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日本バスケ界の未来を担う、河村勇輝。プロ転向を経た日本代表での挑戦

「自分の実力がBリーグで通用するかどうかよりも、どんな壁にぶつかっても挑戦し続けられる自信があります」

2020年初頭、三遠ネオフェニックスの特別指定選手としてプレーすることになった「史上初の高校生Bリーガー」河村勇輝は、スマートかつ強かに語った。

あれから2年半が経った7月3日、河村はワールドカップ・アジア地区予選の台湾戦で日本代表デビューを飾った。出場14分間で8アシスト5スティールを挙げ、強いインパクトを残した河村は、日本時間7月13日に開幕する『FIBAアジアカップ』のメンバーにも選出されている。

史上初の高校生Bリーガー、大学進学

河村は福岡第一高等学校でウインターカップ(全国高等学校バスケットボール選手権大会)を2連覇した直後にB1の三遠に加入。主力に定着し、出場11試合で1試合平均12.6得点、3.1アシストを挙げ、見事に新人賞ベストファイブを受賞。

史上初の高校生Bリーガーの活躍は話題を呼び、彼の加入後に1試合平均2500人だった三遠の観客動員数が約4000人にまで膨れ上がるフィーバーぶりだった。

高校生にして国内最高峰のB1で通用する実力を示した河村だったが、三遠との特別指定契約を終了した彼は東海大学へと進学。Bリーグに毎年多くの特別指定選手を送り込むプロ顔負けのタレント軍団である東海大学でも、彼は1年時からプレータイムを確保。インカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)優勝に貢献し、直後にはB1・横浜ビー・コルセアーズの特別指定選手としてBリーグに復帰。

しかし、河村は苦戦した。三遠では高校生だったこともあって先輩たちからのサポートを受け、自由にプレーできたが、横浜へ加入した彼にはすでに「実績」があり、他クラブからも研究されていた。

ただ、それは彼にとって想定内でもあった。

河村の1番の武器はスピーディーなドライブだが、スピードを活かすためのスペースがないと持ち味を発揮できない。高校バスケ界の強豪校の勝ち方は、堅守速攻で決まっている。そのため、格上と対戦した時に相手がスペースを消すと、攻撃パターンが単調で停滞してしまう。日本人初のNBAプレーヤーである田臥勇太(宇都宮ブレックス)が本場で通じなかった理由の1つに、これが当てはまる。

東海大学はハーフコートオフェンスに重きを置いたチーム作りをしている。高校でオールコートのダイナミックなバスケを習得した河村は、大学でハーフコートの遅攻でも崩せる緻密なバスケを自分のものとするために大学進学を選んだのだ。この辺りは両親が教師であり、自身も高校入学時は教師を志していた河村らしい実直な選択だ。

月間MVP、プロ転向、富樫勇樹に勝利

Bリーグで課題を与えられた河村は大学でそれを克服し、2021-2022シーズンも横浜の特別指定選手としてプレー。1月にはキャリアハイの1試合26得点を挙げるなど、1試合平均14.4得点8.4アシストを記録して月間MVPを受賞。

スケールアップしたパフォーマンスが続き、3月には東海大学を中退し、来季からのプロ転向を表明した。「パリ五輪出場のため」の選択だった。

日本代表の主将である富樫との主要スタッツ比較

3月23日には昨季王者・千葉ジェッツふなばし戦で、試合終了間際に自身の憧れでもあり、Bリーグ初の1億円プレーヤーでもある日本代表PG富樫勇樹からスティールして得点。大金星に導いた。4月にはBリーグ史上2番目となる1試合17アシストを記録するなど、プロ宣言後の活躍はさらに加速した。


そんな河村を日本代表が放っておくはずもない。

追い風が吹く日本代表での活躍


日本代表を率いるトム・ホーバスHCは昨年の東京五輪で女子代表を銀メダル獲得に導いた指揮官。コート上の5人全員が3ポイントシュートを狙う「ファイブアウト」と呼ばれるNBAの最先端戦術を取り入れて快挙を達成した。他国よりも身長が低いことをスピードと運動量で補ってスペースを作り出し、3ポイントを多投することで、得点効率のいいシュートを狙うスタイルだ。

このスタイルを成功させるためには3ポイントの成功率を上げることはもちろんだが、それ以上にゴール下までドライブで切り込んで相手のマークを複数引き付け、アイデア溢れるパスでアシストを量産する選手が必要だ。それが女子代表では東京五輪でアシスト記録を次々と更新した町田瑠唯(ワシントン・ミスティックス)だった。

そして、男子で町田に最も近いプレースタイルを持っているのが、河村だ。町田同様に自らの得点や3ポイントの試投数、成功率は低いが、富樫よりもアシストが圧倒的に多い。

また、ホーバス体制の男子代表では東海大学の3年先輩である西田優大(シーホース三河)がエース格の活躍を披露していることも河村にとって追い風となる。

「バスケを日本でメジャーなスポーツにしたい」と願う河村の挑戦をアジア杯で十分に堪能したい!

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