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世界各国の食を巡る:モロッコ料理編

唐突に思いついた。
東京近郊で、世界各国の料理を食べよう。

ことの発端とあらましについては、過去回を参照。

今回はまた一気に飛んで、アフリカの北端、モロッコへ。

モロッコ料理というと、とりあえずタジン料理が思い浮かぶ。でも、それくらいしか思い浮かばない、とも言える。タジン料理とひと口に言っても、いろいろな肉があるだろうし、野菜も味付けもそれぞれの店で違っているだろうから、これという特徴が掴めないでいる。

そんなモロッコ料理をもう少し知りたい、食べてみたいと思っていたところに、代々木にモロッコの家庭料理を出しているお店があると聞きつけて、これはまさに自分が求めていたものだと反応。早速そのお店を訪れてみた。

小田急線の代々木上原駅の北側。このあたり、代々木上原~代々木八幡のあたりは細くて曲がりくねった道があちこちに伸びていて、なんというか整理されていない雑多さのなかに宝物があるというか、中が良く見れないからこそ中をのぞいてみたくなる雰囲気。なんとなく気になりつつ、何も目的なく奥まで入り込むにはちょっと勇気がいるような。でも今回は目的があったので自信をもってどんどん進む。

目的のお店、darna もちょっと細めの路地にあった。少し遠くから見たところは普通の住宅街っぽくて、ぱっと見ではお店が無いように見えたのだけれど、小さめながら看板が出ている。近づいてみると、普通の出窓のような場所がお店のカウンターになっている。

すごく良い。お洒落だ。

基本的には惣菜店といったスタイルで、各種タジン料理100g~の量り売りと、数種類のサラダ、それにいくつかの焼き菓子を提供されている。テイクアウト前提なのだけれど、店のすぐ脇にベンチがあるので、ふらりと寄ってその場で食べることもできる。

店の脇にはベンチがあるのでここで食べることができる。また、少し歩けば公園も。

オーダーしたのは、牛肉とプルーンのタジン、それとモロッカンレンズ豆のサラダ。

モロッコといえばタジン料理。知ってはいるけれど、こうして食べるのは何回目だろう。片手で足りるくらいしかない気がする。砂漠で貴重な水を節約するために工夫されたタジンは基本的に無水調理。この牛肉とプルーンのタジンも、グレイビーというよりもさらに濃厚なソースとなっている。

食べてみると、プルーンの甘さとしっかりした牛肉の旨味が調和していてとても美味しい。牛肉はゴロゴロ感があるサイズだけれど、噛むとほろほろに崩れつつぎゅぎゅっとした噛みごたえがあって、見た目以上にボリューム感がある。

プルーンなのでもちろん甘めの味付けに、スパイス感はそこまで強くなくて辛さはほとんどない。けれど、ライスには意外と相性が良くて、なんだか意外な感じ。上に載せられたアーモンドスライスもカリカリとアクセントになっていて良い感じ。

もうひとつのモロッカンレンズ豆のサラダ。こちらも結構スパイス感は控えめで、塩味もそんなに強くない優しい味。ラスエルハヌート、というミックススパイスが使われている。玉ねぎとパプリカのしゃきっとした感じが爽やか。強くない味なのだけれど、スパイスとオイルのおかげか不思議と満足感は高い。

どちらも優しい味で、感じたのは、食べるひとの健康のことが考えられている、ということ。塩が控えめだったり、アーモンドだけではなく胡麻がのっていたり。


たまたま他のお客さんも居ない時間だったため、シェフの清水さんに話を伺うことができた。

モロッコのレストランで働いていらっしゃって、そのときのまかないランチでモロッコの家庭料理を食べることが多くなったそう。そこから現地の方に料理を習ったりして、スパイスの使い方などもそのときの家庭料理がベースということで、まさにモロッコ一般家庭の味付け。素晴らしい。こういうの、待ってた。

モロッコでのスパイスの使い方について伺うと、辛さはあまり出さず、基本的にはペッパー、ジンジャー、ターメリック、パプリカあたりが主体になるらしい。もちろんコリアンダーやクミン、シナモンなどもいろいろと取り入れるのだけれど、優先順位的には少し低い。

あとは、オイルはオリーブオイルが主体。このあたりは地中海沿岸のお国柄で、やっぱり土地のものが合うわけで。

自分の場合、スパイス料理といえばインド料理が基本になっているので、モロッコのスパイスの使い方は新鮮というか目からウロコ的な感覚があった。辛さはほとんどなくて、でも美味しいスパイス感があって、刺激的ではないけれどじんわりくるような。温かい味わい。

前述したように塩気が強くない点も、やはり意識してそうされているそうで、レストラン料理ではなく家庭料理なのであまり強い味にはせずに、毎日食べて飽きのこない味を目指しているとのこと。

この点も、個人的にはとてもありがたい。前にも何回か書いているけれど、外食が苦手な理由のひとつがしょっぱすぎるから、というものなので。また、インド料理好きだけど辛さにはあまり耐性がないという自分には、辛さをほとんど出さないモロッコ料理のスパイスの使い方は非常に参考になる。

これはちょっと、研究してみたくなってきた。
スパイスの使い方ってこうじゃなきゃいけない、という思い込みがありすぎたかもしれない。


最後に持ち帰りでタジン料理をオーダーして、夜に自宅で楽しんだ。

鶏肉とバーミセリのタジンでは、バーミセリがいい具合に鶏のジューシーさを吸い込んで美味しさ満載。レモン系のさっぱりとした風味もあってとても美味しい。

レンズ豆とかぼちゃのタジンはほっこりとした味わい。かぼちゃと豆はスリランカあたりの料理としてもよく出てくる印象があるけれど、それとはまた違っていて、うまくいえないけれどこれもやっぱりモロッコ料理感のある風味。なんだろう、やっぱりスパイスの使い方かな。

どちらもやっぱり優しい味付けで、家で食べるとよりいっそう家庭料理的な感覚が強くなる。美味しいモロッコに触れることができて、1日だけトリップした気分になった。

ありがとうございました。ごちそうさまでした。


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