マネジメント観点でのAutonomy(自律性)について

以前のポストで、ネガティブフィードバックがもらえなくなってきていることへの心配について書きました。あれこれと試行錯誤をしてみるものの、相変わらずネガティブなフィードバックを頂くことがあまりありません。言いにくい雰囲気を出しているのか(可能性大)、言われているにも関わらず鈍感で気づいてないのか(これも可能性大)、真実はよくわかりませんが、すぐにうぬぼれる自分としては危機感しかないので、テーマを設定して勝手に反省してみたいと思います。

今回のテーマは自律性です。

自律性はAI倫理の観点でもマネジメントの観点でもとても重要で深いテーマです。両方を一度に考えるのは広すぎるため、ここではマネジメントの観点で考えてみたいと思います。

Wikipediaによると、自律性は、十分な情報をもって強制されずに決定する潜在的な能力(Capacity)と定義され、HRの観点では、自律性は従業員の満足度を向上させる、と書かれています。

組織内でマネジメントする立場であれば、チームメンバーが高い自律性を持って動いてくれることを期待するのは自然に思います。一方で、現実としてチームメンバーの自律性に課題を感じることがあるかもしれません。その原因はどこから来るのか、根本を考えていくと結局はマネジメントする人に戻ってくるように思います。

マネジメント的な行為は何かをすれば必ずプラスになるということはなく、マイナスに作用することが良くあります。むしろ、行うこと、行うタイミングが最適な時にだけプラスに働き、少しでも間違えると、簡単にマイナスの方向に働きます。

自律性も同様で、自律性を上げることより、下げる要因の方がはるかに多いように思います。そもそも、その会社、チーム、プロジェクトに入ったときは、大体の人は高い自律性を持っています。それがいつの間にか自律性が下がっているのであれば、マネージャーが自律性を下げることを行い続けた結果ではないかなと思います。

ということで、反省と自戒の念を込めつつ、未来の不要な行為を抑制するために自律性を下げる方法をアンチパターンとして書いてみたいと思います。

役割を制限する

一番わかりやすいアンチパターンです。その人が持っている能力に対して、与えられる裁量を制限すると自律性は簡単に下がります。意図的に制限をしなくても、その人が持っている顕在化した能力、潜在的な能力を見誤り、その能力に対して役割が狭いと、意図的に制限しているのと同じように自律性が下がります。

課題としてはわかりやすいパターンですが、能力と役割・期待値を合わせるのは全く簡単ではありません。すごく難しいです。その人の強みや動機付けを正しく理解する必要がありますが、その人自身が気づいていないことも多いです。従って言語化されない強み・弱みまで想像して探り当てて、明らかな制限に限らず、無意識な制限も起こらないようにします。

役割を広げすぎる

逆のパターンです。役割を制限するのが悪いからと言って、逆に広げすぎても良くない結果になる可能性が大きくなります。あまりにもその時点の能力と能力が離れていると、良い成果を生む可能性が低くなり、成果が生まれなければ自信が削がれ、結果として自律性が下がります。

もちろん、胆力が高い人は役割(期待)とその時点の能力の大きなギャップを乗り越え、飛躍的に成長できることもあります。ギャップに対する許容度は、個人によって大きく異なります。

どの程度が広げ過ぎなのか、これに対する1つの答えはありません。1on1など対話して合意したから大丈夫、という簡単なものでもなく、言語化されないことも多いです。従って、言葉には表現されない雰囲気も含めて日々の観察で察知して、適切な範囲をどうかを見極める必要があります。

場面によって合意なく自律性への期待を変える

一貫性のなさも自律性を下げます。普段は従うことを求め、ある場面だけ自律性を求める、例えば新規事業のブレーンストーミングをする際だけ自律的に動くことを求める、などです。自律性をコントロールしようとしている時点で、もはや自律性とは呼べない気もしますが、現実ではよく起こる場面かもしれません。

もちろん、緊急の事態で自律性を期待しない場面もあるかもしれません.その場合は自律性を期待しないことを明確に説明をする必要があります。期待の変化を自然に察知してくれるだろう、という期待は持つべきではありません。

環境的・時間的な変化をとらえず、役割を固定化する

これは故意に起こることは稀ですが、一番気づきにくく、気が付いたら自律性を下げているパターンです。

その人自身の成長やプライベートの変化など、自律性への許容度は常に変わります。そしてその変化に気づかず、いつの間にか役割が制限されるように感じる、もしくは広げすぎていた、という状況です。本人もその変化に気づいていないことが多いのですが、この状態が続くとだんだんと役割が適切でなくなり自律性が下がっていきます。

この変化に気づくのは本当に難しいです。このパターンは、言葉で直接的に言われることが少ないです。わざと言わないのではなくその人自身も気づいていないことが多いです。従って、日々の観察によって変化を捉える以外にはないように思います。私の場合、自分の察知力を大して信用していないので、ネットワークを多重化して複数の経路で変化に気づけるように心がけています。ただ、見落とすことも多く本当に難しいです。

高い自律性を期待する側が自律的でない

元も子もない話ですが、マネジメントする人の自律性が高くないと、メンバーの自律性は一気に下がります。自分自身が新しく学び、視野を広げ続けようとしていなければ、周りの人に自律性は期待できないと思います。

もちろん、優秀な人が多い環境において、絶対的な能力でそれぞれのメンバーの人の能力をすべてにおいて超えるのはとても難しいと思います。重要なのは絶対的な能力よりも、誰よりも高い自律性を持って取り組むという物事への向き合い方にあるように思います。

当たり前のことですし、自身の自律性だけで周りの自律性が上がるというとそうでもないですが、少なくとも必須の必要条件だと思います。自分の自律性が高くなければ、いろんなテクニックで周りの自律性を上げようと思っても中々良い方向にはならないように思います。

まとめ

マネジメント観点で自律性について、アンチパターンを書いてみました。

  1. 役割を制限する

  2. 役割を広げすぎる

  3. 場面によって合意なく自律性への期待を変える

  4. 環境的・時間的な変化をとらえず、役割を固定化する

  5. 高い自律性を期待する側が自律的でない

このように書いてみると、アンチパターンを実際にやってしまった経験が思い出されます。自律性は一度下がると本当に上げるのが難しいです。なぜなら周りの人の自律性が低いのはマネージメントする人が原因であることが多く、そのマネージャーが変わらない限り、問題を解決するのが難しいからです。

したがって、ここに書いたようなアンチパターンをやっていないか、自分自身で内省することは大前提ですが、直接そのメンバーの人にも聞きながら自分自身が悪いループを作り出していないか注意深く自己監視する必要があります。

私自身もアンチパターンを行わないようにより気を付けたいと思います。


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