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エリックサウス・マサラダイナーのモダンインディアンコース 2024 晩冬

2ヶ月ごとに変わるモダンインディアンのコースは、この前の年末の期間に伺えず1回分を飛ばしてしまった。タイミングが合わず、飛ばさざるをえなかった。とても残念だったので、新年に改めて気合を入れて望むことにした。

というような心持ちで降り立った渋谷は、冬の夜にしては随分と暖かい。あまりに寒いと手がかじかんでしまって、食事の最初あたりはなんとなく身体を温めたくて気もそぞろ、ということになりがち。こういうのは、味わう際の印象にも結構関係していそう。なんにしても、この日はそういうこともなさそうで良い気分。

何度か頂いているこちらのコースは、特定の一品が強い印象を残したり、それとは逆にコース全体として好みが散らばっていたりと、受ける印象はいろいろなのだけれど、今回はどちらかというと後者のいろいろと好きなものがまんべんなく、な方だった。

「ケールの石窯焼きと長芋のバジ」は、焦げる寸前まで焼かれたケールのパリッとした食感と良い具合に感じる苦味、そして意外なことにほんのりと甘みもあり、ケールってこんな野菜だったのか! と新しい認識の扉を開いてくれた。

「ハマグリのモーレー スープ仕立て」では、ややシンプルながら滋味深い味わいにヒートアップした気分をなだめられつつ、いつものお品書きの「蛇足」を読んでこれまた食の構成要素に関する認識が少し変わる体験。早速今度試してみよう。

「ハリームのパッケリ」は、美味しさという意味では今回のコースでは一番だったかもしれない。濃厚なハリームとパッケリ、かなり合う。パッケリは以前も登場していて、確かサグマトンと合わせてあったのだけど、あれも美味しかった。パッケリ、欲しいのだけど店頭ではなかなか見かけない。リガトーニならあるのだけど。

メインのミートパイも良かった。でも今回は、クライマックスは最後のデザートだった、と言わざるをえない。

「ビターなベイクドショコラ ラヴァケサリ ココナツパインジェラート」

もう佇まいから感動してしまった。なんだこの小宇宙は!

吸い込まれそうな青色のお皿の上に、まるで星々が漂っているかのようなスイーツたち。盛り付けを考えた人に拍手を送りたい気分だった。

味ももちろん素晴らしくて、濃厚なチョコレートとココナッツが効いたジェラートのさっぱり感が対照的で美味しい。クランブルやラヴァケサリから漂ってくるカルダモンが鼻をくすぐると、ちょっと豪華なインドの邸宅のような風景が脳裏に浮かんでくる。

今回はそれだけではなくて、ペアリングで頼んだワインの最後が赤ワインだったのだけど、そのワインとチョコレートのペアが素晴らしくマッチしていて感動的。ベリー感とチョコのビターな味がうまく混ざりあって鼻から抜けていくときなんかは、かなりの恍惚感。

今までのデザートの中で最高の瞬間だったかも。

今回もワインペアリングのセットは良い仕事で、1杯目の白に牡蠣、そして3杯目の赤に肉とチョコ、あたりがかなりマッチしていた。ワインはそこまで詳しくないこともあって、どれを飲んでも新鮮に感じるので、自分で選ぶよりもリコメンドしてくれる方が正直ありがたかったり。

考えてみると、コース料理というものを頼むようになったのも、ここ最近のような気がする。若いときはもちろんあまりお金がないので、しっかりしたコース料理をいただくような心境にはなかなかならなかったりしたのだけど、それよりも「自分で好きなものを好きなように食べたい」という思いが強くて、順に食べるにしたって自分で選んでいくんだ、という心持ちだった。

いつからかそういう気持ちよりも、料理を作る人が考えた美味しい最高の食べ方や順番、というものを重視していくようになった。食についてこれでもかと考え続けている人たちがいるわけで、そういうものをもっと自分も受け取っていきたい、という風に考えるようになったのは、ここ何年かくらいだろうか。

改めて考えると、自分も結構変わってきているらしい。

あとは、やはりこちら(マサラダイナー)のコースが良いな、と思うのは手持ち無沙汰にならないこと。読み応えのあるお品書きは待ち時間に読み込んであれこれ考えるのに最高だし、ガラス越しに見える料理人の方々の風景は、自分たちに出される料理がどうやって作られていくのかを考えるヒントになる。オープンキッチンだと、見られる方はあまり良い気分ではないかもしれないけれど……。

今回も、待ち時間があれば本を読もうと思って持ってきたのだけど、ほとんどそんな時間は無かった。というか、料理に集中していないと勿体ない。

今回もコース中ずっと楽しませて頂いた。
ありがとうございます。
ごちそうさまでした。



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