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クリティカルエイジ

私の娘はポーランド人と結婚して、今は旦那の実家の近くに住んでいます。孫が二人いるのですが長男は米国で生まれた事もあり、英語、日本語それも京都弁、とポーランド語を話します。無理に覚えようと勉強したわけでもないのにこうなったのは、成長期の環境の賜物であったのだと思います。成長してから英語会話に接した私は、いくら勉強したとしてもあの様にはなれません。

クリティカルエイジ

クリティカルエイジというのはDNAに刻まれた遺伝子情報で脳の学習限界年齢の事を指しています。人間の場合一般的に813歳に掛けての時期にあたります。赤ちゃんの時は140億個の脳神経細胞がありますが、成人すると一日に10万個が死滅すると言われています。年間では3650万個となり、50年では182500万個が失われていく事になります。

子供がクリティカルエイジまでに学習した場合と、それ以降に学習した場合を比較すると身に付く技能に大変な格差が生まれます。クリティカルエイジまでに英語を学んだ子供はそうでない人よりもはるかに高い英語力を獲得します。同様にクリティカルエイジまでに楽器の練習を始めた人は、そうでない人に比べはるかに高い演奏力や音楽的理解力を得ます。

脳機能の発達から言えばクリティカルエイジとは脳の神経細胞同士が神経ネットワークを形成するピークの時期を意味しています。つまり神経ネットワークが爆発的に形成されるのはクリティカルエイジまででそれ以降はその形成が緩やかになっていきます。それを過ぎると、どんなに学習に心血を注いでも脳はそれを許しません。

その理由は神経ネットワークの形成に必要な神経細胞が既に失われているからです。子供の頃に使わなかった神経細胞は不要な物と判断され淘汰されていきます。クリティカルエイジを境に使われなくなった神経細胞が雪崩を打って死滅していきます。

クリティカルエッジの孫達

幼い時に作られた神経回路は後々までヅウッと残っています。その代表的な例が言葉を聞き分ける能力でしょう。年配者が相手の言葉を聞き取れにくくなるのは、鼓膜が硬くなって振動が伝わりにくくなったのではなく脳の老化つまりソフトウェアの劣化が主な原因らしいです。

因が果になるのを助けるものを仏教では縁と言います。お釈迦様は『因だけでは果は生じない。因と縁が結びついて初めて果になるのだよ』と教えました。

例えば同じ品種のモミ種を使っても土壌の良し悪し、田んぼの手入れなど、環境の違いによってできるコメの量や質は変わってきます。縁が変われば結果も代わるのです。私達の心は弱くちょっとした縁でコロコロ変わります。

朱に交われば赤くなると言われるように周りにいる人や環境などの縁によって大きく影響されてしまうからです。どんな人と交わるかどんな環境に身を置くかかによって、これからの人生も変わってきますから周りにいる人や環境と言う縁はとても大事です。

孟母三遷の教え

孟子は子供の頃、墓場の近くに住んでいました。学業そっちのけでいつも葬式ごっこばかりしていたので、母親は見るに見かねて商店街に引っ越しました。すると『今日はいくら得した、損した』という商人の会話を聞いて育ちました。すると孟子に家事を頼むと『自給いくら?』と言ったり、損得勘定で動いたりするようになりました。

子供の頃から損得勘定だけで動く人間になってはいけないと心配した母親は次に学校の傍に引っ越しました。すると周りには勉強熱心な友達が多く、学校の先生も近くに住んでいたので、孟子は一生懸命に勉強するようになったそうです。これは『孟母三遷の教え』と言われています。

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