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ゴール期待値の算出方法


第1回はゴール期待値の基礎、「ゴール期待値ってなに?」を解説しました。

そして、今回は、そのゴール期待値って、

「どうやって算出されるの?」

について解説します。


算出方法がわかると、

「ゴール期待値が高かった/低かった」という解釈から一歩深く踏み込んで、

「なぜゴール期待値が高かった/低かった」

という理解に繋がるでしょう。


それでは、第2回のスタートです。



Q.ゴール期待値はどうやって算出されているの?

ゴール期待値は、「主に過去の膨大なゴールデータに基づいて算出」されます。


過去のゴールデータと言っても、様々なゴールがありますよね。
PK、コーナーキック、流れの中からのゴール、カウンターアタックからのゴールなど・・・本当に様々なゴールがあります。

その中でも、例えば、PKでのゴールだったら、PKのゴールを全て集めて、ゴール期待値を出すということですね。
(数学的な期待値の計算は割愛します)
ちなみに、PKのゴール期待値は、0.76ぐらいと言われていたりもします。

しかし、PKほどわかりやすいゴールの場面はなかなかありません。
なぜなら、PKは主審の合図によって始まり、キーパーとシュートを打つ人のみが大きく関わり、必ず決まった場所からボールを蹴ると決められているからです。

実際のゴールは、もっと色々な場面から決まっていますよね。。


では、どんな要素がゴール期待値の算出に関わっているのでしょうか。




早速、その疑問に進みたいところですが、、

その前に、

大切な注意点を記載します。


「過去の膨大なデータから算出される」とは、必ずしも現在の試合を反映しているとは限らないということです。



・・・少し難しい。



もう少し噛み砕きます。


例えば、近年はPKの成功率が上昇している傾向があります。
そのため、過去のゴールデータだけに基づいて算出されたゴール期待値は、現在を正確に反映していない可能性があります。



なにが言いたいかというと


『ゴール期待値は変化する可能性が高い』


ということです。


例えば、、

2024年1月1日までの過去のデータが1000本のPKだったとします。
そして、そのゴール期待値が0.70。
つまり、700本がゴールになったということになります。


しかし、10年後の2034年1月1日にPKのゴール期待値を算出してみると、


先ほどの1000本のPK(ゴール期待値:0.70) に加え、その後10年間にわたって行われた分のPKも含んで算出されます。


仮にその後の10年間のPKのゴール成功率が著しく高く、99%だったとしたら、2034年時点でのゴール期待値は上昇しているでしょう。
近年成功率が上昇している傾向があることを考えると、今のゴール期待値が絶対ではないということが言えます。

なぜ近年の成功率が上昇しているかというと…
その要因は、
・選手の技術向上
・VARの導入によるPK回数の増減
・ボールの品質向上
などが考えられるでしょう。


注意点を説明するためにPKという場面を扱いました、、、



ここからが、本番です。


もっと複雑な場面からゴールが生まれるサッカーですが…



Q.ゴール期待値の算出にはどのような要素が考慮されているのでしょうか?




具体的には、以下の要素などが考慮されています。

  • シュートの位置: ゴールから近いほどxGが高い

  • シュート角度: シュート角度が広いほどxGが高い

  • 周囲の選手数: ディフェンダーの数が多いほどxGが低い

  • シュートの勢い: シュートの速度や回転が速いほどxGが高い

  • シュートの部位: 身体のどの部位でシュートしたかで変わる

  • その他: プレーパターンやタッチ種別などで変わる


上記以外にも、攻撃のプロセスが考慮されているなどと、いくつもの要素を組み合わせて、各シュートシーンにおけるゴール期待値を0~1の範囲で数値化します。
改めてになりますが、0に近いほどゴール成功確率が低く、1に近いほど高くなります。


それでは、これから3つのシーンを取り上げて、ゴール期待値を見ていきます。

「各場面のゴール期待値はどれくらい?」
「そこに影響している要素は?」

を確認していきましょう。


【参考】
Opta Sportsが発表しているゴール期待値の解説動画
この動画の内容を抜粋して解説します。


<シーン1>

Opta Sports 動画より

・転線は実際に放たれたシュートのボールの行き先を表す
・キーパーと一対一の場面
・ペナルティエリア内
・ゴールまで近距離
・角度は狭い
◆これらの条件が考慮され、ゴール期待値は「0.35」



