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売る側の転売被害

転売、セドリ(もともとは古本の背を見て抜いていく「背取り」)。
そういうのは目利きがおこない、目利きが納得して買うものだと思っていました。
ところがオンラインで物品を売買するようになって様子が違ってきた。

目にしたのは、こんなツイート。

私の知ってる時代のチケット転売

 いつもいつも「昔はなぁ」とか書いちゃうので、若い人に笑われそうだけど。

 昔はなぁ、チケットの転売ってのは、だいたいが「関係者用」や「販促用」が余ってる場合だった気がする。

 バックヤードチケットとまではいかないけれど、そのコンサートなり映画なりの関係会社がたくさんのチケットを強制購入または販促バラマキをしなきゃなんなくて、手に余っちゃうので転売屋に売っぱらった。

 そういう余った系チケットだと、転売屋もよく判っていて、価格をつり上げるどころか、利鞘だけ確保した割り引き価格で売ってたりしたわけだ。

 電話してもチケット取れない、徹夜でぴあに並んだけどダメだった、とかが耳に入り始めたのは、21世紀になんなんとするくらいだったかなあと思います。

 おそらく、こういう購買競争状態が始まったのは、経済から考えるとバブル時代からかと勝手に予測。私はアイドルのことはほとんど無知なので知るのが遅かっただけであり、並んでも買えないからお金を積んでチケットを手に入れる、という行為はたぶんその頃からあったはず。

 だって、バブル時代って、深夜の六本木とか新宿とかでタクシーが捕まらないと、万札を手にひらひら振って車を止めたんですぜ? 栃木くらいまでなら平気でタクシーで帰ってたんですぜ?
 なんか「お金積んだらなんでも手に入る」感じは、転売屋の好きそうな時代背景じゃないですか。

かつてセドリ師は器用な善人だった

 入手困難本に高値が付くのは、需要と供給からするともっとも至極なことかと思っています。

 けど、出版年と本の綺麗さだけで価格を決める大型古書チェーンは、「その本がどれだけ需要があるのか」をまったく価格に加味しない。

 そこでセドリ師というのが出現してきたのだと思います。
 よく勉強している古書店、または古書店の協会みたいなところの目録で価値が認められている本が、大型チェーン店の100円均一棚にあったら、転売する。
 古い雑誌でも、この号はナントカの特集だから欲しい人がいい値をつけるはず、と踏んだら、他の号には見向きもせずに買って帰って転売する。

 欲しい本がある人全員が神田(東京の有名な古書街)やカッパ横丁(大阪梅田)へ行けるわけではないので、セドリ師は、大量流通の中で埋もれてしまっている貴重な本をそうやって目録に載るように表舞台へ引き出してくれる、いわば知識もマメさもあって器用に利を稼ぐことのできる善人だったと思うのです。

嘆かわしい現状

 けれど、今は違う。
 最初のツイートのような状態が、転売ヤーの実態になってしまいました。
 もはや転売屋ではないのよね。転売ヤーという蔑称がふさわしい存在。

 原因の一つは、やっぱりネット環境でしょうね。
 みんなが何を欲しているかが見え見え。
 どこで何を売っているかが丸判り。
 おまけに日本全国津々浦々で何でも手に入るし、何でも売りさばける。宅配便の送料をケチってセンターに持ちこみしないかぎりは、自宅にいながらすべて完結するんです。

 コレを買っておいて、コッチの欲しがってる人に売る。で、手数料+αとしてがっつり儲けちゃう。そう、自宅にいながら。
 こう聞くだけだと、ほんとうに甘い商売のイメージがあります。まるでYouTuberは全員が儲かる、級の甘い言葉だな。

 私はもともと商社というのに疑問を感じていて、やっぱり右から左に商品を移すだけで大儲けしているちょっとずるいイメージを持っていました。
 今は、ない。
 だって、商社はちゃんと、リサーチして、現地の状況をみて、リスクも管理して、適正価格と利益の問題も計算して、普通の人では手の届かないところから物品を持ってきてくれてるから。
 自宅にいながら、の暢気さがないぶん、ああやっぱり立派な商売なんだ、と思うようになりました。

