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大病を患う

子供の頃から健康に恵まれて2019年10月まで入院するような病気を患った経験はありませんでした。ところが、その日の朝、トイレに行こうと思ったのですが足が動かなくなっていて寝台の横で倒れて救急車で搬送されました。検査してもらうと様々な箇所に問題が見つかり6か月もの間、病院のお世話になりました。特に前半は寝返りができずトイレにも行けず大変不便な時間を過ごしました。健康は大事だと心から思いました。

入院から一週間は腰が痛くて苦しみました。足が動かない状態だと痛みがとれても自分の世界は寝た状態で手が届くところまでになってしまいます。様々な人達に大変お世話になり、回復しました。棲んでいる世界が狭まると心まで小さく、悲観的になっていました。少し動けるようになって、前向きな心が蘇ってきました。その頃から病気を克服して偉業を成し遂げた先人に興味を持ちました。

カント

ドイツの哲学者イマヌエル・カント(1724-1804)は生涯、医者も驚くほどの多くの持病があったそうです。ついに主治医は匙を投げた形でこう言いました。『これだけ色々な病気を持っておれば、いちいち病気を治す事を考えずに、いかに病気であってもそれを克服して生きる勇気を神が与えて下さった事に感謝して生きてください』

その後カントは『純粋理性批判』や『道徳形而上学入門』などの業績を残しました。そして80歳で息を引き取る時、病身で過ごした自分を振り返って、『私は生来病弱の身でした。だけどこんなに色んな病を身に持ちながら哲学者として生涯を生き続ける勇気を与えて下さった事を神に感謝します』と言いました。

確かに病と病気は違います。病は体の故障です。故障は本来の正常な働きが損なわれているのですから、本来の正常な姿に戻す様に治療する事が先決です。それを『気』すなわち心まで病ますまいという事です。患者自身が是非元気になるのだという強い願望が無ければどんな名医でもその患者の病を治す事はできないと言います。

中村天風

インドの哲学者カリアッパ師の導きで当時死に病と言われていた結核から立ち直った経験のある中村天風さんは次のように言っています。

『身体は健全な精神によって作られるのであって、健全な肉体によって精神が作られるのではない。千歩譲って体が強ければ心が強くなるのだとすれば、そんな心が頼りになりますか?体が強い間だけの強い心では、身体が弱くなると心まで弱くなってしまう。そんな頼りない心なら、あっても、なかっても同じではないか』

強い心を持つ事は病気の回復にとって基本中の基本です。近年の研究では精神的ストレスが免疫力の低下と癌の発生に密接に結びついている事が明らかになっています。

心から治療しましょう

『たとえ身に病があっても心まで病ますまい。たとえ運命に非なるモノがあっても心まで悩ますまい』癌になってから一日一日を大切に生きるようになったという話はよく聞きます。自分もそうなりたいと思いました。

癌になった事で毎日、死の恐怖に怯えたりしていると免疫力が低下して転移したり癌細胞が増殖し易くなります。逆に笑顔を忘れず毎日充実した生活を続けていると免疫力が高くなり、がんの増殖を防ぎます。免疫力が強くなる事で治療の効果が高まって癌が治癒する可能性も強くなります。

運命についても同じ事が言えます。運命は字のごとく自分の命を自分が運ぶ事を言います。強い運は強い心で作れます。周りからは不運だと言われる人が、むしろ幸せに生きている場合があります。

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