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大学の先生になる方法(序章)

 ブラック企業に働いていた人間(ボクです)がいろいろな要因が重なりまくって准教授になって、しかも4年で辞めてしまった(2019年度末)。だから…というわけじゃないけど、「なんで辞めたの?」と質問を頂くこともある。
 昔のボクを知っている友人は「オマエが大学の先生て意味がわからない」とか「何がどうつながるとそうなるんだ?」と猛ツッコミ(笑)。何より自分自身が『なんでかなぁ?』という感じだったわけで(汗)。

 とは言え、世の中には「大学の先生になりたい」「いや、大学の先生までは行かなくても、若い人の前で自分の体験を話したい」ってニーズが少なからずある。この記事がそんな方々のためになればいいかな…と思って書いておくことにする。

 大学の先生になるルートはいくつかあるのだろうけど、ボクのケースはちょっと特殊だと思っている。だから再現性は低いのかもしれない。ただ、入職するとこんなこと求められるんですよといったことは書ける。
 実務家教員といって、社会人を経験した人が大学教員になるニーズもある。

 ちなみにボクが勤務していた大学は愛知県にあって、私立文系。入職当時の偏差値はボーダーフリー。今は少々伸びているらしい。ちなみにスタディサプリによると愛知には文理合わせて私立大学が46校(2020/6/29現在)。

そもそも何を教えていたの?

 ボクが担当していたのはキャリア系授業。あまり馴染みのない科目かもしれないけど、実はいくつかのテーマがあって
1)大学生活始まったけど、この4年、どう使おうか?
2)就職活動いきなり始まるとシンドイからお試ししない?
3)さぁ、就職活動がそろそろ始まるけどどうする?

…といったことを自分なりに追求していく時間です。なので、正解が無くて、どちらかと言うと周りの学生と喋ったり、先輩方の話を聴いたり、社会人の方の話を聴いたり、そこで感じたことをまた喋ったり、書いたり、その上で考えたり…って進め方。
 
1、2、3の役割は…
1)は 初年次教育の一環という位置付け(という認識をしている)。
2)は 必修科目になっているインターンシップ周辺を扱っていた。
3)は まぁ、平たく言うと就活講座的位置付け。 

…となる。年度によって選択科目扱いになったり、必修科目扱いになったりしているけれど、少ない時で20人程度。多い時だと150人の学生が教室に座る。

 この話を 俗に言う就職氷河期世代、リーマンショック後に就職した方に説明をすると「自分が学生の時、ひろさんが仰るような授業があったら良かったのに…」と言われることが多いかな。
 日本の大学でキャリア系、キャリアデザイン系の授業が一般的になってきたのはリーマン後(一部の先進的な大学ではもっと早かったみたい)なので、まぁ仕方ないよね。ボクも自分の学生時代にこんな授業があったら…履修してなかったかも(オイ)。

 ただ、このキャリア系授業は大学の考え方やスタンス、毎年の就職実績などによって位置付けが違う。学部の授業として必修…、一部の学部のみ単位化…、それぞれの先生方の裁量で授業の一コマを充てている…など、かなり幅がある。

 そのため、専任教員としてキャリア系の先生が存在する…という大学はレアだし、公募もあまりされないのが実情。長くお付き合いのある非常勤講師の方が活躍されているケースが多い印象です。
 ボクの勤務校は当時の就職実績が奮わず、大学として大きな課題を抱えていた状態だったようで、いくつかの偶然が重なりまくって採用になったわけです。(また別の日にこの辺りのことは書きます)

 毎年の就職実績であまりご苦労のない(少ない)大学だと、キャリアセンター(昔の就職課ね)主催のガイダンスだけでコトが済んでしまう(その後は放ったらかし…という意味ではない)大学もある。ザッと概要を聴いたら「あ、あとは自分でやります(調べます、動きます)んでいいです」的な学生が多い大学ね。

授業の中身についてちょっとだけ

 一般の学生からは「自分のことや周りにいる他の学生のことが知れるから、他の授業よりは楽しい」とか、嬉しいことを言ってくれるコメントシートを毎年数多くいただいたなぁ。
 確かに一般的な科目が扱うテーマは自分の外側にあるよね。一方で、キャリア系科目は矢印が自分に向いている。時々、自分の外側に矢印を向ける。若者に限らずだけど、自分自身の探究ってテーマは苦しい部分もあるけれど、それが結果として楽しい部分に繋がっていたりする。

 それにボクが担当していた授業では、本物の人事担当者や内定者、インターンシップを楽しんだ学生をお招きしてリアルな現場の話をナマナマしくお伝えいただくようにしていた。その時の企業選定、日時のアレンジなどはちょっと大変だった記憶があるけど。

 以上のようなわけで、就職活動ならオレもやったことあるから語れるよ!的な売り込みはいくつか頂いていたけど、それではダメで、一般化できる内容ですか?というコトが大事。
 オトナの皆さんに語っていただくならば、尚更、気合と根性と根回しで内定ゲットぉおおお!みたいな話もNGです。 
 
