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言霊と所作

コミュニケーションにおいては言葉以外の要素が伝わる割合は8割と言われています。その中でも言霊と所作には人の正直な心が現れやすいのでこれに関して特に大事なこの二つに関して述べてみます。

言霊とは言葉の表現の中で話しの順番、抑揚や強弱、間の取り方などにより大きく変わります。もめ事の仲裁の時など、その原因を聞いてみると言葉の内容だけが表に出る事が多いようですが、言葉の内容だけでは心の中身が表現されているとは言えません。言霊と所作という二つの要素抜きでは正確な内容の表現はできていません。

言霊(ことだま)

以前私より年配の人と一緒に一流ホテルで食事をしました。ようやく食事が終わりかけた時、遠く離れたところにいるウエイトレスの女性に大きな声で呼びかけました。『おい、姉ちゃん、早よ水持って来んか』そしてふんぞり返っていました。まさに時代劇に出てくる威丈高な悪代官そのものでした。それを見て彼に対する尊敬の念は消えうせました。

私が30歳を過ぎたころ、サウジアラビアのリヤドに出張した事があります。日本の官僚の人に呼ばれて、駐在員の人と一緒に指定された研修所の事務所に行きました。そしてそこで見た光景に唖然としました。何と私より若い20歳代と見える童顔の日本人出張者が机の上に足を載せて腕を組んで『電子会議システムを見積もってくれ』と命令口調で言うのです。たぶん、格好をつけているつもりでしょうが、他のサウジ人もいる中でこの態度は同じ日本人として恥ずべきと思いました。それで見積もりのための現場の計測は一応済ませましたが、見積もりは後回しにしました。

帰国後、彼の目線による出来事の報告を私の上司に告げられました。当時は自分が若かった為、反省すべき点もありますが、言霊と所作の重要性を強く感じました。

相手から突然思いがけない言葉を浴びせられて唖然とする。ところが後になって『つい心にもない事を申しまして・・・』と謝ったりする。心にあるからつい出てしまうのではないでしょうか。本当に心にもない事を言えば必ず相手の心には『慇懃無礼』と映ります。表面は丁寧に見えても、実は傲慢、横柄といった態度です。口先だけのお世辞や挨拶では人の心は動かせません。

心の働きが思考となり、思考の表現が言葉になります。しかし、人は思考する時は自分の知っている言葉でします。だから言葉が心の表現となります。『はじめに言葉ありき』です。心に力があるように言葉にも力があります。我が国では言葉の持つこの霊妙な力を『言霊』と呼び大切にしています。

心の姿そのものは見えなくてもその人の言霊や所作によってその人の心は白日の下にさらされます。

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