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イノベーションについての駄論と雑論

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最近世間で話題のイノベーションについてのコラムです。景気の悪くなった今になってイノベーションを実現しようと必死になるのはなんか格好悪いですね。ビジョナリー・カンパニー衰退の第四段…
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#UXデザイン

場の空気を読むデザイン

安倍首相のSNSに投稿した動画が炎上している。場の空気を読まない独善的な内容であったからだ。これでは電子掲示板荒らしと変わりない。そして日本企業はこれまでそのような消費者の場の空気「利用文脈」を読まない独善的な製品を多数商品化し、惨敗してきた。 「#うちで踊ろう」ムーブメント 事の発端はミュージシャンの星野源氏が動画をSNSに投稿し「(この動画に皆さんの)伴奏やコーラス、イラストやダンスを重ねてくださいね。」と呼びかけたことに始まる。 そこにまずライブハウスを閉鎖され活動

政策と「人を動かすためのデザイン」

安倍政権の布マスク全世帯配布計画は嘲笑を浴びるだけの結果に終わった。医学的合理性があるにも関わらずである。人を動かすにはそれなりの工夫がいる。そしてそれはデザインできる。 日本政府はなにをすべきだったか結論を先に言う。以下4点を守ればもっとマシな結果になったはずだ。安倍首相は英国ボリス・ジョンソン首相のビデオメッセージを見習うべきである。 ・情に訴え共感を獲得する ・状況を論理的に説明する ・説得相手に取ってほしい行動を明確にする ・説得相手の抱いている不安を解消する

良いUXこそ市場シェアを握る鍵

昨今の流感騒動でオンライン会議ニーズが増えた。今Zoomが一番人気である理由は「不安を感じない」からである。イノベーションが世の中に受け入れられるには不安の解消もあわせてデザインする必要がある。 オンライン会議ブーム昨今の流感騒動により、卒業式を取りやめた学校が多発しオンラインで入社式を開催する企業も出たと聞いた。オンライン会議システムのニーズは急上昇である。もちろん全社員にシスコの高額な会議システムを支給することはできないので、主流はウェブサービスとしてのオンライン会議シ

デザイン外注でデザイン経営は実践できるのか

結論からいうとできない。外注のデザイナーが経営の根幹に関わるような提案をした際に快く採用する経営者がいないからである。デザイン経営に必要なのは経営者の覚悟である。 デザイン経営とはデザイン経営とは、経済産業省と特許庁が提唱する新しい経営コンセプトで、デザイン(ビジネス課題を創造的に解決する行為)を実践できる組織体制を経営者が整備することにより、企業のブランド価値向上とイノベーション実現の両方が実現する、というものである。 ブランド価値向上は、サービスデザインの実践によって

「共感という価値」を図示せよ

noteには「ビジネスモデル図解シリーズ」というビジネスモデル可視化手法を解説するマガジンがある。素晴らしい手法であるが一点付け加えて欲しいことがある。「共感という価値」の図示である。 ビジネスモデル図解とは 「ビジネスモデル図解」とはチャーリー氏と有志の手によるビジネスモデル可視化の手法である。noteに作成手順や作例が掲載されている。過去にも「ピクト図解」と呼ばれるビジネスモデル可視化手法があったが、ビジネスモデル図解はさらに洗練された手法である。 とても素晴らしい手

最近流行のカスタマージャーニーマップはイノベーションの役に立つのか

結論から書く。カスタマージャーニーマップは現状をわかりやすく表現するためのツールに過ぎない。そこから画期的なアイデアを思いつくかどうかは個人の力量次第である。しかしカスタマージャーニーマップを作るには前提として深い顧客理解が必要である。深い顧客理解は画期的なアイデアに必要である。 最近流行のカスタマージャーニーマップとはものづくりの現場においてカスタマージャーニーマップが流行っているようだ。実際に筆者も最近カスタマージャーニーマップのセミナー講師を依頼された。問い合わせが多

イノベーションは顧客から、でしょ。

意味のイノベーションの実現困難性 最近流行りの「意味のイノベーション」という言葉の意味を知るために「突破するデザイン」という本を読んだ。意味のイノベーションとは要するに「コモディティ化した商品に新しい意味が与えられることで、新市場が創出されること」という意味である。典型例として、かつては照明器具だったロウソクが癒しアイテムとして認識され市場拡大している事例が挙げられている。おおむね同意である。 しかし気になる点もある。意味のイノベーションを起こすプロセスの起点は自分の想いや

UXデザイナーの本来の仕事3つ

UI/UXってなによ世の中にはUIデザイナーとUXデザイナーの違いがわからない人が多いようである。これは「UI/UX」という言葉に如実に現れている。UI/UXとはUIデザイナーとUXデザイナーの両業務の兼務という意味である。いまの世の中は仕事を割り振る方も割り振られる方もUIデザイナーとUXデザイナーの兼務が当たり前化したため、両者の境界線がわからなくなったらしい。 UXデザイナーの本来の仕事3つUXデザイナーの仕事は以下の3つである。別の言い方をすれば、以下の3つを従来の

UXデザインでイノベーションを起こせる(起こせない)理由

UXデザインがイノベーション実現の方法論として語られる時がある。これは半分正しく、半分間違いである。以下に解説する。 UXデザインとは UXデザインとは、まずユーザーに提供したい体験を定めその手段として製品やサービスを設計するものづくりの方法論である。サービス業での実践を前提としたUXデザインを特にサービスデザインと呼ぶことがある。 上述の通り、UXデザインはイノベーションを目的とした活動ではない。にもかかわらずUXデザインがイノベーション実現の方法論として語られる時があ

サービスデザインでイノベーションを起こせる(起こせない)理由

二番煎じ的なタイトルで申し訳ない。UXデザインとよく似た概念「サービスデザイン 」とイノベーションの関係性について説明したい。 サービスデザインとはサービスデザインとは、ようするにサービス業で実践することを前提としたUXデザインのことである。UXデザインとの差異は「サービス・ドミナント・ロジックに従う」「包括的設計の原則に従う」の2点である。 「サービス・ドミナント・ロジック」とは、2004年にロバート・F・ラッシュとステファン・L・バーゴによって提唱された概念で、「サー

共創というよくわからない概念

近年流行っている「共創」という言葉、いまいち分かりづらい概念である。以下に解説する。 最近流行の「共創」とは近年「企業は顧客との共創を推し進めるべきである」という論調が盛んである。この「共創」という言葉、CSV(Creating Shared Value)の日本語訳も「共創価値」であることから混同されやすいが、共創とCSVとは異なる概念である。 CSVは、社会課題解決と企業収益を両立させる活動のことで、たとえばスターバックスの行っているコーヒー豆農家支援活動がCSVである