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妄想人間シアター

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中編ミステリー小説です。
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記事一覧

妄想人間シアター第一話 「泣く女 鴻池光広」 

 創作大賞2024 ミステリー小説部門応募作 (あらすじ)  舛添史郎は、演劇の指導をするため…

火呂居美智
1か月前
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妄想人間シアター第二話 「発端 舛添史郎」

 一時間ほど前、私はこの施設を訪れた。  大槻幸雄の勤め先は、取り壊し寸前の旧校舎を思わ…

火呂居美智
1か月前
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妄想人間シアター第三話 「迷走 秋山龍介」

 鴻池光広の次は、秋山龍介の脚本だった。  秋山は、鷲鼻と切れ長のあごが特徴的な紳士前と…

火呂居美智
1か月前
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妄想人間シアター第四話 「偽りの歌 平正勝」

 吉武は特にそれ以上、そこで行われていたことについて詮索はしなかった。  本当に勘違いを…

火呂居美智
1か月前
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妄想人間シアター第五話 「赤い葉っぱ 舛添詩織」

 おそらくその頃、別室では、こんなことが起こっていたと推測される。  吉武青年は、彼独自…

火呂居美智
1か月前
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妄想人間シアター第六話 「完ぺきな王様 川野貢」

 女と男が絡み合っている。  う、ううああ……。  思わず漏れた、男の弱々しい呻き声。  …

火呂居美智
1か月前
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妄想人間シアター最終話 「妄想人間シアター 戸川スミレ」

「この物語は、主人公の演劇青年Mが、ある歴史の古い精神病院の閉鎖病棟を訪れることから始まるの。彼は、患者たちに演劇の指導をするつもりでこの場所にやってくるわ」  戸川スミレは、瞬きひとつせず、じっと私の目を見据えながら、話を始めた。 「だけど、患者たちは演劇の基本のあれこれは無視して、それぞれが脚本を書いてきたから、演劇の経験者であるMに目を通してくれって言って聞かないの」  私は思わず眉をひそめた。 「Mは、しぶしぶながらもその提案を受け入れる。彼らの書いた脚本をひとつひと