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在宅映画鑑賞 「君よ憤怒の河を渉れ」

 外出自粛要請が解除されましたが、営業を再開した映画館に通うのはどうも…という方もおられるのではないでしょうか。映画は落ち着いた環境で観たいのですね。先日の早朝、Amazonプライムで在宅映画鑑賞をしました。そこでおススメの映画を紹介します。「君よ憤怒の河を渉れ」です。この映画は東映を退社後フリーになった高倉健の独立第1作目で1976年大映製作の痛快娯楽アクション映画です。

 あらすじです。高倉健演じる検察庁の杜丘(もりおか)検事が、突然女に強盗犯呼ばわりされて逮捕されてしまいます。原田芳雄演じる矢村刑事に手錠をはめられ、検察庁では上司である池部良演じる検事正に犯人扱いされ杜丘の自宅で家宅捜索中に杜丘が一瞬のスキをついて逃走。これから無実を晴らすために逃走しながら真相を追求する杜丘検事と追いかける矢村刑事との逃走劇が始まります。この逃走劇が笑えます。

 凶悪な逃走犯として指名手配されてテレビや新聞等で報道されているのですが、杜丘検事はなんと国鉄とバスを乗り継いで公共の交通機関で女の実家がある能登半島へ行きます。女の実家につくと女の死体が。女は何者かに殺害されていた。ここで警察と女を殺害したらしい猟銃を持った二人組に追われますが何とか危機を脱出。女の夫の実家がある北海道の日高地方へ国鉄で行きます。指名手配犯なのに。青函連絡船にも乗ったのでしょうか?実家らしい牧場について声をかけると彼らは張り込みをしていた刑事だった。杜丘検事は森の中を必死に逃げます。途中で猟銃を使った猟のワナを発見し、器用にワナを解き猟銃を手に入れると「助けてー」という女性の叫び声が。木の上に女性が。木の下にはヒグマが吠えています。ヒグマの着ぐるみ感満載です。猟銃でヒグマを追っ払うことに成功した杜丘検事ですが、崖の上から落下してしまい渓流に流されてしまいます。
 次の場面はベッドの上で寝ている杜丘検事。女性の家です。女性に見とれられる杜丘検事は目を覚まし、セスナ機で帰宅した女性の父親である大滝秀治演じる牧場経営者の社長に挨拶。大滝秀治の物まねを関根勤がしていたのを思い出します。

 杜丘検事は女性の父親のお古の革ジャンに着替えています。小柄な体型の大滝秀治のお古の革ジャンがに身長180cmの高倉健さんにピッタリ似合っています。大滝秀治演じる社長は新聞記事で逃走犯の杜丘と知ります。社長が電話で席を外したスキをついて杜丘は脱走。そしたら、女性が馬を乗って追いかけてくるではありませんか?童謡の森のくまさんですか?女性は杜丘を馬に乗せて走り出す。「なぜ俺を助ける?」と質問する杜丘に女性は一言「好きだから!」まあ映画ですね。女性は竪穴式住居みたいな隠れ家へ。一安心するところに東京から原田芳雄演じる矢村刑事が。あっさりと手錠をはめられた杜丘は矢村刑事に連行されますが、なんとそこにまたしてもヒグマが⁈ヒグマは矢村刑事を襲い矢村と杜丘は組んだまま崖の下へ転落。二人は気を失う。女性が杜丘の手錠を外すが杜丘は大けがをした矢村を助けます。焚火を起こし重傷を負った右腕が化膿しないように、傷口に燃やした棒切れを当てます。映画「ランボー3」のようです。そのあと、女性の秘密の洞窟へそこで一晩を共にします、一組の男女として。熱い逃走劇です。翌日、女性は実家に帰り荷造りをします。父親である社長は娘に「逃走はやめなさい」と忠告しますが、女性は「命の恩人を助けない人は父親ではありません」と家を出ていきます。洞窟で旅立ちの準備をしているところへ社長が。「周りは多数の北海道警に囲まれている。東京に行くんだろう?どうやっていくんだい?」「ひとつだけ方法がある。君は飛行機を操縦できるかね?」

 3人は社長のセスナ機の前。社長は「操縦は自動車より簡単!」と杜丘に操縦法を指導。パイロットの有資格者が未経験者によくもそんなことを?女性は止めますが社長は女性に「男にはね、死に向かって飛ぶような時があるんだ」と、杜丘は目を輝かせて「これをやらなきゃ、生きている意味はないんだ」と。そうこうしているうちにパトカーがやってきます。杜丘はエンジンを始動、セスナはゆっくりと動き出す。猛スピードで追ってくるパトカーから逃げるセスナ。必死で追うパトカー、逃げるセスナ。「アーッ、捕まる」という瞬間セスナ機は浮上します。なんだか既視感をおぼえます。どこかで見たことがあるシ-ンです。あっ思い出した。

「ETだ」 スピルバーグの!

