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My Love〜高校生編・第4話「青い珊瑚礁」
寺田さんのその言葉は僕を落胆させた。というよりもまずは驚愕に近いものだった。
そんな言葉が出てくるとは正直、思ってもいなかったからだ。
「裕華は、荒木君をよいお友達だとは思っているけど、好きだとか恋人だとかという感覚ではないみたい、というか………恋愛という感覚が
本人はよくわからないみたいよ!」
え?どういう事? はい?え?何?それって……
裕華は人を好きになるってことが……いや異性を恋愛対象として見たことがなかったという事? そうなのかぁ…。
寺田さんもそれ以上は突っ込みを入れられなかったらしい。15、6歳なら恋のひとつやふたつ、しているのかなぁー?とは思っていたけど片思いとか、初恋とか…そういう経験もないって事?思ったよりもピュアだったんだね。
さて、どうする? こんな僕だって中学の時には好きな女の子もいたし、デートらしい事もした。こんな僕でさえ……。だからこんな可愛くて明るくて優しくて…でもちょっとおしゃべりで面白くて…そんな女の子に声をかけたり、惚れさせた男は今までいなかったのか?もしかすると、これは神様が僕にくれた最高のチャンスなのでは?よし、そう思うことにしよう。
「私もいろいろと応援してあげるから、助けられることは助けてあげる。私から見ても裕華と荒木君ってとてもお似合いのカップルに見えるし…裕華の友人として裕華のこと嫌わないでね。お願いね…。」
誰がなんと言おうと裕華の事、嫌いになるはずもない、問題は彼女の気持ちだけ。
何はともあれ、寺田さんという力強い味方を手に入れたことは収穫だった。
僕は複雑な気持ちで教室に入った。裕華と一緒の1日が始まるのは嬉しいんだけど……裕華は
どんな思いで僕と接しているのか?違った意味で意識してしまう。
いつものとおり、裕華はギリギリで教室に入ってきた。
「荒木君、おはよう!今日もよろしくね!」
「あぁ、よろしく・・・。」
「あれ?元気ないねぇ、どうしたの?」
「大丈夫、大丈夫!」
まさか、裕華のせいで心が揺れ動いて悩んでいる!だなんて言えるわけないだろう!
そう思いながら授業が始まった。
英語の授業、自慢ではないが、ほとんどの教科が壊滅的な成績の中、中学から真面目に勉強してきた英語だけは、本人も驚くほど、ずば抜けてよかった。ちゃんとついていけてる!というのは大切でその理解力が成績に現れるのだろう。後の話になるが、学年一斉の実力テストで英語だけ学年で3番という輝かしい成績を残すことになる。
さて…どうやってこれから裕華と接していけば良いのか? いつも真面目に授業を聞いているこの英語の時間でさえ、正直、授業などどうでもよかった。思い切って告白しちゃえばいいのだろうか?でも今の裕華じゃ「糠にくぎ」だろうし………あせっちゃダメだよなぁ…。
「♪あぁ私の恋は~♪」……どこに行っちゃうんだろう? 松田聖子の歌の明るさとは裏腹に僕の心は沈むばかりだった。
「痛い!」
裕華が小さな声で叫んだ。
「どうしたの?」
「なんか、指に棘が刺さったみたい……」
「どこの指?人さし指?どれどれ……、」
僕は無意識にただ心配のあまり、ついその白い手に無意識に触ってしまった。
「あ、」
裕華はすぐに手を引いてしまった。
とげの様子が見たかっただけだったのに、つい裕華の手を触ってしまっていた。
僕は「しまったぁ~!」と思った。
「ごめんねぇ、」
僕は無意識に裕華に謝ってしまっていた。
「うう~ん、私こそごめんなさい………。」
そう言った裕華の顔は、何故か真っ赤になっていた。どうしたの?あれ?いつもと違う元気な裕香じゃない。あれぇ~?これはもしかして、もしかすると、僕を異性として初めて意識したという事?
それがきっかけかどうかは、わからないがその後、僕に対して少しずつ意識の変わってゆく裕華を感じるのだった。
〜第5話に続く〜
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