WEBマンガの作り方(第3回)〔WEBマンガで掲載されるコツ〕
こんにちは。田中裕久です。
みなさんは楽しい火曜日の昼をお過ごしですか? 私の方は、4月1日からドトールでタバコを吸えなくなってしまったために、15年通ったドトールに別れを告げ、ベローチェ&タリーズパターンに入りました。
別れと言えば、今朝、自分が16年前から11年前まで勤めていた専門学校が閉校になったことを知りました。何だか、ちょっとセンチメンタルです。
マンガアプリで掲載を勝ち取るコツ
さてさて、出し惜しみせずに、WEBマンガで自分の作品が掲載される確率が飛躍的に上がる方法をお伝えしましょうね。
それは、読者の「直感的な感情移入」を企画と演出でいかに煽るか、です。
みなさん、感情移入という言葉は知っていると思います。多くはフィクションの映画やドラマ・マンガやアニメを読んでいる時に、いつの間にか、登場するキャラクターが自分のことのように錯覚をし、そのキャラクターがピンチになればハラハラするし、長い努力の末、そのキャラクターが勝利すると、自分のことのようにうれしい。これが、辞書的な意味での感情移入です。
この感情移入を説明する時に、とても好きなエピソードがあります。
それは昔、日本映画で高倉健が主演の任侠・ヤクザ映画が沢山公開されていた。当時は映画館しかありませんから、みんな映画館のフルスクリーンで、プロの脚本家が描き・プロの演出家が演出した最高の舞台で稀代の名優高倉健が、すごくすごくかっこよいヤクザを2時間演じる。
すると、2時間後に映画館から出てきた人たちは、ほとんどがポケットに手を突っ込んで、健さんよろしく、ヤクザ歩きになっていた、というエピソードです。
観客は、もちろんみなさんヤクザじゃない。サラリーマンの人も、公務員も、自営業者も、学生だっていたでしょう。ただ、2時間のスペシャルプログラムを観た後は、みんなが「高倉健」になる。
これが、私が一番好きな感情移入に関するエピソードです。
さて、そんな感情移入ですが、先ほど、「多くはフィクション」と言いましたが、実は、我々の日常生活にも、感情移入は多くあります。
東京オリンピックは延期されましたが、例えばオリンピックやサッカーのW杯。何故、みんなあんなに興奮するんでしょうね?
すごく冷静に考えれば、例えば、サッカーW杯で私たちは何故あんなに熱狂するのですかね? 例えば本田がゴールを決めると私に1000万円入ってくるというようなシステムがあれば、手に汗を握るでしょう。
しかし、日本が勝とうが負けようが、実際の私の生活にはなんの関係もないのです。
でも、応援する。何故ならば、本田や香川は、私たち「日本人」代表なのです。
人間は群れの生き物ですから、自分たちの群れの代表が他の群れの代表と戦った時に、興奮したり、勝ちたいと強く念じることが、私たちの本能の奥底に刻み込まれているのです。
これは、人間の習性です。上手な脚本家やマンガ家は、この人間の習性をよく理解していて、多くの場合、逆算して視聴者や読者を序盤から中盤で感情移入させ、山場でカタルシスを与える技術をよく知っています。
いろんなパターンがありますが、そのやり方は、世界全体からみると、ほぼ出尽くしています。99.99%の作品は、その焼き直しでしかありません。
直感的な感情移入と論理的な感情移入
さて、ここからが私の伝えたいことです。これは、まだ世界で私しか発明していないことです。ドキドキします。
私の考えでは、人間の感情移入には2つの種類があります。1つは「直感的な感情移入」と、もう1つは「論理的な感情移入」です。
説明しましょう。
「直感的な感情移入」とは、人間の思考を介さない、直感的で感覚的な脳の動きです。具体的には、エロ・グロ・ホラー・ミステリー・不安・シチュエーション・フェチズムなどがこれに当たります。
みなさんも、若い時に1度は、「これ観たら絶対気持ち悪くなる」と思いながら、YouTubeのグロ動画を観たことがありませんか?
