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HIROBA公式マガジン

水野良樹(いきものがかり)の実験的プロジェクトHIROBAの公式マガジンです。毎週金曜日にラジオ的長文コラム『そのことは金曜日に考えるから』が更新されます。その他の記事も随時更新…
ソングライター水野良樹が主宰するHIROBAの公式マガジンです。HIROBAは『つくる、考える、つ…
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2022年3月の記事一覧

読む『対談Q』 水野良樹×高橋久美子 第4回:人間のものではない巡りのなか。

私、切れ目ないのかもしれん。 高橋:年を経ていくごとに、自分の生まれた場所とか原点が、いつまでもあるものではないんだって思う。さっきの、おばあちゃんの話もそうだと思うんだけど、積み重なってそこにあるわけで。そこに縛られたくないから、「こんな村おら嫌だ!」って、東京に出てきた感もあるんですよ。だけど、不思議ですね。年を経るというのは。 水野:ルーツとなっている場所に惹かれるのはなぜでしょうね。20代のときとは違った価値が見える。 高橋:いろんな立場のひとの思いが見えてくる

読む『対談Q』 水野良樹×大塚愛 第4回:生きていくなかで、「自分でもよかったな」って思えることを増やしたい。

引退はいつか。 水野:本当ここ数年、すっごく引退を考えていたんですよ。 大塚:あぁー、わかるー。ていうか私、今までデビューしてから、ものを作っている同じ年のひとと喋ったことないんですよね、多分。 水野:マジっすか。でもそうかもしれない。あんまりないですよね。 大塚:ないんですよ。上の方ばっかり。で、最近は下の方ばっかり。なかなか同じ年と喋れなくて。 水野:引退がわかるっていうのは? 大塚:私もずーっと、引退はいつかって考えていて。「桜のように綺麗なまま散りましょう

読む『対談Q』 水野良樹×大塚愛 第3回:この年齢でどうやってヒットさせていくのか。

オルゴールになるタイプの曲。 大塚:音楽業界はサブスクが入ってきたことで、いろんなものが大きく変化したじゃないですか。今は私、TD(トラックダウン)のチェックとかも全部スマホで。 水野:そうなんだ。 大塚:スマホでやってOKだったら、普通のスピーカーで聴いたとき、めちゃくちゃいいはずみたいな。 水野:そもそもコンポで音楽を聴くことも少なくなっているから。たしかにユーザーベースのチェックをするって、理にかなっていますね。 大塚:スマホと車ですね。車でしか普段、音楽を聴

読む『対談Q』 水野良樹×大塚愛 第2回:シングルになれるもの、なれないもの。

「シングルありがとう!」 水野:どこを作るのがいちばん楽しいですか? 大塚:基本、あまり時間をかけたくない。パって来て、「あ、いい!」って思ったら、もうそれで振り分けるんです。シングル向き、アルバム向き、提供向きって。で、やっぱりシングル向きのものに出会った、いちばん最初の瞬間、「最高だ!」と思います。あとはどうにかなるみたいな。 水野:すっごくわかります。出会った瞬間、天にも昇る気持ちになるでしょ。 大塚:そうなんですよね。「来たー!」って。だけどそれが、自分の好み

読む『対談Q』 水野良樹×大塚愛 第1回:「違うじゃんママ。あの曲はどんだけ可愛く歌えるかじゃん」

自分の歌声が全然よくないところが問題だった。 水野:さぁ、対談Qのコーナーです。ゲストの方とひとつのテーマについて一緒に考えていこうというこのコーナー。今日のゲストはシンガーソングライターの大塚愛さんです。よろしくお願いします。 大塚:よろしくお願いします。 水野:やっとお会いできました。まず、大塚愛さんがこの度、『大塚愛歌詞集 I』という歌詞集を出されました。光栄なことに、わたくしこちらに寄稿をさせていただきまして…。 大塚:本当にありがとうございました。 水野:

読む『対談Q』 水野良樹×武部聡志 第4回:探し続け、見つけ続けることがロマンティック。

日本の音楽が世界的に評価されないジレンマ。 武部:日本でポップスというフィールドで我々、仕事してきてさ。悔しいのはこういうものがワールドワイドに評価されないっていう。 水野:はい、はい。 武部:悔しい思いをずっとしてきている。次の今の若い世代に、是非ともそういうワールドスタンダードな作品を作り上げて、世界に打って出ていってほしいと思うんだよね。 水野:僕は自分のルーツとして、J-POPという言葉で括られるものにすごく影響を受けていて。日本的なメロディーというか、ユニー

読む『対談Q』 水野良樹×武部聡志 第3回:歌詞を見ただけで震えるような瞬間。

「ハナミズキ」のデモテープを最初に聴いたとき。 武部:水野くんはいきもの以外にも、いろんな曲を書いているじゃない。自分の曲が違ったアーティストが歌ったり、パフォーマンスして、世の中に出ていくのってどういう感じで見ている? 水野:もう僕は正直、アーティストのみなさんが満足していただけたかなとか。そのアーティストを応援されている方々を裏切ってないかなとか、いちばん強く思っちゃいます。それを大前提に、前段階で、自分のメロディーのなかに聖恵がどれだけ入っているかということを認識す

