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仕事は楽しいものです

限られた人生の中で、満足した上で自分が成長できて更に社会に認められるような仕事の進め方のコツが幾つかあるように思います。同僚や自分自身を振り返ってみて気づいた点の幾つかを紹介します。仕事は子供の頃の遊びよりも面白い。

道具を砥ぐ

やみくもに進むより自分磨きの時間を作る。『よい工人は先ずその道具を研く、良い字を書く人は必ず良い筆を使う』これは空海さんが淳和天皇となる皇太子に筆一式を贈った時の言葉です。

『良工は先ずその刀を砥ぐ』とは、良い職人は道具を大切にし、常に準備を怠らないという事。空海さんは書の名人で『弘法、筆を選ばず』という諺(ことわざ)でも有名です。しかし唐で書や筆について学んだ空海さんは良い筆を選び、書体や書の主旨に応じて使い分ける事が大事であることを誰よりもよく知っていました。

道具についてこんなたとえ話があります。力自慢で朝から晩まで斧を振り続ける木こりと、時々上手に休憩を入れて斧を振る木こりがいて、仕事が終わってみると、決まって休憩を入れる木こりの方が倒した木の数が多かったのです。『なぜ、いつもお前の方が多いのか』と力自慢の木こりが聞くと、もう一人は『分からない、ただ私は時々斧を研いてから切っているだけだ』と答えました。

この道具を研くというのは足を止めて『自分を磨き、高める時間』を持つという事で』ただやみくもに進むよりも、その貴重な時間が仕事の成功へと導きます。

やらないよりまし

植木職人の棟梁は作業する人と一緒に自分も剪定をしていますが、時々手を止めて全体を見まわします。あれは、庭全体の調和がとれているのかを確認しているそうです。棟梁権限で作業をさぼっているのではないとの事です。

『やらないよりまし』という判断はほとんどのケースに当てはまります。『でもこんな事やったって』とか『その場しのぎじゃないのか』と考える人がいるとすれば、その人は大きな勘違いをしています。その場しのぎでもなんでも、やらないよりましな事があったら、どんどん動いて実行すれば少しずつ解決に近づいて行くからです。『まし』『まし』の積み重ねが難しい局面を動かす事になります。つまり物事をいい方向に向かわせる事になります。

例えば、仕事が思うようにいかない時には、細かい作業の積み重ねが無駄な努力の様に感じます。『あと30分で昼休みだ、どうせろくな仕事は出来ないな』と思えば午後の段取りを考えたり、一気に片付ける方法は無いかと頭を働かせたりしません。30分で出来たはずの作業がまた午後に持ち越されて、遅れが更に大きくなる事を忘れています。

しかも動かないのですから、モチベーションは低下し続けます。結果として午後になってもまたダラダラと仕事に向かう事になります。

『やらないよりまし』と考えれば全て違ってきます。『30分で出来る事だけやっておこう。やらないよりましなのだから』そう気持ちに切り替えて『まし』な事を実行できる人は少しずつでも遅れを取りもどす事ができます。つまり、一気の解決ではなく、その時、その時の答えを出すということです。すぐに行動できる人は単純な割り切りに徹しています。

フロー状態になる

自分に合った得意な作業を続けると徐々に仕事のスキルレベルが上がっていきます。ある作曲家が言いました。仕事が上手く進む時の境地について『忘我の境地で、自分がそこに居る事さえほとんど感じず、指が勝手に動くというか、目前の出来事が自分とは関係なしに進行していく感じで私はただそこに座って、恐ろしいような不思議な気持ちで見守っているだけで、メロディーが自然に出てくるんですよ』と言っています。

版画家の棟方志功さんも次のような事を言っておられます。『我が技は我がなすにあらず、大いなる天の成す技』つまり自分の意志ではなく大きな何かに導かれている、『天が人間を通じて何かを成し遂げようとしている』という気分なのだそうです。

フローは仕事や学習に情動を有効活用している究極の状態と言えます。フローの時は情動がコントロールされているだけでなく、積極的で活気に満ちて、照準が目標にピッタリと合っています。二人が一つに溶け合う愛の行為のエクスタシーが分かり易いかもしれません。
フローの一番大きな特徴は内面から湧き上がる喜びで、歓喜といってもいいかもしれません。フローの快感はそれだけで動機付けになります。フローの時、人は自分の行為に没入し、すべての注意を一点に集中させて意識と行為が渾然一体となります。

フロー状態に入るには

一つの方法は先ず目前の課題に意識を集中します。高度に意識が集中した状態はフローの本質です。課題に取り掛かる前に心を静めます。気持ちを集中する段階ではかなりの努力が必要ですが、意識が一点に定まってしまえば、あとはプロセスが自動的に展開して情動の揺らぎから解放されて課題が簡単にこなせるようになります。

フローは軽いエクスタシーが生起する強い動機付けを別にすれば情動の雑音から一切解放された状態です。この場合エクスタシーはフローに至る為に必要な集中力がもたらす副産物と思われます。

フロー状態の人を見ていると難しい事を簡単にこなしている印象を受けます。最高の能力を発揮しているのに、ごく自然で当たり前の動作をしているように見えます。実はこうした印象のパラドックスが脳の中でも起こっているみたいです。最も難しい課題が最も少量の知的エネルギーで処理されているのです。フローの時、脳は冷めた状態にあります。

神経回路の覚醒も抑制も、全て課題達成に必要なレベルに調整されています。行為に没頭している時、皮質の覚醒状態はやわらぎ、脳は『おとなしい』状態から『くつろいだ』状態になります。そういう状態の同僚を見つけた時はフローが続けられるように電話を取り次いだり話しかけたり等の妨害をしない事が肝要です。

食器棚

      これを作っている時は時間を忘れてフロー状態でした

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