その動画を観た時、人間は「これは犬の寄生虫、名前は〇〇だな。この寄生虫は成虫になるまでこれぐらいの期間だから、この犬はほぼ間違いなく死亡だな」みたいな、論理で考えない。
ただ、犬の皮膚から寄生虫が絞り出される動画の気持ち悪さに、思考が止まり、気づいたら画面にくぎ付けになっている(食事中の方などいましたらすいません。私も、書いていて気持ち悪いです)。
エロ。例えば、私たちは日常生活を暮らしていて、たまーに「パンチラ」なるものに出くわします。例えば、駅の階段で目の前を歩いていた子のミニスカートからパンティが見える。倫理上、あるいは周りの視線を気にして、わざと見ていないフリをすることもありますが、だいたいは♡♡になりませんかね?
これも、「お、この階段は他の駅に比べて段差があり急こう配だから、あと3段後ろからだと角度的に彼女のパンティが見えるな。お、やはり計算通り見えた。色は、白か。素材は何だろう?」などとは考えません。
ただ、♡♡となって、あとで、「なんか得したな」ぐらいを考える。私は脚フェチですが、やはり、生活の中で綺麗な女性の脚を見ると、なんとなく視線が追いかけている。
これも、言語化されているものではないし、例えば「何故お前は脚フェチなのだ?」と言われても、答えがない。
ただ、「業・カルマみたいなものですかね?」としか思えない。これは、「何故あなたはロリコンなんですか?」とか、「何故あなたはこういうカップリングで萌えるのですか?」という質問と一緒です。
元々が思考や言語を介さず、脳みそ&ハートで「♡♡」になるのです。
これが、私の言うところの直感的な感情移入です。
WEBマンガと「直感的感情移入」の親和性
さて、ここまで来ると、みなさんはこの直感的な感情移入に対して、何かを感じませんか?
実は、WEBマンガは、紙のマンガに比べて、圧倒的にこの直感的な感情移入が多いし、度合いが強いのです。
理由は、まずスマートフォンの画面が小さい。また、細かい文字があっても、人は読まない、からです。
もう1つ、無料のWEBマンガは、10代・20代のマンガ読みからすると比較的に若年層をターゲットにしたものが多い。
なので、まだあまり沢山の物語を読んだことのない読者に向けて、これでもかというほど脳みそとハートに訴えるシーンを作れば、ランキングが上がりやすいからです。
また、このマンガランキングはなかなか難しいもので、一度下がってしまうと、ほとんどの人はそこまでスクロールしてくれないので、ほぼ復活は不可能です。
なので、WEBマンガの作者と編集者は、とにかく直感的な感情移入が出来るシーンや絵、シチュエーションを作ります。
例えば、LINEマンガの「パンプキンナイト」1話めで、普通生き延びる系の顔をしているヒロインが、昔イジメていて、精神病院から脱出したパンプキンに復讐のために殺されます。
ここで注目して欲しいのは、25ページからです。
パンプキンは、ヒロインの背中に包丁を突き立てます。今までの紙のマンガだと、これは「死」を意味します。
リアル人間も、包丁を背中に刺されたらのたうち回って死ぬでしょうが、この作品のすごいのはここからで、包丁で目玉をくり抜かれ、目が見えないまま大通りに出て、トラックにはねられて、バラバラしたいになります。
大人の私からすると、目をそむけたくなるようなマンガです。
しかし、これはLINEマンガでとても売れています。
繰り返しますが、マンガの文法で言うと、ヒロインは背中に包丁を刺されただけで、「死」なのです。
しかし、WEBマンガは、この直感的な感情移入をこれでもかと盛り込むので、背中を刺してからの続きを描きます。
プロット・ストーリーにおいてはまったく意味がないけれど、とにかく読者に衝撃を与えるために、そこを描くのです。
ずばり、これが、WEBマンガで掲載を獲得し、売れるための一番有効な方法です。
さて、みなさんの原稿、特にイントロや1話めに、最大の画角で、こういう「直感的な感情移入」の仕組みは入っていたでしょうか?
おそらく、ほとんどの方はないと思います。
確かに、紙マンガを見てきた我々からすると、「やり過ぎじゃないか」「別に続きは読みたくない」かもしれませんが、現実的に、WEBマンガではそういうのばかり売れているので、私たちがもし現実的にWEBマンガで飯を食いたいと思ったら、グロだけではないのですが、読者が思考を使わずに「お!」となるような仕掛けを作らなければならないのです。
「論理的な感情移入」と、「直感的な感情移入と論理的な感情移入を組み合わせる方法」は、金曜日にお話しますね。
では、みなさんお元気で。
これからベローチェを出てタリーズに移動します。
田中裕久
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