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赤ちゃんとミドリガメとステレオと

 数日前の夕方、呼鈴が「ピンポ〜ン!」と鳴った。玄関へどなたか女性が見えているらしい。あわてて出たら階下の方だった。赤ちゃんがいるので、うるさかったらカンベンしてほしいという。

 聞こえないし、かりに聞こえても「ご心配なく」と答えた。まだ幼児のお兄ちゃんもいるから……とおっしゃる。それへも、「どうぞ、ご心配なく」と返事した。引っ越してきて間がないのかもしれない。持参されたお菓子は辞退したが、なかば強引に置いていった。

 マンション住まいは、管理面でとても快適だが、となり近所へは気を遣う。先日も、同じフロアーの方が見えて、飼っていたカメがベランダづたいに逃げ出してしまった。行方不明なので、もし、見かけたら保護してほしいという。

 奥さんの恐縮しきった態度から、カメを最初に見かけた別の家からのクレームがあったらしい。それで逃げたのがわかったのだろう。お祭りの夜店などで売っているミドリガメこと、ミシシッピアカミミガメだという。大きさは20センチ近いというから、きっと、だいぶ前から飼っているのだろう。

 クレームをつけた方には、「カメくらいで騒ぎなさんな」といいたいが、それぞれ苦手なものはある。やはり、マンションライフだと、カメを逃してはいけないわけだ。ぼくはしじゅうベランダを見て、「ウチにやってこないかなぁ」と待った。

 しばらくして、カメが無事に帰ってきたという紙がポストに入っていた。「ご不快な思いをさせて申し訳ありませんでした。今後は逃がさないように気をつけます」とも書かれていた。後日、奥さんに会ったとき、「カメさんが帰ってきてよかったですね」と声をかけた。

 かたや、深夜、ステレオで“重低音”をまきちらしているバカもいるそうである。エレベーターの中やら、管理組合の掲示場で注意を喚起しているが、いっこうに改まらない。マンション住まいも、いろんな住人がいるからなかなか大変である。

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