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Never come the summer again. <海野教授の華麗なる冒険シリーズ> あの夏はもう2度と来ない。

この企画書は僕らの憧れのあの人のその先の大冒険を夢見て描かれた世界です。 All rights reserved by {HIRAKATA_HIROAKI_2006}2018

 第1話

『パンパシフィック猛レース』

登場人物

海野洋彦   
パンパシフィック大学ハワイ校           環太平洋環境工学教室教授

物理学者であり、考古学、音楽、スポーツそして海を愛する。
週末はハワイ諸島の小さな島に住みクルーザーで大学に通勤している。
10年前にハリケーンよる海難事故で妻と長男を亡くしそれ以来、島で研究に没頭その内容はさだかではない。
また彼は、”太平洋に散らばる小さな島々に生きる人々は、古代に栄えた環太平洋文明の末裔である”と考え、太平洋の島々と海中の遺跡の調査研究とポリネシア、ミクロネシア、メラネシア、アジア、そして日本の優秀な若者たちを教室にあつめ、”その血のなかにながれる文化の誇りを忘れるな”と呼びかける。

ジョン黒崎  
パンパシフィック大学ハワイ校 理事長の息子 

ハーバード大学で経営工学を学び教授となったが、経営不振のハワイ校の建て直しのため呼び戻され副理事に就任、実質のCEOである。
積極的に学部の廃止と統合を推進し、海野教授の環太平洋環境工学教室を、”アジアと太平洋の島の子供と古代のがらくたを集めて海で遊び焚き火をして歌ばかりうたっているやつら”と真っ先に廃止しようと考えている。WASPな彼は、”学問は科学であり、大学は経営であり、知力体力に優れた生徒を生産し、評価され有名になってさらに生徒を呼び込んでこそ大学である”と叫んでいる。

黒崎平八郎  
パンパシフィック大学ハワイ校 理事長

戦後、日本の高度成長期をささえた商社に勤めていた平八郎は1970年を機に、広大な日本の土地を売った金で以前から志を同じくしていた旧友、元アメリカ海軍太平洋地域総司令、トーマス、J、キャンディと共に大学を創立。フィジー、シドニー、シンガポールと姉妹校を広げた。
昭和1ケタらしく夢と気骨に富んだ楽しい性格のじいさま。海野の父とは海軍時代の戦友、その長女は海野の妻となった。時折、寂しくなると海野の島に訪れ娘と孫の思い出を語る。

サファイア  

本名、長岡亜沙美、黒崎平八郎の末の孫。

環太平洋環境工学教室に助手として学ぶ、マリンスポーツと格闘技が得意なおてんば娘、一本気な性格は祖父ゆずり、
幼なじみのボーイフレンドがワイキキでサーフショップを経営してるがあまりその気が無い。実家は東京、母と姉達がいる。

トガ     
ポリネシアの小さな島の若者、

パンパシフィック大学ハワイ校 環太平洋環境工学教室の学生、人のよい優しい性格ゆえに留年する。


山野音彦   
海野の音楽仲間、親友でもある彼は大学の後輩、    
天才的レコードコレクター。


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あらすじ

5月、
パンパシフィック大学ハワイ校、
年度末と卒業のあわただしい季節。


環太平洋環境工学教室の生徒達は、海野教授と共にひと月のフィールドワークを終えようとしていた、

ポリネシアからミクロネシアにかけての幾つかの小島に渡り、海中の遺跡探査と古代の海洋航海術を中心に広く人々の暮らしを調べている。

メンバーは海野教授、助手のサファイアをはじめとするほか7名、生徒達の実家を巡る旅である。背の高い今年卒業するはずだった男子生徒トガ、彼の親戚にもてなされ調査最終日を楽しく過ごしていた。 そこに海野に理事長からの衛星電話、緊急教授会を開きたいと黒崎副理事が騒いでいる、なんとかならんか、の声。3日後にしか帰れませんと伝えると困ったような声でそうだわなー、といって切れた。

3日後、真っ黒に日焼けした彼らを大学の桟橋で迎えるのはニコニコした理事長と真っ白な顔でイライラした黒崎副理事、3日待ってやった、これから緊急教授会を開くのですぐに来るようにと言い海野を車に乗せた。

生徒達が大学に着くと、黒崎の担当するハーバードスタイル経営工学教室の卒業生たちが祝賀会を開いている、就職率も良くエリート意識の高いWASPたちは調子に乗って、今年就職できずに留年したトガや環境工学教室の生徒達をからかい始める、我慢してやり過ごそうとした彼らを、アジアをさげすむひとことが刺さる。

”誇り高く生きろ”それは海野の教えだ、トガが飛びかかるまえにサファイアの平手打ちがWASPのひとりに飛ぶ、あら失礼蚊が血を吸っていたの、マラリアになったりしたら就職おじゃんでしょ。きれるWASP,一発触発。
そこに教授会から帰ってきた教授たち、

