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動画の音質改善のためのサンプリングレート・音声ビットレートの基礎知識

動画の音質は、思っているより観る人の印象に大きな影響を与えますね。
画質が良くても音が悪いとかなり印象が悪くなってしまいます。
良い音を作るための基本的な要素として、サンプリングレートとビットレートがあります。今回は、これらについておさらいしたいと思います。



サンプリングレートとは?

サンプリングレートとは、音声をデジタルデータとして記録する際に、
1秒間に何回音をサンプリング(標本化)するか」を示す値です。
単位はHz(ヘルツ)で表され、サンプリングレートが高いほど、音質は解像度が高く高品質になります。

サンプリングのしくみ
サンプリングは、アナログ音声を一定間隔で細かく区切って、その時点での音の大きさを数値に変換する作業です。この様子をイメージしやすいように例えると、

  • アナログ音声: 滑らかな曲線で表される音の波形

  • サンプリング: 曲線上の点を一定間隔で抜き取る作業

  • デジタルデータ: 抜き取った点の集合(数値データ)

サンプリングレートイメージ


主なサンプリングレート

・44.1kHz(44100Hz)

CD音質に使用される標準的なサンプリングレートです。この値は、ナイキスト-シャノンのサンプリング定理(ナイキストさんが概念を提唱して、クロード・シャノンさんが理論を形式化)に基づいて選ばれました。この定理によると、正確に音声信号をサンプリングしようとすると、信号の最大周波数の少なくとも2倍のサンプリングレートが必要ということになるそうです。

人間の可聴範囲は20Hzから20kHzなので、その2倍である40kHz以上のサンプリングレートが必要ということで44.1kHz(44100Hz)になりました。

ちなみに44.1kHzという中途半端な数字は、エイリアシング(高周波数成分が低周波数成分に変換される現象)という信号の歪みが発生することがあるため、若干の余裕を持たせているそうです。

・48kHz(48000Hz)

映像制作業界における標準的なフォーマットとして広く採用されています。例えば、映画やテレビ番組、Netflixのようなストリーミングサービス、ゲーム業界、その他プロフェッショナルなオーディオ録音などで48kHzが使われます。44.1kHzよりも高いサンプリング周波数なので、より高品質となる。
また、映像のフレームレートとの相性も良く整合性が取りやすくなります。

24fps(映画標準):48kHz(48000Hz)を24fpsで割ると、1フレームあたり2000サンプル(48,000 / 24 = 2000)となります。この割り算が整数になるため、1フレームあたりのオーディオサンプル数が常に一定であり、同期が取りやすくなります。

30fps(テレビ標準):48kHzを30fpsで割ると、1フレームあたり1600サンプル(48,000 / 30 = 1600)となります。これも割り算が整数になるため、同期が取りやすくなります。

60fps(高フレームレート):48kHzを60fpsで割ると、1フレームあたり800サンプル(48,000 / 60 = 800)となります。こちらも割り算が整数になるため、同期が取りやすくなります。


・96kHz(96000Hz)

高解像度音源やプロフェッショナルなオーディオプロジェクトに使用されるサンプリングレートです。96kHzは、より詳細な音質を提供し、特に音楽制作やマスタリングで高品質を求められる場合に利用されています。

・92kHz(192000Hz)

さらに高品質な音声を必要とするプロジェクト向けのサンプリングレートです。192kHzは、96kHzの2倍のサンプリングレートで、極めて高い精度と音質を提供します。一般的なフィールドレコーダー(Zoom、Tascam等)では一番サンプリング周波数が高い設定です。


音声ビットレートとは?

音声ビットレートは、1秒間にどれだけのデータ量を使って音声を表現するかを示す値です。単位はbps(ビット毎秒)で表され、一般的にkbps(キロビット毎秒)で記載されます。ビットレートが高いほど、音質が良くなる傾向がありますが、その分ファイルサイズも大きくなります。
ビットレートはビット深度×サンプリングレートで計算でき、ビット深度とサンプリングレートがわかっている場合、ビットレートを計算することができます。

・128kbps

一般的な音楽配信サービスやポッドキャストで使用される。音質とファイルサイズのバランスが良い。

・192kbps

音楽の音質を重視する場合に使用される。ストリーミングやダウンロードで高音質を提供。

・320kbps

高品質な音楽配信やプロフェッショナルな音声制作に使用される。圧縮音声フォーマットでは最高クラスのビットレート。


音質改善のための機材の推奨設定

動画制作において、音質を最大限に引き出すためには以下の設定を推奨します。

  • サンプリングレート: 48kHz、96kHz、192kHz

  • ビット深度:最低でも24bit、可能なら32bit flort

  • 音声ビットレート: 最低でも192kbps、可能であれば256kbps以上

  • フォーマット:非圧縮形式(WAV)やロスレス圧縮(FLAC)


まとめ

サンプリングレートと音声ビットレートは、動画の音質に直接影響を与える重要な要素です。適切な設定を選ぶことで、視聴者にとって快適でクリアな音声を提供することができます。

音声の質を向上させるためには、機材の性能であるビット深度やサンプリングレートを上げることも重要ですが、そもそもの録音環境や編集ソフトでの後処理、ファイル形式にも注意を払い、全体的な音質を高める努力を惜しまないようにしましょう。

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