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英単語の構造:補完しあう名詞たち

 以前の記事で取り上げたように、英語というのは、ひとつの単語を文脈や “a” の有無によって、その意味を変化させる仕組みになっています。
 たとえば、“light” という単語には動詞として「明かりを灯す」という意味がありますが、名詞であれば “light” の形で「明かり」、”a light” であれば「ランプ」を意味するわけです。

 その一方で、これまで何度も取り上げてきたように、英語には「純粋不可算名詞」と呼ばれる、常に数えられない名詞と、「純粋可算名詞」と呼ばれる、常に数えられる名詞も存在しています。

 今回の記事では、パンを意味する “bread” という名詞に焦点を当て、こうした名詞がなぜ存在しているのか、その必要性について解説してみたいと思います。

アイデンティティーは、その形状にある

 まず前提として「パン」を意味する”bread” という名詞ですが “a bread” のような形で使われることがありません。
 つまり “bread” は「数えられない」と判断されているわけですが、その理由を理解するにあたり、まずはパンの一種である「バゲット、ベーグル」という名詞について取り上げてみます。まずは「バゲット」から。

 “baguette” という名詞は、文脈に拘らず「数えられる名詞」であり、常に ”a baguette” もしくは “baguettes” という形で使われます。
 その理由は「バゲット」に特定の形状があり ”one baguette” の基準が明確に感じられるためです。

 こちらは「ベーグル」の画像です。「バゲット」と同じく、数える基準が感じられるため、“two bagels” のような形で用いられます。

 それでは、なぜこれらの名詞は「常に数えられる名詞」として分類され、「数えられない名詞」として使われることがないのでしょうか?
 「英単語の多様な姿」のルールに従えば、形状のない漠然とした “bagel” を意味するために、ハダカの “bagel” として用いることもできそうです。

 その理由は、形状が失われた “baguette” や “bagel” を具体的に想像すると明らかになります。
 つまり上の例からも分かるように、バゲットやベーグルはその形状にアイデンティティーがあり、形が失われれば、どれも小麦で作られた同じ「パン」になってしまうのです。

 一方で、同じ「パン」を意味するために複数の単語が使われると、そこには混乱が生じてしまいます。そこで、「パン」という食べ物の総称を意味する別の単語が必要になります。これが "bread" という名詞の役割なのです。

結論

 ”bread” は「パンが食べたい」とった文脈で使われる名詞で、この名詞のお陰で、話し手は「どんなパンが食べたいのか」について言及する必要がありません。また、"two baguettes" や "two bagels" のように注文できるお陰で、パン屋にて「どの種類のパンがいくつ欲しいのか」を指定することができます。
 そういった意味で、"bread" と "baguettes" という名詞は、お互いを補い合う存在と言えるのです。


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