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自転車旅~土佐・久礼大正町市場編~

高知自転車旅二日目

とある海沿いの小さな魚市場へ行きたくなった

その名も久礼大正町市場

ふらっと寄って、美味しい御魚を食べて

そのまま次の日の目的地・四万十川まで電車で移動しよう

そんな軽い気持ちで須崎という駅で降り

相棒の折りたたみ自転車にまたがりゆっくりと走る

須崎駅から土佐久礼の市場までは距離にしておよそ12km

自転車ならほんの40分ほどでついてしまう距離だ

初夏の風が気持ちいい

ルンルン気分でこぎだす自分

駅前の市街地を離れ郊外へ

途中にはこんなトンネルも

まだこのときは体力があった・・・

そう、少なくとも写真を撮れるくらいには・・・

そして段々と家並から離れていき

徐々に道は険しくなっていく

次第に景色も山深くなっていき

道も荒れてきた

これ・・・

もしかして・・・・

そう。気づいた時には遅かった

眼前に広がるのは見渡す限りに続く上り坂

大きな峠道を一つ越えなければ土佐久礼の街へは辿り着けないのだ

嘘でしょ・・・・

軽く立ち寄るくらいのつもりでいたのに・・・

今流行りのあれですよ

自転車で街の中をゆっくり走るあれですよ・・・

ポタリングとか、ゆるポタとかいう

あのもう名前からしてゆるそうで楽そうなやつ

あんな感じの腹積もりでいたのに

これはもう苦行ではありませんか・・・

ああ・・・魚市場への道程がまさかこんな険しいモノになるとは予想もしていなかった

次第に傾斜も厳しさを増していき

漕ぐのを諦め自転車を降りて押しながら歩く

まだ5月とは言え直射日光の照りつける峠道を歩くのは非常に堪えた

少し歩くだけで汗が滝のように噴き出してくる

そしてやっと暑さをしのげるトンネルに入ると

暗闇の中を歩く自分の真横を大型トラックが猛スピードで駆け抜けていく

風圧と爆音の恐怖で本当に何度も死ぬかと思った・・・・(笑)

ここで死んだらシャレにならない

まだ仕事でも何も成し遂げていないし

結婚もしていないし

人生やり残したことがいっぱいあるのに

人生の最後が一人旅中に真っ暗なトンネルの中で事故死なんて死んでも嫌や・・・

そう祈りながら歩いた

多分1時間くらい、漕いだり歩いたりを繰り返しただろうか

途中お遍路さんの横を通り過ぎたりもして

「ああ・・・この灼熱の中歩き続けて果たして何を思うのだろうか・・・」とか

「いや・・・でも自分もお遍路さんと同じように苦行と思える道程を進んでいるな・・・」とか

「この苦行の果てに何があるのだろうか?」など

色んな思考が駆け巡った峠道だった

そして、いくつかのトンネルを抜けると

やっとね・・・見えましたよ・・・・そう・・・

海が!!!!

うおーーーー!

この景色は素晴らしかった!

思わずジオラマチックに写真を撮ってしまった(笑)

海の潮風と山の緑が入り混じる初夏の一本道

灼熱の峠道を進んできた自分には最高のご褒美だった

そしてここから魚市場への道程は緩やかな下り坂

疲れ果てた自分の体力も徐々に回復し

次第に景色もひらけていき、

そして・・・ついに街並みらしきものが・・・!


多分大昔の人々の生活は徒歩が一般的だから

集落から集落へ移動するときは、おそらくこんな感じだったんだろうな

集落を出て、空白地帯があって、また次の集落が見えてくる

最近は、まあ別に悪いことじゃないけれど

どこの街へ行っても街と街の継ぎ目、空白地帯が無くて

どの街へ行っても代わり映えの無い景色を目にすることが多い

ロードサイドの開発も進んでしまって国道沿いには大型チェーン店が軒を連ねるようになって

元々その街が持っていた「顔」みたいなものが失われて行ってしまったんだなと

でも元々は各街もそれぞれの集落だったわけで

集落から集落へと移動する道中にはこうした継ぎ目が昔はあったはずだよなと思った

だから純粋にうれしかった

土佐久礼の街が見えたときは

人の営みがそこにあるというだけでこんなにも温かさを感じられるのかということを初めて知った


そしてついに土佐久礼の街へ

街一番と思われる商店街へいくと

ででーん!!!久礼大正町市場へ到着!!!

市場の中は新鮮な魚介が並ぶ

ハマチにカンパチ、イサキ、イカ、タイ・・・・



興奮覚めやらぬなか

市場の中で卸したての魚を食べる!

うひょー!

これがね、本当においしかった!

イカの甘味といい、カンパチのぷりぷり具合といい、タイの極上の旨みといい

もう何て言うのかな?

舌で感じるとかそういう次元じゃないよね

もう全身だよね!全身で浴びた!

そんな感じ(笑)

いやもう素材自体が素晴らしいのはもちろんのこと

自分の空腹具合も相まってか至上最高に美味かった!!!

だからね、一番何が言いたいかっていうと

「空腹は最高の調味料」

この言葉がこれほど身に染みた一日は無かった・・・

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