architectureWORKSHOP →awn/AWN設立

北山恒氏が主催する「architectureWORKSHOP」が組織改編を行い、
awnに組織名称を変更し、ネットワーク組織としての「AWN」を設立。
というニュースに触れた。
非常に現代的な組織改編で自分のやってみたかった組織の形態のひとつであったので、これからの活動が楽しみになっています。

1.建築という仕事

建築をつくるということ自体、今に限らずネットワーク型のチーム編成が無ければ成しえない行為だと常々考えてきた自分にとって、北山恒氏の組織改編という決断はごくごく自然なこととして受け止められるとともに、(北山氏に限らない)建築家という職能に期待されることとの矛盾を少し感じながら拝見した。

ここでは、私の考える「建物」と「建築」の差については言及せずに話を一度させていただきたい。(この話は別の場でしなければなりません)

建築家の仕事はいつでも、1つの組織の中にクローズされたチーム編成にはならず、オープンなネットワークの中でチーム編成がなされると考えています。建築設計事務所は基本的にはコンセプトをまとめ、デザインを担当し、プロジェクト全体をマネジメントされる能力が少なくとも要求されます。
建築という行為は、当然のことながらデザインだけで成立することはありえず、構造、設備、環境、照明などのプロとの協業によってはじめて設計フェーズが成り立ち、施工(=工事)においては、ゼネコンや工務店と呼ばれる工事会社がいて初めてモノづくりが完結します。

設計フェーズにおいて、建築家が考えるプロジェクトに対するスタンスにより、構造、設備、環境、照明などの専門事務所に声をかけチーム編成を行います。プロジェクト毎で、そのチーム編成は異なり的確なチームを組みプロジェクトに挑みます。そこに、事業主や施主がいていただいてチームとなります。

プロジェクトの規模によっては、都市計画、まちづくりの専門家、各種コンサルティング、再開発組合などのコンサル、、、などなど、大きくなればなるほどチーム編成は多様になっていきます。(ビル1棟の建設までしか経験がなく、そこまで大きなプロジェクトに関わったことがないのでほぼ推測です)

2.ジョブ型ワークスタイル

これは、昨今のジョブ型ワークスタイルそのものです。
各専門家の得意不得意、個性を終結して一つの建物を建築に昇華させるべく心血を注いでプロジェクトと向き合っている。

オフィスの設計や移転プロジェクトのマネジメント業務に携わっていると、
ピラミッド型からネットワーク型へ、終身雇用からジョブ型雇用へと
「みみたこ」になるほどここ10年ずっと耳にし続けてきました。が!
建築設計事務所のプロジェクトへの向き合い方は昭和の時代からジョブ型だったと言えるでしょう。

そのため、なぜ今頃?なぜできないのか?という疑問は常々湧いてしまいますが、それらの疑問もオフィスに携われば携わるほど理解ができるようになってきました。(この話題についても別途したいです!)

3.組織力ゼロを強みに

私は、組織に属した経験が全くないので、
組織の中でのチーム編成を発想したことがありません。
大きな組織設計であれば、意匠・構造・設備のメンバーは揃えられます。
ゼネコンに至っては、工事まで1社でチームを組むことができます。

大学院を卒業してから、設計事務所のお手伝いや、自分の仕事を少しづつ始めたので、先輩や後輩というつながりもありませんでした。
唯一あるとすれば、研究室の先輩後輩のつながりだけでした。
そんな経緯で仕事を始めた自分としては、チームを作るには苦労がありました。

株式会社TamSAという会社を立ち上げる頃、
設計事務所に就職した大学の先輩や後輩が独立をし始めていました。
日本でも有数の設計事務所で活躍した面々は独立した瞬間に、
その名のごとく独立するわけで、独りになる。
仕事が潤沢にあるわけでもなく、人財をすぐに雇えるわけでもない。
組織としてゼロから始めなければならい。
それは、独立したての建築家に共通していることでしょう。
(独立しても、在席した事務所から仕事を請けることはある)

その状況は学生時代から認識していた事態です。
日本有数の設計事務所で修行ともいえる時間を過ごしながら、
組織としては生まれたての赤子のような状態で世に出る。
大きなプロジェクトに関わった人も多く、
豊富な経験、優れたセンスに実務能力。
複雑な条件をまとめ上げ、複雑な利害を調整してきた能力が
発揮する場がないのはもったいないと思っていました。

きっと社会的には非常に価値が高い人たちだと、
(手前味噌ですが)ずっと思ってきました。
組織力は無いが戦闘能力が高い傭兵たちのよう。

4.株式会社JVという夢想

自分に近い人たちがいざその状況に向かい合う様子を見るたび、
この力を終結させることができればきっといい建築が作れると
確信めいた想いをしたことも何度あったことかと、、、

私がそんなメンバーを終結させるだけの人望があるわけでも、
仕事を持ってくる能力があるわけでもありません。
ただ、「みんなが集い、必要な時に必要なだけ組み合える。」という組織があったらいいなと思ったことは、ごく自然な流れだったと振り返ります。

各設計事務所で積んだ実績は異なり、師事した建築家の個性も異なる。
その中で育んだ個性もまた違う。
異なる組織で育ったからこそ複雑に絡み合う多様な組織。
個別の事情で離合集散しあえるプラットフォーム。
ひとつの組織で育った純血組織ではなしえないアプローチがあるのではないかと考えていました(ひとつの組織文化を学んだ阿吽の呼吸というものを否定するものではありません!)

JV(=ジョイントベンチャー)という無味な組織名称ですが、
今回の北山氏の決断と根底では共通するものがあるのではないかと、
思わずにはいられませんでした。
北山氏の事務所は、実績も独立した旧所員も十分あるので、
私の夢想とは比べ物にならないリアリティがあるのは、悔しい限りです。

5.建築家という職業

一方で、違和感というほどのものでもない内容ですが、
建築家という職能にはある種の作家性やスタイル、個性と呼べる、「何か」を求められることもまた事実だと思います。
ネットワーク型の組織形態になった場合のその個性。
組織に通底する文化ともいえる「何か」をどう醸成していくかには、
非常に興味があります(その「何か」をそもそも求めないスタンスだとしても)

建築という行為はネットワーク型の組織形態に近いことは先述の通りですが、建築家の事務所は非常に非常にピラミッド型の組織であることは、一部の事例を除いて、事実ではないかと思います。(大規模事務所になれば、数百名の事務所もあるので、、、独りをトップとしたピラミッドとして運用することには無理が生じる)

作家性を強調するものではなく、小文字の建築を標榜してきた北山氏には十分な戦略があると推察しています。建築設計事務所のネットワーク型組織への移行として、ぜひとも勉強させていただくことになると思います。

建築家。という、言葉自体明治期の造語であることから、その歴史は150年にも満たない定義です。この変化の激しい社会環境のなかで従来の建築家像を継承することには違和感を感じているので、よりオープンな職能を意識しながら社会との接点をより多く持ちたいと思っています。
(この建築家という職能についても、思案したいテーマです)

弊社のコンセプトでもある「CO-NEXTion」は、その想いに基づいています。

本記事は、自分の書きたいことがたくさん見つかりました。
枝葉が立体的になることを夢想しながら、今日はここまで。

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