一泊することになって

このまえ福島に行ってきた。そのときの事を書いた。

いつの間にかバスの時間になっていたので急いでアパートを出た。なんとか間に合った夜行バスに乗って福島に向かった。

郡山駅到着のアナウンスで目が覚めた。バスの時計を見ると予定通り朝の4:30頃。荷物をまとめてバスを降り、駅前のベンチに座ってお弁当を食べた。福島ではビオトープの生き物観察とホタル観察に参加する予定だ。ムナカタさんに誘われて、若干勢いに任せてきてしまった。

待ち合わせまでどうしようか。ベンチで唐揚げを食べながら考えていると、近くに温泉があるのを思い出した。ここで少し寝行くことにしよう。近くなので歩いて行ける。途中にあったカラオケがなくなっていていた。

温泉の休憩所のマットは少しベタついていたが、これくらいは大丈夫だ。寝てさっぱりして、広間でスマホを触っていると、メッセージに気づく。宗像さんより。「明日は二本松に泊まっていってください。農家民宿とんちゃんを予約しました…。」
よく見てみると、メッセージは昨日の夜に来てたみたいだ。少し遅れて気づいた。楽しみだ。

アイスコーヒーを二つ持って待ち合わせ場所へ。これはちょっとした誠意の気持ちを込めている。アイスコーヒーが好きかどうかは知らない。でもいいことだと思ってる。それっぽい人が見えたので挨拶から。

昼飯を買って、サガラ先生を乗せて、目的地の布沢へ。サガラ先生はムナカタさんと仲のいいおじさんで、会うのは久々のこと。ムナカタさんがそう呼ぶので先生をつけてしまうけど、いつも何か違和感がある。ゴマすってるみたいで。なにしろ、覚えててくれて嬉しかった。

ビオトープにつくと、藻を漁っている人がいた。学生で植物を研究してるらしい。藻を漁るのが趣味と聞いて好きになった。もう少し話しとけばよかった。

ここには藻が5種類6種類と生えているらしい。藻は生えているのか浮いているのか、そもそもどこから来たのか。足でも着いているのか。後から気になっているが、調べる程には至っていない。

車を降りる。舗装されていない地面を自由に歩くのは久々な感じがした。思ったより生き物に触れた。正直少し心配だったから。手を突っ込んでドジョウも掴めたしなんかよかった。ムナカタさんを見ると、自然の中で元気いっぱいだ。

捕まえた生き物や植物はよく見えるようにケースに入れて説明してくれた。虫として一概に認識している生き物を、個別に見てみる機会はあまりない。思い返すと、そのおかげで触ったりすることができたのかもしれない。よくわからないものに触ろうとはしない。僕は全然触れるけど。

この後のホタル観察まで少しあるので、予約してくれた宿に向かった。到着すると、農家民宿というのがしっくり当てはまる感じの建物だ。敷地がすごい広くて使われていて楽しげだった。元気なおばちゃんが出てきた。

玄関先で挨拶し、部屋に向かった。引き戸を開けると大きい部屋に布団が敷いてある。なんか部屋が大きいのは布団のせいなのか。ホテルはベッドだから。荷物を置いて階段を降りて居間へ。夕食の時間だ。この階段も幅が広い。

先に出してくれたお菓子とかきゅうりを食べながらおばちゃんと少し話した。自己紹介の次くらいのよくある会話。細かいところは忘れたが、いい人で楽しかった。手元のきゅうりと味噌の組み合わせもかなり良い。

話していると横から。おじさんがお酒をくれる。ビールでいいか聞かれとっさに貰ってしまったが、2本くるとは思わなかった。料理も美味しくて、そこで採れた野菜とか米を使っているらしい。いい話だ。ビールが腹にかなり効く。おいしいけどもう腹が限界すぎる。

無職の僕はここではどう見られるのか。最初ちょっとだけ気にしていた。でも軽トラに住みたいと言ったら結構ウケた。小さくて寝れるか、そこは正直心配だ。「1tならまあ、、軽トラか~、、」「おかねないので」