読む『対談Q』 水野良樹×武部聡志 第2回:音楽の瞬間の輝きをみんな欲している。

力任せに弾くピアノは伝わらない。 武部:楽器の演奏でもそうなんだけど。僕はピアノを弾いているじゃない? 力任せに弾くピアノって伝わらないんだよね。 水野:なるほど。 武部:いい音を鳴らすには、力をたたきつければいいわけじゃない。ベースでもギターでもピアノでも。その力加減みたいなものが、きっとボーカリストとかアーティストにもあると思うんだよね。 水野:ぶつければいいってもんじゃない。難しいなぁ。それどこで掴んでいくんですか? 若いときとか、僕らがバンドを始めた頃はガーっ

読む『対談Q』 水野良樹×武部聡志 第1回:ユーミンや吉田拓郎からもらった財産。

残っているひとたちに共通するもの。 水野:さぁ対談Qです。今日のゲストは、音楽プロデューサーの武部聡志さんです。よろしくお願いします。 武部:どうもお邪魔します。 武部:今回このプログラムには僕のほうから水野くんのTwitterに呼びかけて、「おもしろそうだから呼んでよ」って。 水野:もう我がチームは喜んじゃって。武部さんが、「水野くん呼んでよ」みたいなことを呟いてくれたよってチームに伝えたら、「これはお呼びしましょう」と。 武部:押し売りみたいで申し訳ないですけど

『小説家Z』 水野良樹×宮内悠介 第4回:読者のなかに湧き上がるイメージが最大の武器になる。

読者の想像力。 水野:昔スタッフに「それはちょっと変かもしれないな」って言われたことがあって。ドラマの主題歌だったり、商品のCMソングだったり、タイアップの仕事をするときに、僕も映像をイメージしたりするんですね。たとえば、お菓子のCMソングなら、そのお菓子がどこで食べられているか、このCMが渋谷のオーロラビジョンで流れたらどんなふうに受け取られるか、みたいな映像。その出口になるところをイメージして曲を書くんです。 宮内:ええ。 水野:「この状況で流れている音楽はこんな感

『小説家Z』 水野良樹×宮内悠介 第3回:私を発見してくれたSF。

犯人当てゲームが流行っていたんです。 水野:物語の立ち上げ方の話をずっとしてきたんですけど、一方で、どうして小説を書いているのでしょうか。宮内さんって実はいろんなことをされていて。『OTOGIBANASHI』でご一緒させてもらったときも、やはり音楽にお詳しいイメージがあって。宮内さんは趣味っておっしゃられるところもあると思うんですけど、たくさんのことをやられていて。小説が宮内さんを惹きつけるのは、どういったところなのでしょうか。 宮内:私は高校生くらいまで作曲家志望だった

『小説家Z』 水野良樹×宮内悠介 第2回:いつも逆張りをしたがる

私はこう思いますけど、みなさんはご自由に。 水野:作品が書かれた年度を見てみると、実際に現実で起きた社会的なテロであったり、人種が絡んだ問題であったりが、かなり反映されていたり、リンクが感じられる箇所が多くて。そこでも批判が起きる可能性があるような気がするんですけど、そういったものについてはどのように考えていらっしゃいますか? 宮内:そういう思想的な、あるいは社会問題について強く訴えることはあまりないです。というより、題材は題材として扱っても、基本的にはどのように読めるも

『小説家Z』 水野良樹×宮内悠介 第1回:物語を構築していくための入り口。

「推し」、「情景」、「アイデア」、「テーマ」 水野:新企画、小説家Zです。小説家・作家の方をゲストに招き、物語や小説がどのように立ち上がっていくのか、なぜ物語を書き続けているのか、2つのテーマを軸にお話を伺っていくトークセッションです。第1回は小説家・宮内悠介さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。 宮内:ありがとうございます、よろしくお願いします。 水野:宮内さんには、『OTOGIBANASHI』に参加していただきまして、「南極に咲く花へ」という作品を書いて

読む『対談Q』 水野良樹×宇野常寛 第4回:問いを立てることはビジョンを持つこと。

「こんなラーメンが食べたい」でもいい。 水野:問いを立てる上で、いちばん最初にするべきはなんですか? 何を心がければいいですか? 宇野:問いを立てるということは、今そこに物事があるとき、目指すべきビジョンを持つことなんですよ。 水野:ビジョン。 宇野:たとえば、僕はあるワイドショーに何年か出ていたんですけれど。シングルマザーがネグレクトして子どもを死なせてしまったというニュースがあって。そのとき、やっぱり一斉に、そのお母さんの個人的なプライバシーを暴いて、そのひとがい