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“Clinical experience in the use of 3D printing as a rapid replacement of traditional radiation therapy immobilization materials”を読んで

“Clinical experience in the use of 3D printing as a rapid replacement of traditional radiation therapy immobilization materials”を読んでみました。

URL

https://doi.org/10.1002/acm2.14008

気になったこと

3Dプリンティングが放射線治療の固定具においてどんな風に役に立つのか興味があり読んでみようと思いました。

論文の要旨(ChatGPT GPT3.5による要約)

放射線治療における患者の位置決めや固定の装置が改善または再計画が必要な場合があるため、計画用CTを使用して、従来の方法が使用できなくなった場合に、再現性のある患者の位置決めのための固定装置を設計・3Dプリントするための臨床的な手順を提供している。3例の臨床症例で、1日以内で設計・3Dプリントされた固定具が使用され、その固定具は十分な位置決め精度を達成した。

現場でやっている者の所感(Chromeによる和訳と原文を見ての感想)

INTRODUCTION

「実際の患者治療 ( N  = 30) における標準的な技術と比較し、3D プリントによるヘッドレストにより位置精度がわずかに向上しました。しかし、これまでの研究のほとんどは、厳しい時間的制約が一般的な要因である臨床現場では導入されていません。現実的な臨床時間枠および条件における 3D プリンティングの側面は、放射線療法ボーラスに関して以前に報告されています。」

https://doi.org/10.1002/acm2.14008

3Dプリントを使用した論文が結構あるんだと思いました。


METHODS AND MATERIALS

「ミネソタ大学 IRB は、この研究は DHHS および FDA の規制で定義されているヒトを対象とした研究ではないと判断しました。」

https://doi.org/10.1002/acm2.14008

もし研究のテーマとしておもしろそうだと思った場合、日本ではどうなのかなと思いました。

最初の例は、まだ治療が2フラクション残っていたのに廃棄したので、3Dプリントを適用したらしいです。CT画像とCT値(-200HU)の閾値を使って3Dモデルを作ったということですね。
「ヘッドレストを印刷した後、マスクとヘッドレストの適切なクリアランスを確保」というのは難しいと思います。私も自動車業界のものづくりを経験したことがあるのですが、「隙間(クリアランス)2mm」というのは如何に厳しいかよく存じております。

2番目の例の、

「腰椎をより良くサポートするためにタオルを折りたたんで即席のクッションを作りました。」

https://doi.org/10.1002/acm2.14008

というのはどこの施設も苦労してやってるんだなと思いました。タオルvs3Dプリントですね。
3番目の例は、腹部治療で使用した真空固定マットレスです。マットレス内の空気漏れが発生した(あるあるです)ので3D プリントを適用したらしいです。ここでのポイントは、3Dプリント固定具を通るビームの皮膚線量の是非ということかなと思います。

RESULTS
最大寸法は20×20×7cmほど、印刷時間は最大7時間、材料質量は最大0.5kgということですね。

「PET-G 材料のコストは 1 kg あたり約 20 ~ 60 ドル。」

https://doi.org/10.1002/acm2.14008

ということは、0.5kgの材料費は、高くても5千円ぐらい?
タオルvs3Dプリント(2番目の例)、真空固定マットレスvs3Dプリント(3番目の例)は、3Dプリントが有利かなという私の印象です。

図4

「3D プリントされたランバーサポートを使用すると、T12、L1、および L2 椎骨の領域 (アスタリスクで示されている) での脊椎位置の統計的に有意な改善が観察されました。」

https://doi.org/10.1002/acm2.14008 Figure 4


DISCUSSION

「すべてのケースにおいて、3D プリントによる固定化は従来の方法と同等かそれ以上のパフォーマンスを示し、腰椎のケースでは統計的に有意な改善が見られました。」

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素晴らしい。

「患者が実際に装置に適合できる画像しきい値と境界ボックスを使用して固定装置の 3D モデルを設計する場合は、注意が必要です。」

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ものづくりをやってきたものとしては、わかるような気がします。CT値の閾値はいくらか、材料の収縮率は何%?、クリアランスは?等等、ノウハウが必要だと思います。この研究では、強度、クリアランス、材質、壁厚、ビームが固定具を通過する問題、3Dプリンターのノズルの径等、一つの可能性を提示した点ですごいと思います。
「3D プリントされたオブジェクトの感染制御」は、PET-Gのインハウス成形品になりますので重要なテーマと思います。

これからの課題

値段と効果、1日程度の時間(コスト)はどういった判断方法を適用させればいいんだろうとおもいました。

DISCUSSION

「今後の研究は、3D プリント補助具を追加することで患者のアライメントを改善できる臨床状況を特定することに焦点を当てます。」
「3D プリント材料については、患者に使用する前に材料安全データシートを参照する必要があります。」

https://doi.org/10.1002/acm2.14008



May 10, 2023

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