夜。カメラを抱えて外へ出た。まだまだ撮らないといけない。一日に3人は撮りたいと思ったが、この日は昼に一人撮っただけだ。深夜になってもいい。いくらでも歩いて探すつもりだった。意気込んで歩き始めると、宿から300メートルも行かないところで屋台の二人組が目に留まった。随分と若い。兄妹のようだ。昼には気が付かなかったが、夜の屋台はなかなか雰囲気がある。いいなと思った。
彼らはガスではなく炭を燃やしていた。傾いた木造の屋台は緑、赤、黄色のペンキで塗られ、ところどころが剥げている。これはミャンマーの国旗の色だとすぐに気づいた。
現場では彼らの言葉はわからないが、不満を言っているのは口調と表情で伝わってきた。10代の彼らは大人と違って、ストレートに思っていることを口にしてくれたのだろう。いかにもドキュメンタリーを撮っている気がして嬉しくなる。
この街でも徐々に屋台の数が減って来ている。この手の仕事は都市の発達とともにどうしても消えゆく運命なのかもしれない。こうして少しでも彼らの生活に関われたこと、そして記録に残せたことが不思議な気持ちにさせる。こんな仕事をもっと撮りたいと思いながら二人と別れた。