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だれかが困ったときに、頼れる自分でいられるように。

午後9時7分、友達からのLINE。
あした、仕事をすこし手伝ってほしいというSOSの連絡だった。

娘を風呂に入れたあと、湯船に浸かっていた僕は、悩んだ。翌日決まっていた予定には間に合うお願いであること、連日自分の仕事に追われていて疲れが溜まっていること、プライベートでもやり残した家事やタスクがあること。頼られるのは嬉しいと思った。なにか自分が役に立てるなら無条件に受けたい、とも思った。

つぎに想像した。あしたゆっくり休んでいる自分の姿を。仕事を手伝いに行ってよかった、と言う自分の笑顔、助かったと言う友人の笑顔を。出掛けに心配するであろう妻の表情を。「いいよ」と返事をしたら返ってくるであろう友人からのスタンプも、想像できた。困っている友人の顔が浮かんでは消えた。

「こういうとき、うまくいったことないでしょ。大丈夫?」と妻は言った。
その「うまくいく」や「大丈夫」は、僕にとっては些末なことのように思えた。手伝ってあげることが、なんとかしてあげたいと思うことが、それだけで「うまくいく」や「大丈夫」と比べられない何かになると信じたかった。

僕は、計画を立てることが苦手だ。いつまで経っても、時間通りに行動できない。それで、ひとに迷惑をかけてしまうことも、たくさんある。ちなみに妻は、そのいちばんの被害者だと思う。予定にないことを急にやるのは、昔からとても得意で、同時にとても苦手だった。

自分の内から声が聞こえてきた。できないのは、自分に甘えているから。それは、ほとんど正しいと思う。自分を律するには、自分に厳しくするしかない。それも、ほとんど正しいと思う。できない自分が悪い。そう思う。周りを助けるのは、自分のことをちゃんとやってからにしたら?その通りだと思う。自分のことは、たぶん自分がいちばん分かっている。

僕は、結局、断ることにした。
余裕がないから、ごめん。そう伝えた。
ありがとう、なんとかする、と友人は答えた。
それでこの話はおしまい。

断る自分が、情けなくて、とても悔しかった。
だれかが困ったときに、頼れる自分でいられるように、なりたい。そう思った。

あしたは、少しゆっくりしながら、家のことでやり残したことを、ちゃんとやる日にしようと思う。「うまくいく」と「大丈夫」のことを、いままでよりもほんの少し、大切にできるように。

最後に。
友人の仕事、うまくいきますように。

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