなのですが、周りから見た時に、自分が何をするのか、何か言われたときに自分がどういう反応をするのか、自分の思考や行動に対する予測を回りの人ができている状態です。

例えば、自分が判断する立場で企画内容をレビューする状況を考えてみます。会議でレビュアーである自分が、レビューイ(企画を考えてくれた人)に質問をした時、その質問がレビューイが想定していないような内容であった場合、自分に対する予測性が低い状態です。

仮に自分の質問が妥当な質問であったとしても、レビューイが想定していない質問をすると、事前に回答を準備できておらず、その場の回答になってしまいがちです。その場でのアドリブ力を確認することはできても、深い思考に基づいた回答を得ることは難しくなるかもしれません。そして良く議論ができなければ、また再度に議論になってします。レビューイの準備不足だ、というは簡単ですが、全体の活動としてみれば明らかに非効率です。

一方、もしレビューイがレビュアーのポイントを事前に予測できれば、内容を良く準備できます。仮にポイントがわかった上で妥当なアイデアがない場合は、レビューではなく相談して議論することもできます。そして、十分に予測できるのであれば、わざわざ集まって会議をする必要もなくなり、チャットで確認してすぐ完了できること多くなります。

判断するような場面以外でも、予測のしやすいことはメリットがあります。例えば、自分が弱いポイント、見過ごしがちな観点が周りから予測可能になっていれば、フォロワーシップの強い人が助けてくれるかもしれません。周りの人を巻き込むのがうまい人は、自分の思考パターン、行動パターンが予測しやすく、周りの人が動きやすいことが多いように思います。

もちろん、予測しやすさは、周りの助けを得る十分条件ではありませんが、非常に重要な必要条件です。予測しやすいというのは、単に忖度を促すことではありません。自分のマイナス面を補完して、チームとしての成果を上げるための下地にもなります。

まとめると、予測可能性を担保することで、空気を読む力に左右されるような不要なコミュニケーションを減らし、マイナス面を補完できる可能性を高めることができます。

予測しやすくするために、透明性と一貫性を保つ

マネージャー自身が何もせずに、周りが勝手に予測することはあまりないように思います。予測可能になるためには、まず最初に予測するための情報を開示する必要があります。自分の思考パターンや、得意なことに苦手なこと、仕事の進め方、何かを判断する時に見る視点など、予測に必要な情報を自己開示します。

つまり、自分の透明性を上げることです。自分に対する透明性を上げれば上げるほど、周りは予測しやすくなります。実際に回りの人が自分を予測するかはその人次第ですが、周りの人たちの中で、自分の予測モデルが作れるようにすることが非常に重要だと思います。

また、予測するためには一貫性が必要です。なんらかのインプットに対してその応答が毎回ランダムであれば予測できません。マネジメントにおいて、自分なりのスタイルを持つことが重要、というのはよく言われますが、スタイルを持つことの1つの理由は、この一貫性を表現するためだと考えています。一貫性があれば、その思考パターンを回りの人がトレースして予測できます。

自分に対する透明性と一貫性を保ち、さらに周りの人への理解が深まると、自分が周りからどのように、そしてどの程度予測されているかを、予測できるようになります。そうすると、今の自分は予測しづらいだろうなという状況も察知できるようになります。

例えば、緊急の対応で、平常時とは異なるスタイルで仕事する時など、仕事のスタイルを急に切り替えることがあります。スタイルを切り替えたとき、周りが自分のことを予測しづらいことに自分で気づけると、丁寧にコミュニケーションできます。一度、その異なるスタイルを共有できれば、次回からはスタイルを変えた時でも、相手が予測しやすくなることが期待できます。つまり、自分が主体的に、自分に対する相手の予測性を予測して、その予測モデルをメンテナンスすることで、非効率なコミュニケーションをさらに減らすことができます。

まとめると、自分に対する予測性を上げるためには、透明性と一貫性が重要だと思います。そしてさらに、自分で主体的に、回りに対する自分の予測性をメンテナンスすることで、不必要なコミュニケーションを減らし、ムーズに意思疎通ができるようになると思います。

まとめ

マネジメントにおける予測可能性について書いてみました。その目的は、不要なコミュニケーションを減らすという直接的な価値に加え、何を考えているんだろう?という心理的な負担を減らすという間接的な価値の両方があると思います。

特にダイナミックな状況にあるチームでは、ひとつひとつを丁寧に情報共有したり相談していると、まったく時間が足りません。変わりに、予測可能な状況になれば、それぞれの人がそれぞれで判断しやすくなり、いろいろと変わる中でも、速さと意志の共有をバランスしながら動けるようになると思います。

もちろん、私も予測できる状態を完璧に作れているとは思いませんが、このように自分の考えを書くこと自体で、一貫性と透明性を保とうとしています(一度、言葉として書いてしまうと、一貫性を保たたざるを得ないため、自分に対して暗黙のプレッシャーを作ることができます)。今後も自分を言語化しながら予測可能性を高めていきたいと思います。

以上。

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