「震災前よりいい街にする」呪縛の10年

 2021年3月11日木曜日。東日本大震災発生から10年となった。
 震災被災地岩手県釜石市(かまいしし)に、かつて5年余居住した私は、多くの友人、知人がいる。一方で、大津波により、10人以上の親しい人々を失った。以来、同市と隣町上閉伊郡大槌町(おおつちちょう)の変遷を、映像に記録し続ける。
 釜石市も大槌町も、震災前と風景が一変した。膨大な量の土砂を積み上げ、コンクリートで固め尽くした人工地盤の上に、鉄骨構造の建造物を建てる。街は整然とし、「復興しました」感が横溢する。しかし、これは、自然と人間が共生してきた「三陸世界」ではない。
 大槌町は、城壁を思わせる巨大防潮堤が、町中心部を囲み、海と陸が分断さてしまった。「城塞のような街」が出来上がりつつある。城塞の中に入ると、海は全く見えない。これでは、異変に気づくこともできず、防災上、むしろ危険であろう。
 いったい、何が復興をこのようにさせたのか?「復興は全て正しい」との思い込みは、誤りである。「大槌町の10年」を論考したい。
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