”なにをやってる!” 海野の声が響く、話しを聞いた黒崎がWASPの主張を否定せずにさらに油を注ぐ。

 では、証明してみよう。カヌーでティキティキ島をまわって戻ってくる、行程300Km、3日以内に、どの学部が優秀な生徒を育てたかそれで分かる。

他の学部も一緒だ。あきれた海野のとなりで面白がっている老人がいる、 ”若いもんはチャレンジスピリットじゃ!”理事長である。

各学部がその存続をかけて知力と体力に優れた生徒であることを証明するためにレースに臨む。しかし、WASPらはスポーツ万能の肉体派、対する環太平洋環境工学教室の生徒達は、トガのほかはみな女子、考え込む海野であった。

黒崎のWASPチームはNASAの運動生理研究に基づいた計画で科学的にカヌー、食料、プログラム、選手が準備される。他の学部のいくつかも頭を下げてそのスタイルで進む。

一方、海野チームは生徒達のそれぞれの島からおもしろがった親戚達がやってきて、言い伝えの方法で古代に海を渡ったカヌーを大学の木を切り出してつくりはじめた。食料も島の果物中心のメニュー。

海野は思索する、3日間船速を落とさずに航海したものが勝つ。その決め手は睡眠との戦い、そしてモチベーションの持続。ただでさえ体力的にハンディのあるチームを勝たせるには、

海野は思索するとき体を動かす、彼はサーフボードをかかえ海へ漕ぎだした。


かくして、パンパシフィック大学ハワイ校の各学部対抗アウトリガーカヌーレースが始まった。

様々なアクシデントと天候不調に脱落する各チーム、

2日目からは体力から気力勝負になってゆく、

科学的食料の黒崎WASPチームと島の果物を積んだ海野教室チーム圧倒的に引き離されてはいるが不思議なことに快走している。

黒崎WASPチームの速力が落ちる、睡眠時間を稼ぐために2交代の作戦だ。

海野教室チームを伴走する海野のクルーザーが黒崎のクルーザーを補足する、

WASPチームに追いついたところで海野教室チームは力つきてしまう。

海野は東京の友人、山野音彦からの連絡を待っていた。あの日、海の上で思いついたことを調べてもらっていた、それはフィールドワークで出会った島の人々のこと、彼らはみなうたいながら労働をしていた、単調なそして過酷な重労働を、なのに笑顔で挨拶を投げかけてくれる。

ならば島に伝わる舟歌は?天才レコードコレクターの山野なら何か見つけてくれる。3日目の夜、海に漂う2隻のカヌーが月夜に照らされる。余裕のWASPチームは黒崎の指示により全員睡眠をとっている。海野チームのひとりが目を覚ます、トガだ。

満天の星、彼の口からひとつのうたが自然に出てくる。

”あの星、いちばん明るいあの星をあげるから走ってとりにおいで、、”ポリネシア語で歌う子守歌。

その歌を聞いてみなが目を覚ます、私も知ってる、みんなが歌い始める。そしてカヌーが進み始める。あわてて起床し追いかけ始めるWASPチーム。夜が明けてゆく、天候はあやしい。スコールの中も歌い進む、笑顔で歌いながら。

黒崎WASPチームが追従しそして追いつく。

その時東京から小さなサウンドファイルを添付したメールが届く、

”太平洋諸島ほぼ全域に痕跡をのこす歌だ、O.Y. ” 

ファイルを解凍すると1つの歌が、彼らが歌うあの子守歌だ。

しかしひとつだけ違う、それはリズムだった。レゲエにもエンヤトットにも類似したリズム、古くからの舟歌のリズム。

スコールの中、海野はぎりぎりまで船をよせその歌とリズムを聴かせるためにスピーカーから大音響で聞かせる。歌は、そしてリズムは彼らを元気づける。スピードがわずかに増す。

一方WASPチームは朦朧とするなか単調なリズムで追い込む。彼らは驚く、苦しい自分たちと裏腹のかれらの様子、笑って騒いで歌って漕いでいる。

まるでお祭りのようだ。ぐんぐん進む海野教室チームのカヌー、

そのとき頭上にヘリコプターが、1機じゃない、TV局、新聞社のヘリがいっぱいだ。そしてヨット、クルーザー、漁船が彼らをむかえ伴走してくれる。実況中継で放送されている、人々はみなお祭りが好きだ。

ゴール!

追い込めなかった黒崎WASPチーム、(この報道はハワイ校の人気を作り株価を上げることになる。)

海野チームの優勝である。さらにこの評判でパンパシフィック大学は人気がでる。

リストラの必要なし、しぶしぶ負けを認める黒崎ら。

疲れ切った生徒達と海野教授が波と戯れている。

そしてささやかな優勝パーティー!
集まってくる島の人々。

理事長がケータリングとお酒のプレゼントをふるまっている。

海野が歌う、海のうた。

そしてみんなで歌う、あの星のうた。

楽しい夜はまだ始まったばかりなのだ。

『そう、僕ぁ、こんなお話がすきなんだなあ!』

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