見出し画像

SASAnote vol.11 導く先は、いつも想像を超える結果~群馬銀行グリーンウイングス・石原昭久監督インタビュー

「私たちはファイナル8に行くバレーを目指している。」

そんな答えを受け止める用意はまったくもってしていなかった。ちょっと混乱した思考回路がその意味を理解するのに少しばかり時間を要した。

石原昭久監督は、いつもこちらの想像の上を行く。そして、いつもそのゴールに到達してしまう。

シーズンを重ねチーム力は上がった。集う選手たちも確かな成長を続けている。もはや、19/20シーズンの群馬銀行グリーンウイングスにとって、「V1」は、夢見る場所でも、憧れの舞台でもない、自分たちのバレーで掴み取るステージなのだ。

シーズン3位、V1昇格を果たしたヴィクトリーナ姫路に3戦2勝と勝ち越すなどV2で十分な存在感を見せた18/19シーズンのグリーンウイングス。

石原監督は、「優勝を基準として考えるならばいい結果ではなかった。」としながらも、「そこまでの内容、過程を考えるならば一戦一戦力を振り絞ってよくやってくれた。」と選手たちの奮闘を称えた。

18/19シーズンのグリーンウイングスは、多くのメンバー変更を余儀なくされ、その上、移籍やケガなどで十分な人数が揃わない状態でチーム作りを余儀なくされた。石原監督も、「ゲーム形式ができず、十分な強化ができなかった。」と振り返る。そうした中で迎えたサマーリーグや国体、皇后杯のブロック予選などでは、当然のように自分たちが求める結果を出すことができなかった。

リーグへの不安もあったが、戦力も整い、準備を重ねた結果、開幕してから1巡目の1レグは7勝2敗と悪くないスタートを切った。

だが、チームはさらなる変化を求めて新たなステップを踏むことを選んだ。

6人制移行後、石原監督が一貫して落とし込んできた試合の戦術を、選手たち自らが分析し、考えるスタイルへ移行した。もちろん要の部分は石原監督が行うが、それでも選手たちの戦術分析の時間は、これまの倍を要するなど、心身ともにハードなものとなっていった。

それでも、「選手自らが考えることで、自分の中への落とし込み具合が全然違う。」と石原監督が話すように、戦術理解度が格段に上がり、「借り物」の戦術から、「自ら」の戦術となり、高いパフォーマンス、好成績へとつながり、強敵・姫路への勝利にもつながったのだ。

もちろん、戦術分析が甘かったり、プレーが小手先のものになってしまい負けることも多々あった。V1昇格も届かなかった。得られなかったものもあったが、それ以上に、自ら考えることを身に着けた選手たちは、表現の幅が広がり、プラスアルファの力を出せるようになるなど収穫の方が多かったシーズンとなった。

石原監督は、「こうしたことができるのも、これまでの積み重ねで、選手たちの質が上がってきたからこそで、リスクもあったがやる価値はあった。」と振り返る。グリーンウイングスは、日進月歩、着実に成長し、V1への階段を上っているのだ。

とはいえ、簡単にV1に行けるほど甘くないのは承知している。強さ、結果を求めて上に進もうとするが、レベルが上がれば上がるほど、その上げ幅を大きくすることは難しい。今のグリーンウイングスは、6人制に移行したころとは違う。石原監督も「チーム力は上がっている。アベレージ(平均的な力)がついてきている。あとは、上に向かってどこまで伸びていけるかだ。」と新チームの現状とこれからを分析する。

その上で、新シーズンの目標を聞くと、「今シーズンは、スタートから戦力があるので、まずは国体出場を目指す。そして、リーグ戦は、ほかのチームも見なければいけないが、入れ替え戦に行く力はある。」と力を込める。国体出場とリーグでの好成績は、グリーンウイングスが掲げ続ける明確な目標だ。その目標に対し、石原監督が、これほどまでに強く獲りにいく気持ちを言葉にするのは初めてではないかと思う。

また、更なる選手補強についても、「チーム力を上げるのならば積極的に考える。」とV1をつかみ取るために、できることは惜しまずやるという姿勢を強く示している。今シーズンの「獲りにいく」という強い思いを感じずにはいられない。

19/20シーズンのV1昇格のための条件などは、まだ明示されていないが、「入れ替え戦」という強固な関門が立ちはだかるのは間違いないだろう。そうなると、V1勢に勝てるのだろうか?様々な思いがよぎるが、石原監督はさらりと言う。

「入れ替え戦に行くバレーでは勝てない。私たちはファイナル8に行くバレーを目指している。」と。

群馬銀行グリーンウイングスのVリーグチャレンジも5シーズン目を迎える。立ち上がったころは、V1など姿かたちも見えなかった。だが、今は、その形がしっかりと見える場所にいる。しかし、その場所に立つにはあまりにも困難で、険しい場所を越えていかなければいけないのは変わらない。そんな時、石原監督が初年度に口にした言葉を思い出す。

「皆さんが思っているより、ちょっとだけ早くプレミア(=V1)に行けるんじゃないかなと思うよ。」

7月に入り、サマーリーグが始まる。また今シーズンもバレーボールのシーズンが動き出す。群馬銀行グリーンウイングスは、今シーズンも、こちらの想像の遥か上を行く魅力的なバレーボールと最高の結果を届けてくれそうだ。

*この文章はFM GUNMA「サンセット5」内の応援ブログ「Fly High Green Wings!」にもアップします。https://www.fmgunma.com/gbgw/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?