見出し画像

貧しかった時代の幼い日

 畏友は2歳ばかりぼくより若いから、生まれたのは1947年ということになる。その方が、映画『二十四の瞳』の話題から、小学校のときのご自身の修学旅行のもようをFacebookで述べておられる。写真は、あの時代なので白黒とはいえ、最近、写したかのような鮮明さで驚いた。

 もっと驚いたのが児童たちのアカ抜けた姿だった。昭和20年代、1年違うと、いまなら10年ほどの差があると畏友はおっしゃる。あわてて自分のアルバムを開き、修学旅行のときの写真を見た。それが冒頭の写真である。いままで気がつかなかったが、こちらも女の子たちはみな、それなりにとてもオシャレだ。

 同じ東京で育ち、ぼくより1歳年長の女房から聞いた話を思い出した。小学校1年生とき父親を白血病で失い、母と子は極貧の生活を強いられていた。遠足の日の朝、目覚めると枕元には新しい服がたたんで置いてある。前夜、仕事から疲れて帰ってきた母親が自分の服をバラし、徹夜でミシンをかけて娘が遠足に着ていく服を作ってくれたのである。

 箱根への日帰りの修学旅行のときの写真を見ると、ぼくたち男の子の多くが黒い詰襟の学生服を着ている。卒業が差し迫った修学旅行を機に詰襟を買ってもらったのだろう。とても、誇らしげだ。

 親たちは、いつの時代も大変だとあらためて思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?