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交差点

午前10時過ぎ。快晴。
キラキラとした光に包まれた河原町今出川の交差点で
20年以上前の元カレを見かけた。

「うん、あの変な歩き方はあいつに間違いない。」

思わずついていきそうになった自分が笑えた。

コイツと結婚していたら
きっと5人くらい子供を産んで
普通にお母さんになって
幸せな家庭を築いていたのかもしれないなんて

考えてすぐ首を横に振った。

モダンタイムスで出会った人たちと
誰一人会わなかった人生なんてもう想像がつかない。

これでよかったんだと、視線を晴れた空へ向けた。

だから

あの頃に戻りたいとは全く思わないんだけど
ただ、一生懸命、まっすぐに人を好きでいた頃を思い出した。

人を好きになる気持ちは今も変わらないけれど

あの頃のように、喜怒哀楽を素直に人にぶつけられなくなった。
平気で自分の感情を殺せるようになった。

それが大人になったということなのか

あの頃のように、誰かに何かを期待することも無くなってしまった。

「だって求めるから傷つくんでしょ。」

「どうせ貴方も裏切るんでしょ。」

「どうせ人間そんなもんでしょ。」

いつの間にか

本当に愛することや
本当に愛されることから

逃げ出すようになってしまったなぁ。

だって愛するという事は
だって愛されるという事は

きれいごとでは終われないんだもの。

汚い自分も弱い自分も、醜い自分もさらけ出すという事だもの。
汚い部分も弱い部分も、醜い部分も、受け止めるという事だもの。

だけど愛するという事は
だけど愛されるという事は

それらのことを乗り越えて

強くなるという事だもの。

とても勇気のいることだもの。

・・・

元カレの乗ったタクシーが赤信号で止まった。
思わずチャリンコで追いかけてみたけれど

追いつく前に信号は青に変わって

それを確かめることができなかった。

・・・別に会いたかったわけじゃないし

喋りたかったわけでもない。

私はいったい何を

確かめたかったんだろう。


・・・


元カレの中に見たかったものは

あの頃の自分だったのかもしれないな。

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