五行が五元素でない理由
よく四柱推命、算命術、奇門遁甲、九星気学を始めとする東洋系の占術では共通して五行（ごぎょう）と十二支（じゅうにし）が使われていますが、結局のところこれってなんなの？という話です。
結論から言えば、五行は水は流れる水、木は樹木…と考えるのではなく、四季や一日一日の流れで影響される作用などを参考に万物の意象を抽象的に表現した単語となります。
五行の一番古い解説書『書經（しょきょう）』の一節『洪範篇（こうはんへん）』には次のように説明されています。
『五行は、一いわく水、二いわく火、三いわく木、四にいわく金、五にいわく土。水は潤下（じゅんか）といい、火は炎上（えんじょう）といい、木は曲直（きょくちょく）といい、金は従革（じゅうかく）といい、土はここに稼穡（かしょく）する。』
イラストにしてみるとこんな所でしょうか。
左から水は潤下（じゅんげ）、火は炎上（えんじょう）、木は曲直（きょくちょく）、金は従革（じゅうかく）、土は稼穡（かしょく）と表わしています。
漢字からある程度はイメージできますが、どういったものなのか？
簡単に説明してみますと
潤下・・・水が高いところから低いところへ流れ下っていくこと。下に向かい、どんな形にもなる、何色にも染まらないイメージ。知性や柔軟性。記憶力があり、物事の裏をみる。落ち込みやすい。
炎上・・・光輝を揚げ、盛夏にあり、気が極まり上ること。陽に照らされる、火が登るイメージ。表現力や情熱的な人。好奇心や独立心旺盛。ポジティブで野心家。
曲直・・・地にある木に、曲がったものもあれば真っ直ぐなものもある。自信や向上心。アイデアマン、アドバイスが上手。頑固な一面もある。
従革・・・革があらたまるの意で、規範に従いあらたまり、形を成すこと。器を成すとは役にたつものになることを意味する。計画性や成し遂げる力。現実的、実務能力が高い。
稼穡・・・種をまくことを稼といい、収穫することを穡と言い、作物が土を貫き、成長することからいわれている。信頼や忍耐力。安心感、安定感がある。コツコツと貯蓄に向いているがケチな一面も。
大まかに観ればこんな所でしょうか。
もちろん細分化すればきりが無いのですが……
「純粋な水」や「純粋な火」というものが存在しないのと同じで、これらの五行も何かしら他の要素が含まれて存在しています。（とくに土は解釈がややこしいです）
前回に金生水の記事にて少し触れましたが、五行は便宜上、樹木の木や燃える火、地面、金属としての金、流れの中の水に喩えているだけで、本質的な意味ではありません。
十干十二支は季節や自然現象を表わす単語ではなく、空間や時間を人間の都合で分割して、農業など人間社会の営みから「後付けで解釈」したものと捉えてもらって構いません。
抽象的な概念によって意味されている具体的な状態を指すので、認知の対象が拡がるほど偏見が生まれるのは必定ともいえます。
では十二支は？
人は日々変わりない日常を送っているようで、実はそのコンディションは毎日変化しています。
その時間の区切りに十二支を使用します。
宇宙に存在する全てのものは陽と陰に分かれ、磁石が正反対の極を求めるように、その陰陽は常に中庸状態を求めて動き続けます。
そして十二支に含まれる十干を蔵干（図にある五行）とよび、蔵干は十二支の流れをあらわしており、人によって冬に力を発揮しやすいとか、夏にはなんだか元気がないというコンディションの変化を示しています。
そのベストな様子を見極めるのが、東洋思想の考え方の基本です。
十干はそれぞれ意味や力量は厳然と有していますが、地支の十二支中にある十干（火とか水とか）にはそのような意味や力量はありません。
支は支として変化や働きをみればいいのです。
たとえば子は冬なので寒くて水の性質が強めとか、あるいは逆に火の性質が弱るとか、天干の状態（身旺、身弱）を表わすものだと考えてください。
冬の雪が夏の太陽に飛びかかる…というような、子の蔵干が飛び出して、他の干と関わるということはありません。
（ただし支同士の作用では子と午が冲で離反しやすいという具合に使われることがあります。この辺りは複雑なので今回は説明を省略しますが。）
なんだか複雑な概念の様に思えますが、固定観念や先入観にとらわれず、自然哲学という背景を意識して、自由な発想や想像力、柔軟な対応を心掛けるようにして下さい。
意味や事象などを解釈することで、柔軟性が養われ、想像力や発想力、応用力などが高まるかもしれません。
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