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レクチャー動画-ひとつの応答として

緊急事態宣言後の対応を続けていた大学の授業。設計授業の講師を務めている日本大学、明治大学の双方とも、録画を観るオンデマンドから双方向のオンラインに移行して2週が経過したところだ。

先月のオンデマンド期間中に、自己紹介を兼ねて設計した建築に関してのレクチャーを動画で作成。それぞれが観て感想を短文のレポートで送る、ということが行われた。そして今朝、日大での自分のレクチャーに対するレポートを午前中に全て目を通した。

普段、こういうレクチャーは授業の一環として全員が参加している教室で行うことが多いけれども、今回自分はkeynoteで作成したスライドショーに音声データを追加するかたちで作成した。

教室で話しているときは、聞いてくれている学生さんの反応や、その場の雰囲気などで話す内容を変えるし、語り口も変化しているのだと思う。今回は自分のアトリエで一人話している訳なので、語りは淡々としたものになったと思うけれど、いくつかポイントを作って話した。

一つは、「手で考える」ということが思考を助けてくれるということ。旅先で接した建築に対して、写真を撮るだけではなくスケッチもする。そうするとその経験は分析しながら描いている時間と共に、深く記憶に刻まれていく。

そして、もう一つは一つの建築が生まれるまでの「プロセスを伝える」こと。伊豆高原に手掛けた近作の「PHASE DANCE」を例に、どのようにスケッチが推移し、提案に辿り着き、実施設計までに深められていったのか。そして、工事のプロセスはどうだったのかについて、かなりたくさんのスライドを用いて説明した。

宿題とはいえ、皆さんの感想を縦覧していると、このような状況下でも「学び」に積極的で、それに熱く反応している人が多く、教室でやるレクチャーとは少し違った強度を持ち得ているように感じました。教室のレクチャーの場合は質問を受け付ける時間を設けることが多いですが、この状況では応答が出来ないので、勝手に少し<応答>してみようと思い、このnoteを書き始めました。

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前半は旅先で描いたスケッチを多く紹介しました。建築を目指す人のスケッチは画家のそれとは違う。自分もそう言われます。それはきっと描くことで「分析」しているからなのだと思います。どうしてこういう風に見えるのだろう、なぜこういう設計になっているのだろう…。それが描くスケッチに顕れます。それから、自分にとっては、描いている時間は「建築を楽しんでいる」時間なのだといえます。その場に吹く風、まわりの音、匂いを感じられるなか過ごす。描くことで環境と建築に対するセンサー感度が上がっている実感があります。

コメントのなかで、「スケッチは現地で描いているのかな?」というのがありました。それに答えると基本的には、すべてその場で描いています。ゆっくりと時間が取れるときはその場で水彩セットを使って着彩までやります。時間が限られる場合は、その時間内でさっと描いておいて、ホテルの部屋や帰国(帰宅)後に仕上げることもあります(これは今年の初めにエジプトで描いた一枚、現地で15分くらい。仕上げ前です)。

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そして、プロセスのレクチャーについては、如何にファーストプランを作るために長い道のりを辿るのかが伝わったと思います。そこについて「驚いた」というコメントを書いている人が多かったですね。これについては個人差がもちろんあると思います。自分はささっと天才的に案が出てくるタイプであるとは全く思っていないので、スケッチをして自分でダメ出しをして、また壊して考える。それを何度も繰り返すことによって、「腑に落ちてくる」瞬間が訪れます。

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毎週のエスキスをリアルに受けられない、大学で友達に相談するのもやりにくい状況のなかで、

案を作る → 客観的な視点に(できるだけ)立ってダメ出しをする →案を作る

というサイクルを習得すると、ひとりでの試行錯誤ができること感じて欲しいと思いました。そして、それを支えているのが「手を動かす」ことなのだと。ここでいう「手」とは紙にスケッチすることだけに限りません。模型を造ることもそうだし、CAD上で考える、3Dモデリングをすることも。思考を止めないための手段を自分のものにできれば、きっとずっと楽しんで建築に向き合える。

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実際に敷地に行くこともできず、設計課題に着手しているけれど、想像の中で空気感を想像して、自分が見たいと思える建築に挑んで下さい。

自由に移動できるようになったとき、自分から見える世界は、少し違って見えるかも知れない。それは状況に向き合い、そのなかで試行錯誤した自分自身の変化なのだと思います。

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