見出し画像

#1 不朽の名作「Stand・By・Me」

早いことに2024年も気が付けばあと半年だ。
日中も日差しがかなり強い日が多くなり、またすぐに到来する暑い夏の匂いを感じる近頃である。

そんな夏前になると、毎年無性にワクワクしてくる。
まだ見ぬ知らない地に旅をしたり、そこで新しい出会いや発見、経験があるのではないかと子供の頃からいい歳になってきた今でもその心躍る感覚は全く変わらない。

しかし仕事をしていると子供のころのような長い夏休みはなく、思い描いていたことをできず妄想だけで終わる夏が多くなってくる。
だからそんなワクワクする気持ちを少しでも叶えてあげるために、映画の世界に自分の心を旅をさせてその気分を味わうのだ。

そんな少々早い夏の始まりの前にワクワクを体感させてくれるのがロブ・ライナー監督作「Stand・By・Me」(1968)
言わずとも知れた名作の青春映画だ。

※映画「Stand・By・Me」より

知らない人へ物語を説明すると、4人の少年たち(ゴーディ、クリス、テディ、バーン)が英雄になれるといった動機から森の奥で列車に轢かれた死体を探しにいくというひと夏の冒険物語である。

冒頭の長い年月が経た主人公(ゴーディ)が悲しきニュースを知り、物思いにふける中、車内の窓から自転車で走る少年たちの姿をみては自身の二度と戻ることができないひと夏の思い出を思い返すシーンが音楽も相まって懐かしさや切なさを感じさせる。

そしてロケ地であるオレゴン州ブラウンズビルの情景もその時代にしかない夏の空気感やカラーが画から溢れ出てきて、自然とその世界に没入できるのがすごく心地良い。

本作のひと夏の冒険をする4人はみなそれぞれ決して恵まれたとは言えない家庭環境で育ち、家族間での人間関係の難しさがあることが共通である。
それにより将来に希望が見出せなかったり、夢へ踏み込む勇気が持てないなど少年たち特有の悩みを抱えていた。

そんな悩みや葛藤がありながらも4人は普段からよく遊んでいて、一緒にいると楽しいからと一切濁りのない純粋な気持ちで少年時代を共に過ごした友達だった。

ある日ひょんなことからバーンがまだ誰にも発見されていない、列車に跳ねられた死体があることを不良メンバーの2人から盗み聞きする。
そしてそれを仲間たちに共有すると盛り上がり、「英雄になれる」という純粋な発想から長い人生の中ではまだまだちっぽけな彼らの大きな冒険が始まるのだった。


この映画の見どころとは少年たちの成長だと感じた。
たった2日の冒険ではあったが少年たちにとっては大きすぎる2日間のワクワクした数々の出来事やトラブル、その経験を通して少年たち特有の悩みと向きあい、将来を語り励ましあうことで友情が強くなり、冒険前よりもはるかに人間的に成長できる姿をたった90分で濃密に無駄なく描かれていることが魅力であると思う。

「何だって できるさ」

このセリフはゴーディが冒険した友人の一人のクリスに言った言葉である。
この言葉は冒険をして成長したからこそ説得力があり、グッとくるセリフである。
冒険が終わってもまだ少しどこか不安気なクリスの背中を押し、間違いなく自信を確信づけさせてくれたものであり、ここまでゴーディたちと一緒に旅をした全視聴者に向けられた言葉でもあると思い、何か迷いや不安・悩みがある人にとってとても勇気づけられるプレゼントであろう。


※少しネタバレ注意



その後終盤のシーンでは四人ともそれぞれに背を向けて帰路につく画があるのだが、クリスだけは最後に姿がきれいさっぱり消えてしまうのだ。
ゴーディのとあるセリフとリンクするように、、、

この演出にも切なさがあるものの、やんちゃで荒く見えるが心根は繊細で仲間想いな暖かい優しさを持ったクリスという人間を表したシーンであると解釈しており感動した。

そして過去のシーンから長い年月を経た今へ

「あの12歳の時のような友だちは もうできない  もう二度度・・・」

作中ではこの言葉が出てくるが、本当にその通りだと思う。
大人になるにつれて子供のころのような純粋な感情だけで、気心の知れた友達ができるということは確かにそう多くはない。
自分も年齢を重ねるにつれて周囲の取り巻く環境も変化していく中で話す内容や行うことも変わっていき、次第には疎遠になることは誰しもがある経験であろう。
だからこそあの日あの時共に過ごした仲間たちや友人はいつまでもあると思わず、瞬間瞬間を大切にしていかなくてはならないと感じる。

この映画を観るとそんな誰もが一度は感じたことのある思いや経験、感情が沸々と溢れ出てくる。
だからこそ物語と彼らに感情移入しやすく、たった90分という映画の中では短い時間の中でも大満足できる世界中多くの人々から称賛される作品なのだろう。

伝説の俳優 リヴァー・フェニックス

実はこの映画を観ようと思ったのはもう一つある。
それはクリス役のリヴァー・フェニックスが気になっていたからだ。

※「リヴァー・フェニックス」より

この映画をきっかけに一躍有名となったリヴァーフェニックス。
23歳という若くしてこの世を去ることになった伝説の俳優であり、永遠の青春スター。

リヴァーを認知したのはとある漫画作品でのキャラクターのモデルになっていることがきっかけだ。

そこからリヴァー・フェニックスについて調べていくと生まれ育った家庭はキリスト系のカルト教団に入信しており、性的虐待が当たり前の卑劣なの環境下で過ごしていたそうだ。

教団から抜け出してからは一家を養うためにも路上でパフォーマンスをして生活費を稼ぐ日々であったという。

そしてヴィーガン主義であり、漁師たちに釣り上げられた魚を観ては無力にも殺されているかわいそうな生き物を食べていることへの嫌悪感、またユーヨークタイムズ紙で語った「あらゆる肉は殺戮によってもたらされていると理解できる年齢にその行為は学校でいじめっ子が小さい子供たちを支配しようとするのと同じ行為であると感じた」
※VOGUE WORLD Parisより
という考えのもとからヴィーガン主義を徹底していた。
この思考に至った背景には単にリヴァー自身が繊細で感性豊かな性格であることだけではなく、カルト教団での永遠に消えない傷となっている悲しい出来事によって自分と同じように傷ついてほしくないという思いからヴィーガンを選択した理由なのではないかという考察もされている。

これらのようにリヴァー・フェニックスは実生活でも幼いころから恵まれたわけではなく、ましてや想像をも絶する劣悪な環境下で育った背景があり、ヴィーガン主義で心優しい性格が今回の「Stand By Me」でのクリスの役柄とも重なる。
そんなリヴァーが演じたからこそクリスという役がより儚くも尊い存在に見えるのかも知れない。











この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?