<シーン2>ゴールになる可能性が高い例

Opta Sports 動画より

・コーナーキックのシーン
・キーパーがパンチングしたボールが選手に当たって跳ね返ってきた
・そのこぼれ球が目の前に転がってきて、ゴールまで約1mの距離
◆ゴール期待値は、「0.91」とかなり高い値



<シーン3>ゴールになる可能性が低い例

Opta Sports 動画より

・ミドルシュートの場面
・ペナルティエリア外からのシュート
・ゴールの右側にシュートを打っている
・ゴールからの距離が遠い
・角度は狭い
◆ゴール期待値は、「0.02」とかなり低い


切り取った画像が暗くてみにくいかもしれません。
映像としてこれらの場面を見たい方は、こちらからご覧ください。
(上記 Opta Sportsの動画と同じです)

【参考】 
もっと深く知りたい方は、こちらの記事をご覧になられても面白いかも・・・
記事:様々なゴール期待値モデルの分析




Q.ゴール期待値の算出に関わる全部の要素は?


ゴール期待値の算出に、大体どのような要素が影響しているのかがわかってきたのではないでしょうか。

しかし、中には、
算出に関わる全ての要素を知りたい方もいるでしょう。


…残念ながら、それを知る術はなさそうです。


実は、算出に関わる要素の一部のみが公開されており、算出方法の全ては公開されていません。

つまり、重要機密事項なのです。

独自の方法で、より精度の高い期待値を算出している会社は、クラブとビジネスパートナーになっていたり、スポーツベッティングに応用してビジネスを行っていたりします。

そのため、この明かされていない部分でゴール期待値の精度に差が生まれているのでしょう。
(ある会社は、シュートではないけれど、ゴールを横切るセンタリングで、触れば一点もののチャンスなどもゴール期待値に反映しているようです。)


参考として2社が公開している算出要素を以下に記載しました。

【参考】

(1)Football LAB

・空中戦に勝利したか否か
・シュート時に使用した体の部位
・タッチ種別(ワンタッチ、ツータッチ以上、セットプレー、その他)
・プレーパターン(直接CK、直接FK、PK、オープンプレー)
・ゴールへの距離
・シュートの角度

(Football LABより)

(2)Opta Sports

・過去の300,000本以上のシュートから算出
・アシストタイプ
・頭か足か
・ビッグチャンスか
・ゴールまでの角度と距離
Opta SportsのYouTube動画

(Opta Sportsより)

2社とも公開している部分は似てる気がしますね。。


Q.ゴール期待値って自分で算出できないの?

「この前シュートを外してしまったんだけど、その場面のゴール期待値を自分で算出したい」というマニアックな方がいるかもしれません。

そんなあなたに、、
自分でゴール期待値を算出するのは困難ですが、、
簡易的に知る方法が全くないわけではありません。


名城大学理工学部 情報工学科が発表している「簡易版ゴール期待値」
こちらを活用すると確認することができそうです。

【簡易版ゴール期待値について】
・名城大学理工学部 情報工学科が発表
・約2000試合分記録されている論文からシュート位置ごとに成功確率を計算して作成された。
・マウスをグラウンド内に持っていくと、ゴール期待値が表示される。
・あくまでも簡易的な方法であり、精度が高いとは言い切れないかもしれません。




さて、今回はいかがでしたでしょうか。


ゴール期待値の算出方法についてでしたが、前回に比べてより理解が深まっていたら嬉しいです。


これからは、簡単そうに見えたシュートチャンスも、xGの値を見て、選手目線だと角度がなくて、難易度が高かったのかと思い直してしまうことも出てきそうですね。



第1〜2回は1本のシュートについてのゴール期待値とその算出方法についての話でした。


次回はここから一歩先へ進みます。


試合では、数多くのシュートが放たれます。
最近ではそれがまとめられたものが試合後に公開されています。


最近よく見るこちらです。
このタイムライン(時系列)について解説していきます。
それでは、次回もお楽しみに。

SPORTERIAより


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