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内語と外語

多国籍軍

メンバーの人数が全体で50人を超える位に拡大した時、私の理想であった多国籍軍が実現していました。10か国を超える国籍の人達が一緒に仕事をする為、コミュニケーションを同時に取るのが困難で、特に経理や技術などを主たる業務にしている人達と一つの会議を実行する時には工夫が要りました。誰かが通訳をするのでは、会議そのものがうまく進みません。

そこで会議の時はある程度の人が共通に理解できる英語を標準語にしようとなりました。またメンバーの英語レベルの向上を目指して尊敬するチンギスハーンに倣って『ナーダム』という社内英語弁論大会を開催しました。これで少なくとも皆がコミュニケーションに対する課題意識は持てたのではないかと思っています。

ところが、ある時点で日本語が流ちょうな外人メンバーが入社するに至り、日本語のすばらしい点を見直す事になりました。

内語と外語

日本語の大きな特徴は語彙が豊富にある事です。つまりひとつの事を表現するのに様々な方法があるという事です。他方、日本語は表現が曖昧だと言われています。起承転結を付けて論理的に話すのには向いていないと言われています。ただ、この二つの特徴は裏返しと考えられます。

相手に事実を伝える為の言葉を外語と言い、話した人の心を表す言葉を内語と言います。例えば外語は『この道をまっすぐに行って左に曲がりなさい』というように言葉を一つの記号として使う方法です。これは意志を伝える為に言葉を使うのであって、人の心を動かすものではありません。

これに対して内語は『あそこの赤いチューリップが綺麗』というように心を表しています。言葉を発した時にその人の自律神経に反応を及ぼすのは外語ではなく内語です。そして日本語の特徴は外語にはあまり向いていませんが、内語としては素晴らしいものであるという事です。

日本人はユーモアに欠けると言う外国人がいますが、それは日本人が内語に長けているからであって、わざわざ大げさなジェスチャーをしたり、ことさら駄洒落などを言ったりしなくてもその人の心の微妙なニュアンスを伝える事が出来るからです。この事からしても特に日本語の場合、悪口は慎んだ方がいいと言えます。

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悪口を言わない

組織の大小に関係なく、リーダーになった人は本人のいない所でメンバーの悪口を口にしてはいけません。これはチームのメンバーであろうと、他チームの若手に対してであろうと同じです。

もしそれが公平な評価であったとしてもあなたの発言は悪口と見なされ、百害あって一利なしです。なぜならまず、『悪口』を直接聞かされているメンバーの中で『そうだ、リーダーの言う通りあの人はダメだ』とか『リーダーの指摘は素晴らしい』と感じる人はいないからです。

それどころか、『この人は自分の事も同じように他の場所で悪く言っているのだろうな』と想像します。またそういう話は本人の耳に届くものです。そうなった時点で言われた本人は仕事に向かう気持ちを一気に無くしてしまいます。モチベーションは下がります。

確かにそのメンバーにはどこか欠点があるのかも知れません。しかしそれでもリーダーは本人のいない所でそれを口にしてはいけません。あなたが悪口を言っていたと伝わるからです。もし本人の言動に修正の必要があれば直接本人に伝えるべきです。

悪口は言われた人のモチベーションを下げ、リーダーの評判も下げます。つまり悪い事ばかりです。利点があったとしても、せいぜいリーダー自身のストレス発散程度です。ストレスが溜まったのであれば、誰かの足を引っ張らない方法で解消する方法を考えるべきです。

『悪口は飲み込む』これがリーダーの鉄則です。多国籍軍のリーダーはこの点には特に配慮して強い軍団を維持発展させる必要があります。

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