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旅に出る

大学4年生の夏休みにアルバイトで貯めたお金で、パリまでの往復航空券とユーレルパスという現地での列車の定期券を買いました。この定期券はそれを持っていると、ヨーロッパのどの区間でも1等の席に乗る事が出来るという便利なもので、2か月間かけて12か国をバックパックで旅行してきました。これは人生で初めての一人旅でした。

そして大学卒業の後、就職してまた独立後も中近東や中央アジアを中心に様々な国を旅行する機会に恵まれました。

ヨルダン周遊の家族旅行

湾岸戦争の最中にイラクの隣のヨルダンへ息子二人と一緒に家族旅行に行ってきました。これはドバイで買ったエミレーツ航空のパッケージツアーで長距離移動のタクシーと宿泊代金がセットになったものでした。ドバイを発ってクイーンアリア空港に着くとタクシーの運転手が私達を迎えてくれました。最初の宿泊地アンマンではセミラミスホテルに3泊しました。

アンマンはヨルダンの首都で、以前に仕事で何度か訪れた事があります。ここは高原にあって気候がすばらしく、聖書に書かれている町のような歴史的でのどかな風景の所です。宿泊は5つ星の立派なホテルでしたので主にホテルのプールで水泳を楽しんでいました。

次に訪れたのがアカバ湾近くのペトラ遺跡、ここではマリオットホテルに泊まりましたが、宿泊客は私達の他にもう一組、偶然にも日本人家族が滞在していただけでほとんどの設備は閉められていました。ここでも3泊しました。

ペトラ-3

イラクで戦争が始まってからは観光客がばったりと途絶えてしまいツアーガイドやタクシー運転手は仕事が無くて困っている様子でした。現地での移動や食事についてはパック料金に含まれていない為に毎回交渉しなければならず、いい経験ができました。

ペトラは紀元前に岩山を彫刻して作られた街で、映画『インデイジョーンズ最後の聖杯』の終わりに近いシーンで有名になった遺跡です。この町はナバタイ人により造られましたが、聖書の出エジプト記のモーゼとユダヤ人の一行がここを通ったらしいです。その後ローマ帝国アラブ属州に組み入れられましたが度重なる地震災害の為に衰退していきました。それから19世紀に発掘されるまでは歴史から忘れられていた街です。

以前イラクのバビロンを訪れた事がありますが、ほとんど発掘されておらず、それに比べて大変見ごたえのある立派な遺跡でした。

次の目的地は死海リゾートでした。今回はペトラから訪れたので南の方から渓谷を下って行きました。途中で海抜0mの標識がありました。東の方角、アンマンから行くと、同じ位の高さの所にザルカマイン温泉という十字軍の傷病兵が湯治をしたという有名な場所があります。そこはお湯が崖の途中からすごい勢いで噴出しており体に直接当てるとマッサージ効果もあるとのことでした。当時は宿泊やマッサージの設備もあり多くの人が楽しんでいました。

今回3番目の目的地は死海の畔でここは海抜マイナス350mと低い土地にある為に、気温が高く、塩分濃度が高い死海で泳いだ後は水分が直ぐに蒸発して塩の結晶が体中のうぶ毛に付きました。死海はイスラエルとの国境にある為、夜になって海岸へ行くと対岸の山の上の星空の下に聖書に出てくるナザレやベツレヘム、エルサレムのような大きな町の明かりが見えて、とても幻想的でした。

死海リゾートのモーベンピックホテルにも3泊しましたが素晴らしい設備で、ここには観光客もある程度滞在していて普通のリゾート地の様子でした。死海で水泳を楽しんでいる時に近くにいた中国人が岩の上からダイブして頭から水に突入し、余りの痛さに絶叫していました。目や鼻から塩分濃度の高い水が入ったみたいです。それからしばらくして、今度は僕の次男が絶叫しました。聞きますと水に浸かりながらオシッコをしたらしく、大きな浸透圧により体内に塩水が侵入したみたいです。

旅行から3か月後に新聞を見ていると、テロによりアンマンのセミラミスホテルのロビーが爆破されたとの写真付きの報道があって驚きました。

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マーク・トウェインの話

トム・ソーヤの冒険で知られる米国の小説家マーク・トウェインがまだフリーライターだった頃、パリ万博や地中海・エジプトなどを回るツアーの存在を知りました。しかし参加できるのは富裕層ばかりで、一介のフリーライターであるトウェインには手の出ない金額でした。しかしどうしても旅に出たかった彼は新聞社に頼み込んで『世界各地から50回、通信記事を送る』という約束のもとに、参加費用を全額負担してもらいました。

彼の旅行記は後にまとめられ、大評判になりました。彼が晩年に完成させる小説はどれもみずみずしく、冒険心に溢れたものですが、そういう感性は旅の中で磨かれたものだと言えるでしょう。

旅には時に私達の想像を超えるような素晴らしさがあります。予定を立てて準備するのは大変ですが多少の無理をしてでも旅に出ましょう。

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