服部 紘樹

京都の小さな織屋の3代目。 爪掻本綴(つめかきほんつづれ)という織物を制作しています。…

服部 紘樹

京都の小さな織屋の3代目。 爪掻本綴(つめかきほんつづれ)という織物を制作しています。 【爪をつかって糸を掻き寄せて織る】という技法。 ものづくりをこの先も続けていくために、あれやこれやと活動しています。

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真に先取りすべきものは何なのか

「絽(ろ)」という織物があります。 真夏の暑い季節に着るための着物や帯に用いられる織物の1つで、タテ糸を捩じりながら織ることでいわゆる「透け感」が出て、涼やかな見た目の生地になります。 綴織の中でも「絽綴(ろつづれ)」というものがあり、夏用の帯として制作しています。 今現在、私たちが絽を織るのをお願いしている織り手さんは、なんと90歳の方。 いまだにバリバリの現役職人で、長いキャリアにも関わらず今も技術向上に余念がありません。 しかし実は、この方が絽の織りを覚えたのはそれほ

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      昨年から、長野県の「岡谷絹工房」というところで綴織を織ってもらう、という取り組みを進めていました。 岡谷市にある「岡谷絹工房」は、絹織物を軸にしてさまざまな織物の制作を請け負い、並行して研修生の受け入れや織物体験などを行っている施設です。 元々、綴織を織るということはされていませんでした。 そこに京都からはるばる織機を持ち込ませていただき、仕事として綴の帯を織ることをお願いしました。 そして、記念すべき1本目の帯が無事に織り上がりました。 喜び…はもちろんありますが、そ

      • ものづくりを続けるために

        祖父がまだ存命で、僕もまだ幼かった頃。 口癖というほどではないが、話の端々に出てきた言葉が記憶に残っています。 「生きていかんとアカンのやから。」 当時は、その言葉の意味や意図はよく分かっていなかったし、どういう経験や考えが起因してその言葉になっていたのかはもう知る由もありません。 しかし今、自分の中では、この言葉がしっくりくるような心境になっています。 生きていくということは、すなわち続けていくということだと。 ・・・・・・・・・・ 伝統工芸の業界は人材不足、後継者不足

      真に先取りすべきものは何なのか