見出し画像

日本化?バイエルンを食ったフランクフルトの近代クロニクル


フランクフルト長谷部&鎌田

長谷部!鎌田!ドイツで“異彩”を放つフランクフルトの「和式」フットボールを紐解く

「バイエルンを食ったフランクフルト」
 
 そんな見出しはドイツのソーセージではなく、フットボールの話です!

 先日、上記フットボールWEBマガジン『Qoly』さんに今季のドイツ・ブンデスリーガで大躍進中のアイントラハト・フランクフルトに関する執筆記事を掲載いただいたんですが、ここではその番外編をアップします!

日本化?バイエルンを食ったフランクフルトの近代クロニクル

 昨季のUEFAチャンピオンズリーグ、ドイツ・ブンデスリーガ、DFBポカール(ドイツ国内カップ)を制した「3冠王者」バイエルン・ミュンヘン。

 彼等は今季も早々にUEFAスーパーカップとドイツ・スーパーカップを制し、今年2月にはFIFAクラブワールドカップも勝ち取って、「世界王者」となった。

 「6冠」は、2009年にジョゼップ・グアルディオラ監督体制初年度から2年目にかけてのバルセロナが成し遂げて以来、欧州サッカー史上2度目の快挙だった。

 2月20日に開催されたブンデスリーガ第22節、アイントラハト・フランクフルトは、そんな世界一になって間もない6冠王者をホームに迎え、2-1と会心の勝利を挙げた。そして、そのサッカーからはJリーグや日本サッカーの長所が垣間見られた。

 そのバイエルンに勝ち切った時点で、リーグ11戦負けなしとなったフランクフルト。ここではそんな近年のフランクフルトの戦いぶりをクロニクルする。

ターニングポイント①2部降格と攻撃サッカーの定着

 近年のフランクフルトを振り返るとなると、大きなターニングポイントが3つある。

 まずは、10年前の2010-2011シーズンにリーグ17位と低迷し、2部降格を経験したこと。それ以前から低迷傾向が続いていたが、遂に降格にいたったことで、クラブとして攻撃的なサッカーへの転換を決意。

 監督にもアルミン・フェ―(2006-2007にシュツットガルトでリーグ優勝)とトーマス・シャーフ(ブレーメンで2003-2004リーグ優勝)を連続して招聘。彼らは1998年以降の22シーズン中16度ものリーグ優勝を記録するなど、バイエルンが絶対王者として君臨するドイツ・ブンデスリーガにおいて、攻撃サッカーを掲げて優勝を勝ちとった勇敢な名将だ。

フランクフルト近現代の成績

 1年で1部復帰を果たしたフェ―体制2年目となった2012-2013シーズンには1部復帰初年度でリーグ6位と躍進。シャーフが率いた2014-2015シーズンには、FWにコンバートされた「フランクフルトのバラック」こと、アレクサンダー・マイヤーが19得点を挙げてリーグ得点王を獲得。成果は確実に現れていて、何より魅力あふれるチームになった。

 しかし、2度目のフェ―監督就任となった2015-2016シーズン、降格圏内から浮上できない極度の不振に陥ってしまった。

ターニングポイント②コバチ体制~理想と現実の狭間で勝ち取ったDFBポカール優勝

 2016年3月、2部降格濃厚なシーズン終盤にやって来たのは、選手としてブンデスリーガを熟知していたクロアチア人=ニコ・コバチ監督。コバチ監督は攻撃的に振られ過ぎたチームの守備組織を構築。チームは復調して自動降格を免れ、入替戦を制して何とか1部残留を勝ち取った。

 ただ、単純に守備重視のチームではなかった。前年度からチームに加入していた日本代表の主将MF長谷部誠の起用法だ。前体制で結果が出ないチームが守備を優先する人選が続き、体格で劣る長谷部は中央エリアでの守備力を問われ、サイドバック起用が続いていた。それは彼がヴォルフスブルク時代にも経験していたことと同じだった。

 しかし、コバチ監督は就任早々の残留争い真っ只中から、長谷部をボランチとして固定。チームの攻守のバランスが劇的に改善され、翌シーズン途中からは,長谷部をリベロとして3バックの中央で起用。現実策として守備力を高めつつも、頭脳明晰な長谷部の起用法でポゼッションの安定が確率された。

 現地メディアでも、ドイツの英雄=「皇帝」フランツ・ベッケンバウアーを比較に出されるほど、エレガントなリベロとして機能する長谷部は、DFながらチームの華だ。

 やや後方に人数をかけつつも、“カイザー”長谷部を軸に丁寧なビルドアップで巧みな試合運びを披露するチームは安定した力を積み上げ、リーグでは中位をキープ。そして、国内カップ戦のDFBポカールでは2016-2017シーズンに準優勝。翌シーズンには決勝でバイエルンを倒して戴冠。クラブにとって30年ぶりとなる大きなタイトルを置き土産に、コバチはバイエルンへ栄転した。

ターニングポイント③超強力3トップで打ち勝った2018-2019シーズン

 2018年夏、優勝監督・コバチが去った後任は、オーストリア人のアディ・ヒュッター。レッドブル・ザルツブルクでの監督経験があり、所謂“レッドブル流”ボールを失った直後から一気呵成に仕掛ける獰猛なプレッシング戦術「ストーミング」に精通する気鋭の指揮官の下、フランクフルトはまた違った変化をポジティヴな形で披露した。

 190cmの大型フランス人FWセバスティアン・ハラ―(現アヤックス所属/コートジボワール代表を選択)、突破力に長けたFWアンテ・レビッチ(現ACミラン所属/クロアチア代表)、セルビア代表FWルカ・ヨビッチ(現在レアル・マドリーからのレンタル移籍でフランクフルトに復帰)という超強力3トップを武器に、「肉を切らせて骨を断つ」、失点覚悟で撃ち合う破天荒なスタイルが国内外で話題を集めた。

 結果としても、選手層が薄いながらもリーグ戦では上位争いを展開した上で7位と健闘。それ以上にUEFAヨーロッパリーグではベスト4と大躍進するシーズンとなった。

 しかし、リーグだけでも3人で41得点を記録した魅惑の3トップはこのシーズン限りで全員が退団。ヒュッター監督は試行錯誤を重ねながらも、クリスティアーノ・ロナウド自らが自身の“後継者”と呼ぶポルトガル代表FWアンドレ・シウヴァや、ベルギーでの武者修行から復帰した日本代表MF鎌田大地、オランダとポルトガルで得点王を獲得してきたベテランFWバス・ドストといった新戦力を上手く組み込み、リーグ9位・ドイツカップ4強。大量の主力流出でチーム力の低下が叫ばれながらも、まずまずの結果を残した。

 戦術的にも最先端の新戦術ストーミングを導入。最新のトレンドを導入したことでモダンなチーム作りが印象的な精鋭集団となっていたが、昨季終盤からはコロナ禍にまみれる中で様々な壁を乗り越えながら大躍進のシーズンとなっている今季の行方は『Qoly』さんで掲載の下記記事をご覧ください。

フランクフルト2020-2021基本布陣

長谷部!鎌田!ドイツで“異彩”を放つフランクフルトの「和式」フットボールを紐解く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?