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小説における説明(1)

物語、特に非現実的世界を描く場合は、その世界の仕組みをどう描くかが問題になってきます。
どーーっと説明が続く? ワトソン役がいちいち訊く? うーん。スマートじゃないですね。
設定は上手に物語に載せてやりたいものです。

いつも悩んでしまうのです

 説明。いつしよう。どうやってしよう。きっかけは。順番は。
 これらは私の中では常に重大な悩みです。
 悩みすぎるから、

 なんてことになってしまう。

 SFジャンルをホームグラウンドにしていると、ナイものをアルように書かないといけないことが多いです。それが楽しみのひとつでもあるのですが、ランドセルといったらアレ、マグカップといったらコレ、というような共通言語でまかないきれないことも多く、自分の考えたソレをどう読者に判ってもらうかは、大変むずかしいところだと思います。

 この記事を書くきっかけは、いつものゲンロンSF講座の質問。

 ご本人に許可もいただいていますし、その方には有料部分も読んでいただける手筈も整えているので、まずは引用しますね。

 はい、偉そうにアカ(朱筆)入れてます。すみません。
 おまけに、この方には雑談の時間に「この話は書けない」と言い切ってしまいました。重ねてすみません。

 けれど六角さんは「書けない」を前向きに受けとめてくださって、食いついてきた。素晴らしい。

 おまけに、私がはっとするようなことまでメールにしたためてくださった。

というのも、SFの流儀の中で飲み込めないものの一つに、説明的解説があるとおもっていたので…世界の説明をすればそれで世界が出来上がったことになるというお約束をジャンル読者が守っている印象をもっていたからです。

 なるほど。私は昔からSFべったりで育っているので、この違和感に気が付きませんでした。

 これはこういうことである、という説明部分は、私のアタマで判るか判らないかが悩みどころであって、説明部分のありやなしやが悩みではなかったのです。

 ただ、自分が書くときには、説明臭くならないように細心の注意を払っているつもりではありました。
 ときには判りやすさのほうに加重を置いて、あえて説明っぽいところを設けたりもしています。

 ここらへんの手加減をみなさんにご説明できたら、少しは六角さんや他の書き手さんにも納得していただけるのではないかと。
 あっ。説明できたらって……説明、だ。うまくやらなきゃ!

 今回からしばらくは、そういう記事なのです。

なるべく使わないようにしている言葉

 説明臭い、と言われたくない。それはほとんどのモノカキが抱いている気持ちでしょう。

 六角さんのメールにも、こうありました。

言い訳なのですが、「言葉で説明したくない。認識させたい」と思いすぎているきらいが、私の中にあるんだとおもいます。

 デビュー前にこの意識があるのはとても優秀です。

 いろいろな小説を読んでいると、あっ、説明臭い、思う時に頻出する単語があることに気が付きます。

~というのは、~である。

 ~というのは、で、もう説明する気満々ですね。

 使用禁止ということではありません。が、これがいくつも続くのはいただけない。
 いちいち説明してもらうあいだ、読書体験としては話が滞ってる印象になりますから。

 だいたい、この解説は誰の視点がやってるの?
 物語内のキャラクターだとすると、~というのは、と思う時点でおかしい。自分(世界内キャラ)はもう判ってるんだから。
 三人称神の視点であるとしても、タイムボカンシリーズではなかろうに、「説明しよう!(cv 富山敬)」とナレーターが出てくるのは変じゃないですか。

 それだったら、姑息だけれど、

(キャラ名)は~という××を思い起こして、身の毛がよだった。
        ↑ 説明

 くらいにしておくと、身の毛がよだった、のほうが描写の重点なので、さほど気にならなくなります。
 主語がキャラなので、説明臭さが軽減されるという感覚ですね。

 説明を説明と気取られないように、ストーリーに載せて、描写に載せて、するする~っと理解してもらえるのが理想ではないでしょうか。

 では、具体的にどんな手法があるのか。
 私が思いつくものをいくつか列挙しておきます。
 初歩的だけれど大事なところ。なにをいまさら、な人はごめんなさい。

▼どのタイミングで

・言い切る

 最初にドン! も、多少恥ずかしいけれど悪い方法ではないと思っています。

 そう、スター・トレック(宇宙大作戦)です。

「宇宙、それは人類に残された最後の開拓地である。
 そこには人類の想像を絶する新しい文明、新しい生命が待ち受けているにちがいない。
 これは人類初の試みとして、5年間の調査旅行に飛び立ったU.S.S.エンタープライズ号の驚異にみちた物語である」

 はい! そういう設定です。ok?
 ok、ok! で、どんな冒険が?

 てなもんで、いきなり宇宙歴の世界にブチ込まれる。
 手早くて、衝撃的で、率直で、いいですね。

 むかしばなしの冒頭も同じです。

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