 まさかスピルバーグ監督はこの映画を観て「ET」を構想したに違いないとは思えませんが。今度は空路で津軽海峡を越えた杜丘のセスナ機に三沢基地から無線が入ります。管制官の指令はヒステリックな声!杜丘は逃走中なので、指令には応じません。指令に従わないセスナ機に向かって自衛隊機がスクランブル発進をしますが、自衛隊機のリアル感がどうも、、、東宝の特撮映画に高倉健が出ているような不思議な感じが。こういうシーンでも高倉健は真面目に演技を続けます。杜丘はセスナ機を水面すれすれに飛行させます。こうするとレーダー圏から外れるのです。レーダー圏から外れたという理由で自衛隊はセスナ機の追跡やめてしまいます。こんなんでよろしいのでしょうか、国防は?やがてセスナ機は燃料切れになり、海上に不時着します。茨城県の砂浜で杜丘の上着が見つかったと本庁の矢村刑事のもとに連絡が入ります。茨城県の国道では警察による取り締まりが。その前を通り過ぎるトラック。荷台には杜丘の姿が。杜丘はトラックをヒッチハイクして長野駅へ長野駅からは国鉄でハイカーの服装で山梨県大月駅に到着します。一方、矢村刑事は杜丘を犯人呼ばわりした女の夫を追って建設中の多摩ニュータウンの現場へ行きその男が精神病院に入院したことを知ります。建設作業者は「キチガい病院」とはっきり言っていましたが、Amazonプライムは放送ではないのでそのままスルーです。
 東京ヒルトンホテルのロビー。先述の北海道の牧場主の社長の娘が父親の代理で、取引業者相手に育てた馬の引き渡しのサインをしています。そこに杜丘から電話が。娘は杜丘に「30分後に新宿西口の駅前にいて」と指示をします。私服警官も多数張り込んでいる新宿の西口を指定するなんてねえ、お嬢さん。しかし男高倉健演じる杜丘は行くのです。
 案の定、杜丘は張り込んでいた私服警官に見つかり逃走します。新宿の繁華街です。警察無許可のゲリラ撮影のようですね。画面に映る群衆には注目されています。映画の逃走劇がリアルに感じられます。と感心しながら映画を観ていると突然、新宿の繁華街の路上に多数の馬の群れが走ってきます。新宿西口の小田急百貨店の前を女性と杜丘が乗った馬が通り過ぎます。撮影許可は取れたのでしょうか?
 あらすじが長くなりました。話はこの後も突っ込みどころ満載に痛快娯楽な展開を続けます。しかし、観ているうちにこの映画がいとおしくなっていきます。とにかく俳優さんたちの演技が熱い。また、主要キャストのほとんどが現在故人です。しかも出演当時は若かった。45年前の映画です。若い刑事役で出演している大和田伸也は今では老人役で出ています。出演者はよくタバコを吸っています。特に原田芳雄は。街の風景も変わりました。

  この映画は当時の日中国交回復後の中国で公開され大ヒットしました。高倉健は中国ではもっとも有名な日本人俳優になりました。この映画を若いころに鑑賞したチャン・イーモウ監督はのちに高倉健主演で「単騎、千里を走る」を中国で製作監督しています。また、ジョン・ウー監督は「マイハント」というタイトルでこの映画をリメイクしました。関西を舞台に中国人俳優のチャン・ハンユーが杜丘を福山雅治が矢村刑事を演じています。「マイハント」を観ますと、いかにこの映画をリスペクトしているかが感じられます。外出自粛要請が解除されましたが、外出するには不安を感じる日々がしばらくは続くでしょう。コロナ疲れの解消に一度ご鑑賞くださいませ。

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