なんとかおいしい夕食を食べ終えて。話も楽しかった。僕の話もよく聞いてくれる。2人ともいい人だ。きゅうりを齧りながら、後はこのビールをそっと残すだけ。だったけど、おじさんが全部注いでくれる。親戚のおじさんが頭に浮かぶ。

僕が座ったテーブルは居間の真ん中にあって。部屋の布団も真ん中に敷いてある。アパートの部屋ではそうはいかない。物は端に寄せがちになる。僕もよく端っこにいる。真ん中のローテーブル越しにテレビがあって、端に寄せたソファに座って。民宿の部屋は広い。よく端っこにいる僕にとって、真ん中には慣れない自由な感じがあった。二人は真ん中の住人だ。ご飯を食べてお話して、真ん中の住人がつくる感じを楽しんだ。

ホタル観察会の時間だ。近くの田んぼへ向かった。観察会の前に創作ダンスを見る。でも途中から、夕食のビールに違いないけど、トイレに行きたくて仕方ない。でも青いつなぎのおじさんが仮設トイレの場所を教えてくれた。仮設トイレはクモとかなんか色々たくさんいたけど気にならないくらいだったから本当よかった。

そのあと、山と田んぼに挟まれた道を歩いてホタルを探した。山側の茂みから田んぼのほうに、少しずつホタルが降ってきた。目を凝らさないといけない。周りを見ると、みんな田んぼのほうを見ている。僕も同じく見つめる。

翌朝は8時に目が覚めた。もっと遅いときもある。でも田舎の朝は早い。おじさんは山へ草刈りに行って。そして帰っていたみたいだけど。朝食を食べ、水やりするおばちゃんに何か一言かけたかどうかして、そのまま少し散歩した。晴れていてかなり暑い。

途中おじさんがいい場所を教えてくれた。地蔵桜があるらしい場所にいってみた。着いてみると広場になっていて木陰もある。木陰は涼しくてそこで休憩した。僕は遠いところでぶらぶらするのが好きで、それはいい時間になった。そのために出かけることもある。木陰を楽しんで民宿に帰った。広場にあった桜と七福神も一応覚えているけど、それはそんなに大事なことじゃない。

民宿に帰るとノートを受け取った。宿泊者の日記帳だ。でも書いている途中で迎えが来た。今日はムナカタさんが大熊町まで案内してくれる予定だ。途中で終わっているから、せっかくならこの文章を送ろうか迷う。これは長すぎるし何の話か分からないと思う。それに、とんちゃんの名刺にはメールアドレスがないから。

帰り際に玄関先でみんなで話すいつもの時間になった。民宿のおじさんがムナカタさんにスマホを見せて、これは平家蛍か聞いている。二人とも顔をしかめながら、小さい画面に目を凝らしている。そういうところはよく覚えている。この辺りは平家蛍らしい。そんな話と少し軽トラの話とかした。

話してて、人が大事だと聞いた。人柄のことか、人との関係のことなのか。おそらく両方と、もっと色々なことなんだろう。当然共感する話だ。お金を目的とすると、結果というか、ところどころ違ってくる。

こういう時よく対照的にお金の話が現れる気がする。「世の中お金」と僕はよく言われる。当然何するにもお金がないと始まらない。生きるため、ただお金を稼ぐことを目的に生きていても自然と社会的に機能していると思う。お金が人を社会にはめ込んでくれるのかもしれない。

でも「世の中お金」の一言は、何か暗いイメージのような、色々なものを伏せておく蓋のようにも聞こえる。とりあえずそんなことは言わないでおく。

民宿を出て、そのあと県東のほうまで連れて行ってくれた。ルンバみたいな芝刈り機をみて、アイスコーヒーを二つ買った。それ以外にも色々見て回った。そして夕方に郡山駅について、東口で宗像さんと別れる。そのままバスに乗って王子駅まで。

福島で一泊するとは思っていなかった。突拍子もないことだった。予定にないことは意外と楽しい。

楽しかったのでとりあえず書いている。書き足したりつなぎで悩んだり。なんか長くなりなかなか終わらなかったが、集中できて楽かった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?