レッド・オーシャンの深海に逃げてみる
「ブルー・オーシャン戦略」という本がある。この本はビジネスマンにとって非常に示唆に富んだ良書であるが、本稿ではあえて本の内容とは別の方向性を提案するものである。
ブルー・オーシャン戦略
「レッド・オーシャン/ブルー・オーシャン」とは書籍「ブルー・オーシャン戦略」にて用いられる用語で、レッド・オーシャンは企業同士の競合の激しい市場、ブルー・オーシャンは競争のない未開拓市場を意味する。著者は競争のない未開拓市場こそ企業の目指すべき方向だと主張し、その方法として「バリューイノベーション」すなわち商材の持つ顧客価値要因のうち何かを省き且つ他の何かを強化することで新しい顧客価値を創造することが必要だと主張している。
ブルー・オーシャン戦略の具体例としては、あえて高性能を追求せず斬新なUIデバイスによる新しいゲーム体験で大ヒットしたWiiや、あえて低スペックのウェブブラウザを搭載することでいちはやくモバイルオンラインサービスを可能にしたiモードなどが挙げられる。
バリューイノベーションの考え方は非常に納得のいくものであり大いに賛成であるが、本稿ではあえて別の方向性を提案したい。すなわち「レッド・オーシャンの深海に逃げる」である。
未開拓市場は深海にある
海底熱水鉱床という言葉をご存知だろうか。海底熱水鉱床とはようするに深海底に湧く温泉であり、その温泉の周囲には海洋表層とは全く異なる生物が住んでいる。つまり未開拓市場である。
「深海に逃げる」とは、今のビジネスモデルを適用できるが今までとは全く異なるターゲットユーザーを探せ、という提案である。
わかりやすい例としては、外国への進出、富裕層相手や逆に貧困層相手のビジネスへの進出などを意味する。もちろん今までとは全く異なるターゲットユーザーであればそこまで極端でなくともよい。
「深海」で今のままのビジネスモデルをそのまま適用できるわけがない、結局はバリューイノベーションが必要になるはずだ、とお考えの方もおられるだろう。確かにそうかもしれない。それでもなお「先に新しいターゲットユーザーを探し、その後ビジネスを革新する」という順番で行っていただきたいというのが本稿の主張である。
ユーザーファーストのイノベーション
なんでこのような主張をするかというと、同書籍で紹介されている手法「戦略キャンバス」が、どうもプロダクトアウト的な消費者軽視の印象があったからである。
戦略キャンバスは横軸に価値要因一覧・縦軸に価値の高さをマッピングするが、本来、価値観はターゲットユーザー毎に異なるはずである。戦略キャンバスを描く際は「どのターゲットユーザーを前提にしたものか」が明確になっていなければならない。この点について著者は当然理解しているとは思うが、文章としてわかりづらかった。よって敢えて投稿した。そんなこと当たり前だと感じられた方はご容赦いただきたい。
ユーザーあってこそのビジネスである。業務としてイノベーションを実現したいと思うなら、ユーザーファーストのイノベーションを心がけていただきたいと考える次第である。
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