 だいたい、良心的な企業なら、リセールの計画を誤ったからといって、製造元に返品したりしないもの。

私の被害

 そうです。やっとここから本題。というか、本気の不満爆発。
 商品を売っている立場の私がこうむった被害は、この返品、でした。

ブランケット商品詳細情報 ↓

 宣伝めいて恐縮です。
 このカレンダーもブランケットも、私が商品開発し、自分のホームページECやAmazonで販売しています。
 グッズ製作素人なりにいいモノをと思って開発し、お蔭でとてもご好評をいただき、瞬間最大風速ではありますが両方ともAmazonのホビー部門の売り上げ1位になりました。

 当初は、これ、2つセット、3つセットも売ってたんですよ。
 ええ、転売ヤーの存在も知らずに。
 だって、オタクな人たちって、気に入ったら5つ買うっていうのが定説なんだもん。「使用用、保存用、展示用、布教用、予備」
 そんな熱心なファンのことを考えると、セットにして梱包資材や送料を節約して、少しでも安く手に入れてほしいじゃないですか!

 ……このあまりにもオタクに優しすぎた私を、転売ヤーは見事に突いてきた。FBAという個々の出荷をAmazonに任せた一括納品をしていたので、怪しい大量注文に気が付かなかったのも悪かった。

 思いのほか売れて在庫が切れた瞬間、転売ヤーたちは平気で3倍の値段を付けたものを出品しました。
 中には知らずにポチってしまった若年のファンもいて、私に泣きついてきたり。
 おそろしいことに、その子に詳細を聞くと、梱包もなにもなくビニールに伝票が貼られた状態で届いた、とのこと。しかもそのビニールは私が使っていたものじゃなさそう。
 要するに、転売ヤーたちはお得な2セット3セット販売を購入し、バラして高値で売っていたというわけ。
 ぎぎぎぎ。思い出しても歯ぎしりしそう。
 もちろんその子には、Amazonに事情を話してすぐに返品したらいいよ、と伝えました。Amazonなら返品させてくれるはずだよ、と。
 これ、伏線ね。

 高値で買ってしまうファンがいては困る。なので、追加生産を急ぎ、その間にこんなメッセージも入れました。

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 ツイートもしつこいぐらいして、追加分も手元に来てようやく一息ついたころ。

 ヤツらはほんとうにひどいことをしやがった。

 これ以上は売れないとなると、転売ヤーは買い占めていた何十もの商品を、そっくりそのまま返品&返金申請しやがったのです。

 怒り心頭。
 戻ってきた商品は、角が傷んだりビニール梱包が破れたりしていて、散々なありさまでした。
 もちろん、手元には追加発注した新品がうなってます。そこにさらに返品。何万円ものマイナス売り上げ。

 さすがにAmazonに相談しました。
 が、当時のAmazonはお客様第一主義で、どんな理由であれ返品は受け付ける方針だったのです。ここが海外資本の恐ろしいところだなあ、と痛感しながら泣き寝入りしました。

 よかれと思って作った商品。
 喜んでくれたファンのみんな。
 転売ヤーはすべての思いを踏みにじったのだと感じています。

 さすがに、Amazonもいろいろ他にあったのでしょう。
 今は、以下のようなガイドラインができています。

 遅いよ。とほほ。

 え? 商品ですか? カレンダーはともかく、ブランケットはまだ160センチ規格の箱が手つかずの在庫として置いてありますよ(歯ぎしり)。
 たたき売りたい気もしますが、正価格で買ってくれた人たちのことを考えると、そして原価を考えると、そうそうばらまきはできないのが悩み。
 版権元からも、セールは自由だがあまりの安売りは作品の評判を落としかねないから、と、釘も刺されてますしね。
 どうしよう。あのデカイ箱。

 転売ヤーめ!(歯ぎしり継続中)

甘い商売というものはそうそうない

 最近、別ツイートで、たぶん十代であろう男性が「転売ヤーやってみる」みたいなことを書いていました。

 気楽だな。
 判ってるのかなあ、嫌われる行動だってこと。
 目利きが善意で架け橋になれる時代はもう過ぎてしまったんだよ。

 YouTuberが全員大金持ちにはなれないように、転売もそうそう甘い汁ばかり吸えるものではないと思うんだけど。

 とりあえず、今度私の目の前に転売ヤーが出現したら、完膚なきまでに叩きつぶすからね。社会的に詰むつもりでやってきてね。にっこり。

 

みなさまのお心次第で、この活動を続けられます。積極的なサポートをよろしくお願いします。