 また、アジア圏からの留学生にも、ほぼ同じ授業を実施していた(一部は留学生向けにカスタマイズしていたけどね)ので、日本の就職事情とか仕事事情、雇用スタイルなどは彼らにとって違和感満載だったと思う。
 ご存知の方も多いかも…ですが、諸外国と日本では雇用スタイルやその背景にある法的体系も全く違っていて。もうね、文化の根っこから違うもんだから、就職活動も根本的に違うんですよね。

 そんな事情もあって、色んな学生を混ぜることをコンセプトに授業を設計、運営していたなぁ。運動部と非運動部、女子と男子、日本人と留学生、東海地方出身者と他のエリア出身者…という具合。
 混ざることで価値観の多様さに触れてもらったり、知っていることの幅の違いを知覚してもらったり、お互いに見えている景色のズレを認識してもらったりしていた。

 つまり大雑把にまとめて、授業としてどういうコトが求められるのか?というと、キャリア系科目の場合、例えば100人の学生が話を聴いて、その通りにやってみて、大体70〜80人くらい、少なくとも半分はおおよそ同じような結果成果を出せるようなこと。これを伝えなくちゃいけない。
 なので、個人的体験をバックボーンにしただけのお話だと学生がついていけない。そりゃそーだ。

大学ってどんな組織なの?

 小中高のように大きな職員室に各学年の先生がいる…と言うことはありません。それと教員(教授、准教授)と職員(事務局職員)は明確に仕事の定義が異なります。もちろん協力関係にあります。仲がよろしいかどうかはさておき。
 大学には一般的に学部があって、教授、准教授と言われる方々はこの学部に所属します。大規模大学だと学部ごとに教務課、キャリアセンターが紐づいていたりしますが、中規模、小規模大学ではそんなことはないですね。
 また、旧帝大や大規模かつ歴史のある私大だと、学部以外にも、研究所(研究センター)などを設置しているところが多く、国全体の社会科学、自然科学、人間科学など各研究分野の先端を担おうと日々、切磋琢磨されています。
 こうした研究所(研究センター)などにも教授、准教授、助手、事務局職員などが配置されていて、中には海外のサテライトキャンパスでその国の学生を育成しながら研究活動に勤しんでいる方などもいます。

 また、ほぼ全ての教員が教える以外の別の役割を担っていて、○○委員会とか進路委員会とかそこでの周知事項を各学部に落として…とか、事務局とのやりとりが結構膨大にあったりとか…されてます。
 他にも、卒業生を送り出してくださる地元の高校さんとの連携授業、商工会議所さんとの連携活動、文化活動のお手伝い、教育委員会の会合に出席…と、ご自身の専門にちょっとカスってるけど、専門外のことやったり…と結構多忙です。

 あ、肝心なことを1つ。
 日本国内にある全ての大学は所轄官庁が文部科学省となっていて、わかりやすく言うと、文部科学省の管理下にあります。
 つまりは、ほぼ全ての大学が文部科学省の交付金、補助金によって運営されており、5年に1度(だったかな)のタイミングで監査が入り、各部門、各部局、各学部の活動を報告する必要があります。
 また、毎年輩出する卒業生の進路先も報告することになっています。某経済誌で掲出される全国大学就職ランキング400…みたいな企画はこの調査が下敷きになって作成されていますね。

 そしてボクが在籍していた当時は、基本的に全ての会議資料がデータではなく紙で配布されていた。タブレット端末もノートPCも使っていたけど、会議では紙。そこは4年間で変わらなかったな。

大学の先生になるための資格

 実は、大学の先生になるための資格って無いんです。教員免許も必要ない。これにはボク自身も最初、めちゃめちゃ驚きました。どういうことなのか分からなくて、面接してくださった学長(当時)に尋ねました。すると…

大学の教員ってのは教えるプロじゃなくていいんですよ。普通。研究者ですからね。まぁ、教えるのが(以下、自主規制)。
第一、大学の教員ってのは就職したことがない。世間知らずなんですよ。だから、就職に関することは教えられんのです。フォフォ

的なお答え。

 ただ、一般的な経済学部とか管理栄養学部の先生になろうとする場合は話が違います。
 募集資格のところに大学院を修了、もしくは卒業していることという但書きがあります。つまりは博士(ドクター)、もしくは修士(マスター)の資格が必要ですよ…と。
 例外的に法律系・会計系(弁護士、中小企業診断士、公認会計士、税理士、弁理士など)の資格をお持ちの方は院卒でなくても、社会人大学院や学部において、該当する領域の授業を依頼されるケースがあります。
 ボクも在籍時にそうした先生方を数名、存じ上げています。

…とまぁ、長くなってきたのでこのくらいで。

 全国に大学は700校以上あるわけで、全ての大学が同じではないですが、大体こんなところ…という捉え方でお願いします。
続編は…どうしよう。需要あればやります(笑)。


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