値決め
小売店を運営し始める時に考える事として、売値をいくらにするかという事があります。
値決め
経営の生死を制するのは値決めです。利幅を少なくして大量に売るのか、それとも少量であっても利幅を多く取るのか、その価格設定は無段階でいくらでもあります。
どれほどの利幅を取った時にどれだけの量が売れるのか、またどれだけの利益が出るのかという予測をするのは非常に難しい事ですが、自分の製品の価値を正確に認識したうえで、量と利幅の積が極大値になる1点を求める事です。その点はお客様にとっても、自店にとっても共にハッピーである値でなくてはなりません。これは資本主義の考え方です。
共産主義の場合
ベルリンの壁が崩壊して直後、東欧の元共産主義国にテレビスタジオの工事に長期出張した事がありますが、そこでは驚いた事に、お店に売られている商品の小売値は全ての店で同じでした。不思議に思い、一緒に工事をしていた現地の人に聞いてみました。すると小売値は小売店で決めるものでは無く、それを造った工場が決めるものとの事でした。
『それなら、他店との差別化はどのようにするのか』と聞きますと、『展示の美しさ』だと答えられました。『商品の価値は工場で決められるものであり、それを流通させるだけの商業部門では不当な利益を取ってはいけない』という法律があり、これが経済の停滞を引き起こしてきたとの事でした。この理屈によりここでは卸売業などは存在しません。従ってこの国の小売店では値決めについて考える必要はありません。
日本の場合はどうか
一方、日本の小売店業界では値決めは自由ですが一般に粗利は30%なければ駄目だと言われています。つまり宣伝費、販売費、家賃、人件費、金利負担等、全ての費用を考えれば20%くらいの経費は掛かってしまいます。ならば10%弱の税引き前利益を確保するには30%の利益が要るという事になります。
流通革命を実行したダイエー創業者の中内功さんが大型小売店による大量販売により、メーカー主導の値決めが崩されるまではこの計算が一般的でした。
インターネット社会では
インターネットが発達してきた今の流通業界では日本中、いや世界中の同業者が競争相手になります。鮮度、納期、商品説明を除いて値段はどのユーザーもどこが安いか知っています。郊外の大型ショッピングセンターが出来て多くのシャッター街ができましたが、ネット販売がこれに追い打ちをかけています。
この状況が続くと商品の値崩れが起きやすく、人気商品はメーカーや輸入元ではやむなく価格指導をしています。ネット上では最安値を付けないと販売チャンスがなく競争できません。ある意味、売値については共産主義再来のような状況です。ただ違う点は納期、鮮度、商品説明と仕入れ価格が自由である事です。
現在起きている事は第二次流通革命とも言えます。小売店は価格以外の部分で競合他店に比べて付加価値を付けなければ消費者には選ばれません。ネット販売の先進国である米国ではショールーム業が発生して繁盛しているとの事ですが、これは新しい状況の中でできた新業種だと思います。
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