日本からの海外駐在員≒3000万円の意味

普段はASEANのある国で仕事をしているが、コロナ禍は本格的な世界との戦いが個人レベルで始まったな、と感じている。マーケティングの世界でいえば、オンライン上の戦いはプラットフォーマーありきだし、そのソリューションをベースに独自のスキームやサービスを構築するのに国や言語はあまり関係ない。生活シーンでも、コロナを通じて、共通化された生活様式が強制的に強いられることで、また少し海外と日本の距離は縮まったと思う。

一昨年、あるプロジェクトで自分の下に本社から駐在員が送られてきた。彼はとても真面目なのだが、若いということもあって、そんなに仕事ができるわけでもない。きっと、時期や様々な事情によって彼が選ばれたのだと思うが、海外のことがわかっていないバブルの遺産ようなおじさんが選んだが故に、ジョブとスキルに大きなギャップができた。彼は英語ができる、ということで選ばれているが、言語ができるのと仕事ができるのはあまり関係がない。一般的に、日本から海外に駐在員を送ると、その人の年収に関わらず、諸経費・保険、海外手当などを積み上げて、だいたい2000万円〜3000万円以上かかると言われている。彼に3000万円(駐在員にかかる総人件費)払うなら、優秀なローカルスタッフを何人雇えることか。もちろん育成する努力はしているが、業務の効率化を目指すのであれば、早く代えたい。

本来、会社側が3000万円払う意味は、ローカルメンバーを従えながらプロジェクトから利益を生める体制をつくり、自らもプレイヤーとして戦うことを通じて、3000万円以上の利益を生む、ということだ。もちろん他にも役割はたくさんあるのだが、もし、主な業務が、本社への報告であったり、現業でローカルメンバーの指示を仰ぎながら仕事をしているのだとしたら、それは海外で給与をもらって駐在員として働く意味はない。

彼への愚痴はさておき、問題はこの時点でグローバル目線でみたときに、競合からは相対的に弱いチーム・座組で戦っている、ということだ。同じ条件下におかれたときに、日本人がつくるチームというのは、圧倒的に弱い。人に対してドライになれず、ご都合主義がまかり通るし、広い人材市場から人を調達するスキルに欠ける。それは言語の問題もあるかもしれないが、ジョブに見合った人材を見つけ出すこと、そして外人と働くことへの恐怖心、そこでパフォーマンスが出せるかどうかという不安、など様々な心理的ハードルがあってそれを超えないと、本当に最適化された人材というのは見つからない。

この、コロナ禍を通じて、様々な労働力の調整が産業間・国間で行われているが、日本におけるその調整スピードは世界と比べるとゆっくりだと思う。もちろん、ビジネスは人が行っているので、最終的には人間対人間の戦いだと思っているが、コロナを通じて、過度な配慮を伴った人事が淘汰され、不適切人材の効率化が一層すすむことを祈る。


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