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なぜ、平成生まれが昭和の雰囲気に「懐かしい」と思うのか

 中埜博さん、ガオリュウさんと役半年間行ってきた「パタンランゲージ 居酒屋シーズン1」を終えて、各回のテーマやキーワードをふりかえっています。

※ 動画はこちら


その中で初回のキーワードにあがった「懐かしさ」について配信から半年たった今掘り下げてみようと思います。

「懐かしい」とは何か?

 私たちは誰に教えられたわけでもなく、「懐かしい」という言葉を口にします。

 例えば、平成生まれの子たちが、昭和の街並みや昔の写真、ファッション、懐メロを聞いて、「懐かしい感じがする」と言います。

 これは不思議なことではないでしょうか?本当は経験していないはずなのに・・・。そして誰に教わったわけでもないのに・・・。

「懐かしい」に込められた印象

「懐かしいものはなんですか?」と聞くと、自ずとみんな共感できるものが出てくると感じます。

 夕焼け、木造建築、セピア色の写真など・・・。

それぞれが想像する物が異なりつつも、いずれも「あーわかる!」となるはずです。

そしてそこには、「安心感」「温もり」「温かさ」などを感じる気がします。

不完全性から見出される「懐かしさ」

 「鉄筋コンクリートで囲まれた場所」と「自然に近い木材で作られた場所」ではどんな心理的違いがあるでしょうか?

 もしかすると科学的根拠もあるのかもしれませんが、「話しやすい」「リラックスできる」「落ち着く」と言う効果がある気がします。

 同じようになぜか「懐かしい」「温もりを感じる」ものには心が引きつけられる気がします。

例えば・・・

「タイピングされた文字」 VS 「手書きの文字」

「鉄、コンクリート」 VS 「木材」


 このように、不完全であり、改善の余地があるものに私たちは愛着が湧くのかもしれません。

 なので、令和の高層ビル街のような空きが無い状態をいつも目にしていると昭和の木造平屋建ての街並みを見るとその発展途上感、自分でも手の届きそう、手を加えられそうな感覚から愛着が湧くのかもしれません。

これはそのものが持つ「余白」が生んだ愛着かもしれません。

自分の手で触れ、自分にフィットさせられる余白があるものにこそ愛着を感じるのかもしれません。

本当に不完全なのは過去か、現代か

 懐かしさを感じる理由はそのもの自体の余白があり、そこに愛着を感じると言う話をしてきました。

 では、余白がある不完全な状況に比べて、今の私たちの生きる世界は完璧なのでしょうか?

 本編でも、この問いが一つの閃きポイントになっています。

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 ここで話題を少し変えて、私たちの日常に向けます。近年では、IT業界をはじめとする大きなものが日進月歩。一寸先は闇と言えるように不確実性の高い世の中と言われるようになってきました。

 私の本業であるソフトウェア開発においても「検査、適応、透明性」が重視され、遠くの未来を予測して計画を立てるより、その都度状況に合わせて適応していくことが求められています。

 また、企業の事業計画においても中期計画、1年ごとの計画に加え、OKRに代表されるような現代の目標管理は1~3ヶ月という短いサイクルで立てられるようになりました。

 これだけでなく、不確実性の高さは私たちの生活にも及んでおり、一昔前では所有すること自体がステータスとなっていた、車や家さえもレンタル屋都度利用隣、「モノの価値」より「体験の価値」がより重視されるようになりました。

 つまり、不確実性がもとになり、仕事においても生活においてもニーズややり方が多様化してきており、同じような仕事でもチームによってうまくいく方法は異なり、同じような所得でも家庭によって必要とされるものが異なってきました。

 いわば、オーダーメイドが求められる時代となりました。

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 話を戻して、現代の社会に目を向けましょう。

 家の間取りは決まったいくつかからの選択。便利な生活をするには都心に住む。会社は毎日週5日言って働く。

 暗黙の了解となっているような型にはまっている状況が多いのでは無いでしょうか?これはオーダーメイドとは真逆と言えます。

 昭和の時代の街並みが不完全であるが故に愛着が湧いているという話をいました。そこには余白がありました。では、現在は完全系でしょうか?余白のない今の状況はむしろ改善の空きがなく、停滞してしまっていないでしょうか?

 本編で中埜先生は「これ以上手を加えられない、欠陥状態だ」と言っています。

 故に「手を加えられる状態」に戻すことで愛着が湧く状態かもしれません。

では、「懐かしい」って何よ?という話に戻すと言葉では説明できないけど、共通の感覚を持てるというものであることは理解できると思います。

これが、パタンランゲージ やネイチャーオブオーダーでは「無名の質」と表現されています。

この感覚を掴むために

 私たちの中にはこのような「無名の質」がたくさんあり、普段は見過ごしてしまいます。このような感覚に向き合った建築家がクリストファー・アレグザンダーという人です。

 そして、その「無名の質」をどう見出し、再現するかを表現している学問や哲学と表現されるのが「パタン・ランゲージ」「ネイチャーオブオーダーの15の特性」です。

 この考えに近づいていくと、きっと私たちの生活の中に潜んでいる「無名の質」を見出すことができると私は信じています。

 「無名の質」は先述の通り、誰に説明されたわけでもないのにそれぞれが持っている感覚です。つまり、この共通意識が見出せるチームや組織は言葉以上のつながりが生まれ、どんなメソッドよりも強いものになるのではないでしょうか?

実はそんなことを思ってYoutube LIVEで対話を繰り返しています。

もし、ご興味があればチャンネル登録、視聴をお願いします。


主にPjM、PO、セールスエンジニア、AWS ソリューションアーキテクトなどを務める。「映像業界の働き方を変える」をモットーにエンジニア組織を超えたスクラムの導入、実践に奔走。DevLOVEなど各種コミュニティーにおいてチームビルディングやワークショップのファシリテーションを行う