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【第28話】 逆境の屋台兄妹🇲🇲

夜。カメラを抱えて外へ出た。まだまだ撮らないといけない。一日に3人は撮りたいと思ったが、この日は昼に一人撮っただけだ。深夜になってもいい。いくらでも歩いて探すつもりだった。意気込んで歩き始めると、宿から300メートルも行かないところで屋台の二人組が目に留まった。随分と若い。兄妹のようだ。昼には気が付かなかったが、夜の屋台はなかなか雰囲気がある。いいなと思った。

初めから不満を漏らす兄
たこ焼きにそっくり
兄妹で助け合う
暑い中で炭火を扱う 汗だくだ
遊びたい年頃のはずだが
同じ年頃の男子がやって来た
別れ際に笑顔を見せてくれた

彼らはガスではなく炭を燃やしていた。傾いた木造の屋台は緑、赤、黄色のペンキで塗られ、ところどころが剥げている。これはミャンマーの国旗の色だとすぐに気づいた。

現場では彼らの言葉はわからないが、不満を言っているのは口調と表情で伝わってきた。10代の彼らは大人と違って、ストレートに思っていることを口にしてくれたのだろう。いかにもドキュメンタリーを撮っている気がして嬉しくなる。

この街でも徐々に屋台の数が減って来ている。この手の仕事は都市の発達とともにどうしても消えゆく運命なのかもしれない。こうして少しでも彼らの生活に関われたこと、そして記録に残せたことが不思議な気持ちにさせる。こんな仕事をもっと撮りたいと思いながら二人と別れた。

【男性】

モンリミャとベイモンを
屋台で売っています

都市開発課の取り締まりが厳しくなったのでいつもビクビクしていますよ
他に生計の手段もないですからなんの保証もない人生ですね

僕らみたいにその日暮らしをしている人たちは一刻も早くこんな稼業から足を洗いたいと願っていますよ

いつか金持ちになるぞって意気込んでコレを始めましたが役人に逮捕されて屋台を没収されることばかり考えてしまいます

好きかどうかじゃなくてできることをただやってるだけ
こんなことしかできないってだけで楽しくないですよ 全然
売れ行きが悪いと暗いことばかり考えて落ち込みますね

もし子どもがいたら絶対にやらせませんね
未来は誰にも分からないですけど少なくとも僕はなんとか這い上がって子どもたちにはちゃんとした教育を受けさせたいですね

【女性】

屋台の仕事です
本当にその日暮らしですね
役所の人が取り締まっていますからもし来たら逃げるしかないです
仕事の準備中でも役所の人が来たらすぐ撤収しなければいけません
朝から順調に仕事ができれば夜の9時までやります
家に着くのは深夜の12時で寝るのは1時くらいですね

ただ売るのが仕事なので重要なのはお金を稼ぐことですね
ちゃんと売れていれば気持ちよく帰れます
両親も喜んでくれますから

他に選択肢がなくてこの仕事に就いたんです
でもこの仕事のおかげでなんとか暮らしています
この仕事自体は悪いものじゃないんです
私はちゃんとした仕事だと思っていて
父もそう言ってくれるので頑張ることができます
でも子どもがいたらやらせはしないですね

Food Stall Seller in Rangoon MYANMAR summer 2018
www.monologue365.jp

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